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第7章 その裁定、本当に必要ですか?
第77話 陶酔
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「……と言うわけで、ケヴィン・セギュルと想いが通じているウェルシェ・グロラッハをエーリックの婿入り先として無理強いするのは王家の横暴と謗りを受けましょう」
国王と王妃の他、十数人の大臣が揃う謁見の間でオーウェンは意気揚々と弁舌を繰り広げた。
――今こそ横道を正す時!
正義に燃えるオーウェンは意気込んでいた。
二週間程前、彼は息巻いてエーリックの婚約を破談にするよう国王に直談判した。この時、オーウェンは自分の主張が通ると信じて疑わなかったのだが、けんもほろろに突っぱねられてしまい憤慨していたのだ。
アイリスから聞いた話では、ウェルシェはケヴィンを恋い慕っている。ならば、エーリックとの婚約は権力で強いられたに違いない。
(なんと憐れな)
あの触れれば消えてしまいそうな頼りなさげな美姫が、王家の威光に抗えず涙する様を思い浮かべてオーウェンは騎士道精神を滾らせた。
(父上は側妃エレオノーラを寵愛しているからな)
横恋慕したエーリックが母親に頼み込んで国王を誑かしたに違いないとオーウェンは推測した。
だから、一方的に自分の意見を封殺されたオーウェンは憤懣遣る方無しといったところだった。そんな時に国王と王妃の両陛下よりエーリックと共に呼び出されたのである。
これにオーウェンは喜色を浮かべた。
(きっと母上が御正道へと正そうと動かれたに違いない)
そう信じてオーウェンは皆の前で朗々と自説を披露し、エーリックを糾弾したのである。
「今からでも遅くはありません。即刻この縁談を取り止めケヴィンとウェルシェ・グロラッハの婚約をお認めください」
(これで皆が幸せになれる)
オーウェンは自分が正しいと思っているので、当然オルメリアが味方してくれると信じて疑っていない。
この提案が受理されれば自分が選んだ腹心の1人ケヴィンも主君に敬愛の念を以て仕えてくれるだろう。
「過ちを認めるのは難しいものですが、ここで判断を誤れば禍根を残す事になります」
間違いを正す勇気を示した自分に誰もがきっと尊崇するに違いない。
俺は何と素晴らしい指導者である事か――心の中で自画自賛の止まぬオーウェンは胸を張って主張した。
ところが――
「自省しなければならないのはオーウェン、お前の方です」
「えっ?」
味方と思っていた母オルメリアから真っ先に叱責を受け、オーウェンはあんぐり口を開けて間の抜けた顔を晒したのだった。
国王と王妃の他、十数人の大臣が揃う謁見の間でオーウェンは意気揚々と弁舌を繰り広げた。
――今こそ横道を正す時!
正義に燃えるオーウェンは意気込んでいた。
二週間程前、彼は息巻いてエーリックの婚約を破談にするよう国王に直談判した。この時、オーウェンは自分の主張が通ると信じて疑わなかったのだが、けんもほろろに突っぱねられてしまい憤慨していたのだ。
アイリスから聞いた話では、ウェルシェはケヴィンを恋い慕っている。ならば、エーリックとの婚約は権力で強いられたに違いない。
(なんと憐れな)
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だから、一方的に自分の意見を封殺されたオーウェンは憤懣遣る方無しといったところだった。そんな時に国王と王妃の両陛下よりエーリックと共に呼び出されたのである。
これにオーウェンは喜色を浮かべた。
(きっと母上が御正道へと正そうと動かれたに違いない)
そう信じてオーウェンは皆の前で朗々と自説を披露し、エーリックを糾弾したのである。
「今からでも遅くはありません。即刻この縁談を取り止めケヴィンとウェルシェ・グロラッハの婚約をお認めください」
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オーウェンは自分が正しいと思っているので、当然オルメリアが味方してくれると信じて疑っていない。
この提案が受理されれば自分が選んだ腹心の1人ケヴィンも主君に敬愛の念を以て仕えてくれるだろう。
「過ちを認めるのは難しいものですが、ここで判断を誤れば禍根を残す事になります」
間違いを正す勇気を示した自分に誰もがきっと尊崇するに違いない。
俺は何と素晴らしい指導者である事か――心の中で自画自賛の止まぬオーウェンは胸を張って主張した。
ところが――
「自省しなければならないのはオーウェン、お前の方です」
「えっ?」
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