あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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第1章 その新学期、本当に波乱ですか?

第12話 その話、本当に本当ですか?②

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「ですが、本当にオーウェン殿下は卒業パーティーで婚約破棄をなさるでしょうか?」
「イーリヤはそう信じているわね」
「ですが、そんな真似をすればオーウェン殿下は破滅しますし、アイリス様も恐らく無事では済まないでしょう」

 昨年のやらかしでオーウェンは廃嫡の危機に瀕している。そんな中で自分の後ろ盾であるニルゲ公爵の令嬢イーリヤと婚約破棄するなど自殺に等しい行為だ。どう考えても合理性に欠ける。

「アイリス様は自殺願望でもあるのでしょうか?」
「私だって知らないわよ。アイリス様はゲーム通りにハッピーエンドになれると信じているんじゃない?」
「もしそうならばオーウェン殿下の立太子は絶望的です」

 アイリスが何を信じようが勝手だが、現実は彼女の思うようには動かない。

「ここはもうオーウェン殿下の事はすっぱり諦めて、エーリック殿下を国王に据えませんか?」
「国王はぽやぽやのエーリック様には荷が勝ち過ぎるでしょ」
「無問題です。お嬢様がエーリック殿下を裏で操って傀儡政権を樹立すればいいんです」

 カミラはどこからともなく操り人形を取り出す。金色の髪に青い瞳の人形はどことなくエーリックに似ているような気がしないでもない。

「『やぁ、ボク、エーリッくん、ウェルシェの操り人形さ』」
「ぶほっ!」

 カミラが十字の釣り手を操作しながらエーリックの声マネをすると、今しがた口に含んだ紅茶をウェルシェが吹き出した。

「ゴホッゴホッ! な、何よそれはぁ!」
「私が夜なべして作った渾身作『マリオネット・エーリッくん』です」

 似てるでしょと胸を張るカミラ。無表情なのにどこかドヤッているように見えるのが不思議だ。

「『さぁ、ボクを上手く操って国を牛耳ろうよ』」
「だからぁ、私は王妃なんてなりたくないんだってば!」

 エーリッくんをカタカタと操るカミラに対し、ピシッとウェルシェがこめかみに青筋を立てた。

「いいじゃないですか王妃。お嬢様にはお似合いの役職でございます。『ボクもそー思う』」

 カミラがマリオネット・エーリッくんと顔を突き合わせて『ねぇ』と頷き合う。

「ぜ~ったいイヤッ!」
「ですが、お嬢様が王妃になればお嬢様と結婚できてエーリック殿下も幸せ、肩の荷が下りて王妃オルメリア様も幸せ、国も豊かになり国民も幸せ、お嬢様が幸せになって(お嬢様の悪戯に悩まされずボソ)私ども使用人も幸せ、みんな幸せで八方丸く収まりますよ」
「私ひとりが不幸じゃない!」
「我が儘ですねぇ」

 バンバン、テーブルを叩いて猛抗議のウェルシェにカミラはふぅっとため息をついて肩をすくめた。

「私は必ずオーウェン殿下を王太子にしてみせるわ。私自身の為に!」
「ホント清々しいまでに自分本位ですねぇ」
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