あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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第3章 その修学旅行、本当にアオハルですか?

第31話 そのビーチ、本当に太陽がいっぱいですか?

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 ルインズを南下したところに王族が保有しているロイヤルビーチがある。

 どこまでも広がる青い海、汚れなき白い砂浜。水は澄んで底まで透き通っていて、魚達の遊泳や海藻の揺らめきまで楽しめる。砂をすくってみれば、指の間からサラサラと零れ落ち小石一つさえ落ちていない。

 マルトニア王国の誇るとても美しい砂浜だ。

 ここは完全王国管理であり、普段なら貴族といえど足を踏み入れる事が許されていない。

 ところが、ビーチにマルトニア学園の生徒達の声がにぎにぎしい。いつも貴族教育で抑圧された少年少女達が無防備な水着に着替えはしゃいでいる。修学旅行の期間だけ生徒に開放される国王の粋な図らいだ。

 吹き抜ける風に潮の匂い、青い空を流れ行く大きな白い雲、白い砂浜に降り注ぐ強い陽射し……

「太陽がいっぱい……ですわ」

 夏空の太陽から目を守るように手を額にかざし、ウェルシェはアンニュイに呟いた。

「もう、そんなとこでなに黄昏たそがれてんのよ」

 一人たたずむウェルシェに親友のキャロルが走り寄ってきた。

 栗毛色のくせっ毛を三つ編みにして淡い黄色パールイエローのワンピース水着に身を包んでいる。愛嬌いっぱいの彼女に良く似合っていた。

 制服姿の時には隠れて分からなかったが、キャロルはかなりスタイルもいい。さらに腰に巻いたパレオが年齢以上に色香を醸し出してもいる。

 特別美人ではないが彼女には何とも男性の目を惹きつける魅力があった。今もクラスの男子達がチラチラと盗み見ている。

 昨年、クライン・キーノンとの婚約が破談となり、キャロルを狙っている者は少なくないのだ。

(クライン様も愚かなマネをしたものね)

 キャロルはウェルシェと同じ特別クラス。しかも、昨年の剣武魔闘祭では魔技芸術マギアーツという種目で優勝した。こんな魅力的な才女を蔑ろにして婚約を解消されたクラインはただのアホゥだとウェルシェは思う。

「ウェルシェも一緒に遊ぼうよぉ」

 そのキャロルがウェルシェの腕に絡みついてきた。その細い腕やパレオのスリットから覗く白い脚が艶めかしい。ウェルシェの腕に押し付けられた胸の膨らみは意外にボリュームがある。中々に魅惑的だ。

 対してウェルシェの格好は、若草色ブライトグリーンのワンピース水着。

 抜けるように白い華奢な四肢を惜しげもなく晒し、日頃は隠している豊かな胸も強調され、青少年達を全て悩殺する凶悪なデザイン。

 それでいて明るくいやらしさを感じさせない緑色がウェルシェの妖精のイメージを損なわない。

 そんな誰もが見惚れる水着姿――の上からダボダボのパーカーで隠していた。パレオまでしているから完全に衣服を着ているのと変わらない。

 ウェルシェの可愛い水着姿を期待していた思春期の少年達は膝からがっくりと崩れ落ちて涙した。
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