あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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第4章 その世界、本当に乙女ゲームですか?

第49話 その賭け、本当に正々堂々やるんですか?②

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「だって、魔丸投擲バルクホーガンじゃ、どうやったって私に勝ち目ないもの」
「まあ、魔力量がものを言うあの競技ではお嬢様に分が悪いですからねぇ」
「魔丸投擲は魔力量が全てではないけれど、それでもイーリヤとの差は技術云々でどうにか出来る差じゃないわ」

 繊細な魔力操作に定評のあるウェルシェだが、イーリヤだって決して劣っているわけではない。しかも、魔力量の差は絶望的なまでに隔絶している。

 となれば普通に勝負をすれば三種目のうち一つは始めから負け確なのだ。こんな賭け、まともにやってたらウェルシェはイーリヤに勝てるはずもない。

「それで今回もレーキ様達に色々と働いてもらうつもりなの」
「いったい彼らに何をやらせるおつもりなのです?」

 悪戯っぽく笑うとウェルシェは立てた人差し指を唇に当てた。

「それはね、ひ・み・つ」

 またレーキ達はこき使われるのかとカミラは彼らが憐れでならない。こんな腹黒と関わったばかりに。

「それから、ついでにオーウェン殿下のテコ入れもしてもらうつもり」
「オーウェン殿下の? 何故です?」
「だって、オーウェン殿下には後一年で活躍してもらわないといけないのよ。剣魔祭は格好のアピールの場じゃない」
「なるほど、剣魔祭で優勝できれば成績不良にも言い訳は立ちますね」

 剣武魔闘祭は意外と国中から注目される学園祭である。ここでの成績が将来に関わるケースもあり、評価として決して侮れないのだ。

「では、やはり審判買収しますか?」
「なんでそう不正をさせたがるのよ!」
「だって、どう考えてもオーウェン殿下と愉快な仲間達が素で勝てるわけないじゃないですか」

 そんなん無理ゲーじゃんとカミラははなから決めてかかっている。無理もないかとウェルシェも思うが、だからといって不正をしようとは考えていない。

「それで殿下達が優勝したとして、王妃殿下が調査しないと思うの?」
「まあ……王妃殿下なら間違いなく調べますね」

 カミラでさえ疑うのだから実の母であるオルメリアが疑心を抱かぬはずもない。ましてや彼女は実の息子さえ国の為なら廃嫡も辞さない厳しい女性だ。

「不正がバレたら元も子もないでしょ」
「ふむ、それもそうですね」
「実はアイリス様も同じ事を考えたみたいで、目下オーウェン殿下達は剣魔祭に向けて猛特訓中みたいなの」
「ほう、あの狂女様は意外とまともな手段を選択されましたか」
「ただ、彼らは顰蹙を買ってるし、オーウェン殿下の廃嫡の噂が流れたせいで思うように訓練できないみたい」

 みなが敬遠してオーウェン達を避けるものだから、特訓相手にも困っているようだ。

「だから、レーキ様やジョウジ様にこっそり彼らの特訓の便宜を図ってもらうつもりなの」
「それではホントに正攻法で勝負されるのですか!?」
「ふふふ、ちゃあんと正々堂々勝負するわよ」

 イタズラっ子のようにウェルシェは楽し気に笑った。

「きちんと私の手でイーリヤの優勝を阻んでみせるわ」
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