あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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第5章 そのお祭り、またまた開催ですか?

第52話 その努力、本当は何のためですか?①

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「さすがエル様、見事にございました」
「剣闘の部を予選突破するのは快挙ですぜ」

 闘技台から降りたエーリックをスレインとセルランが迎えた。

「ちょっと出来すぎ感はあったけどね」

 腹心達の祝福にエーリックは自嘲気味に笑った。

「ご謙遜を」
「そうですぜ、殿下の努力の成果ですって」
「うん、僕はこの日の為にずっと頑張ってはきたよ」

 昨年は全ての種目で予選落ち。その雪辱を晴らそうとエーリックは精進してきた。その自覚と自負はある。

「だけど努力をしてきたのは僕だけじゃないよね?」
「それは……まあ」
「予選落ちした人達だって決して頑張ってなかったわけじゃないんだ」

 同じように練習してきた生徒達は数多くいる。それでも涙を飲んで闘技場から去っていった者の方が多い。先ほど戦ったクラインだってかなり修練は積んできたようだった。

「ですがこのスレイン、エル様が誰よりも頑張っておられたのを知っておりますぞ」
「うん、まあ僕も人一倍研鑽を積んだ自信はあるよ」
「なら、努力が実ったんですから良いじゃねぇですか」
「うん、でも……」

 エーリックはちらりと後ろを見た。

「努力すれば結果が出ると勘違いしてはいけないと思うんだ」

 スレインとセルランも釣られて闘技場へと視線を戻した。

「これは何かの間違いだ!」

 そこでは闘技台の上でクラインが喚き散らして醜態を晒していた。

「こんなの認められるか!」
「試合は終わったのですから速やかにご退場ください」

 クラインの不服に主審や進行役の実行委員が辟易している。試合数の多い競技だけに時間のロスは避けたいのだろう。

「俺はこの日の為にいっぱいいっぱい鍛錬を積んできた」
「とにかく闘技台から降りて」
「俺は負けるわけにはいかない……いや、絶対負けるはずはないんだぁ!」

 クラインが駄々をこねる様子にスレインとセルランは肩をすくめた。

「あの者は昨年も同じ振る舞いをされてましたぞ」
「あれはねぇなぁ」
「全くです」
「二人とも、そんな風に言うものじゃないよ」

 セルランとスレインが呆れ目でクラインを見ていたが、エーリックの目は凪の湖面のように静かな光を宿していた。

「負けるのは悔しいものだもの。努力していたなら尚更ね」
「ですがね、勝敗は兵家の常ですぜ」
「昨年、殿下が予選決勝で負けた時にあのような見苦しい真似はなさいませんでした」
「殿下だって去年は決勝で負けて悔しい思いしたじゃねぇですかい」
「セルランの言う通りです。それでも殿下はあのような見苦しい真似はしなかったではありませんか」
「まあねぇ」

 あの時はウェルシェが褒めてくれたから、実はこれっぽっちも悔しくなかったりする。

「きっと、クライン先輩は努力の方向性を間違っているんだよ」

 だが、エーリックにはクラインの気持ちは分からなくもなかった。
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