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第5章 そのお祭り、またまた開催ですか?
第53話 その努力、本当は何のためですか?②
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「努力の方向性、でございますか?」
首を傾げるスレインにエーリックは頷いた。
「うん、クライン先輩は何の為に頑張ってきたんだろうね?」
「そりゃあ、キーノン伯爵は代々騎士の家系なんですから、騎士になる事なんじゃねぇんですかい?」
「だったらさ、優勝できなくても良いじゃないか」
「まあ、優勝するに越した事はねぇですが、しなくても問題はありませんな」
優勝が絶対条件ならほとんどの者が騎士の道を断念しなくてはならない。
「むしろ、今の振る舞いこそ騎士の道から外れるものですな」
「うん、そうだね」
未だに闘技台のうえでごねるクラインに向けるエーリックの目はどこか悲し気だった。
「クライン先輩は真っ向勝負するのが騎士道だと勘違いして、ただ愚直に剣を振っていたんじゃないかな。でもそれは自己の美学に陶酔し、己の為に剣を振っているのと同じ事だよ。騎士の剣は国を守る為にあるものだと先輩は忘れてしまっている」
「なるほど、だから努力の方向性が間違っていると」
「自分の目標を見失うのは明後日の方向に走るのと同じってことですな」
そうだね、と頷くエーリックの大人びた横顔を見てセルランは主人の成長が嬉しくなった。そして、よせばいいのに余計な事を聞いてしまう。
「殿下は何の為に剣を取ったんです?」
「僕が剣魔祭に出場するのはおかしいかい?」
「まあ、必要はねぇでしょ?」
オーウェン達と違いエーリックは剣武魔闘祭で好成績を必要としていないはずなのだ。
「それなのに本戦に出場する程の努力は何のためかと思いやしてね」
「決まっているじゃないか」
何を言っているんだ、そんなの分かり切っているだろうとエーリックは笑う。
「僕の目的はいつだってウェルシェだよ」
「姫さんの?」
「そう! 来年こそはウェルシェと一緒のクラスになるんだ!」
ちょっと待て!とセルランは心の中でいつものように突っ込む。それだけの為に他の選手の努力を踏みにじってきたのか!?
「だって、ここで良い成績を残せば今度こそ特区クラに入れるでしょ?」
「そりゃそうかもしれやせんが」
「今年は修学旅行じゃ別クラスだったせいでウェルシェとはほとんど別行動だったんだよ!」
ウェル成分不足なんだよと叫ぶエーリックに、何とも言えないずスレインとセルランはチベスナ顔だ。
ウェルシェが全てと、どこまでも行動原理がブレないエーリックには感心するやら呆れるやら。
「それにさ、ウェルシェの水着……すっごいエロかったんだよ!」
クラスが一緒だったらもっと鑑賞できたのに!
後悔しない為にも僕はもっともっと頑張るよ!
腹心が呆れているのにも気づかず拳を振って力説するエーリック。クラスが別のせいで今まで数々のラッキースケベイベントを逃していたやもしれないと悔しがる。
去年、剣武魔闘祭で予選敗退した時以上の悔しがりようだ。
「こんな姿を姫さんに見られでもしたら、百年の恋も冷めるってもんだぜ」
「これはトップシークレットですぞ」
「わーってるよ」
あの腹黒令嬢が恋をするという奇跡をセルランとスレインは目撃している。これではせっかくの奇跡がおじゃんになりかねない。二人は顔を見合わせて頷いた。
ここは憎めない主人の為にも、この秘密は墓場まで持っていくと誓った。
首を傾げるスレインにエーリックは頷いた。
「うん、クライン先輩は何の為に頑張ってきたんだろうね?」
「そりゃあ、キーノン伯爵は代々騎士の家系なんですから、騎士になる事なんじゃねぇんですかい?」
「だったらさ、優勝できなくても良いじゃないか」
「まあ、優勝するに越した事はねぇですが、しなくても問題はありませんな」
優勝が絶対条件ならほとんどの者が騎士の道を断念しなくてはならない。
「むしろ、今の振る舞いこそ騎士の道から外れるものですな」
「うん、そうだね」
未だに闘技台のうえでごねるクラインに向けるエーリックの目はどこか悲し気だった。
「クライン先輩は真っ向勝負するのが騎士道だと勘違いして、ただ愚直に剣を振っていたんじゃないかな。でもそれは自己の美学に陶酔し、己の為に剣を振っているのと同じ事だよ。騎士の剣は国を守る為にあるものだと先輩は忘れてしまっている」
「なるほど、だから努力の方向性が間違っていると」
「自分の目標を見失うのは明後日の方向に走るのと同じってことですな」
そうだね、と頷くエーリックの大人びた横顔を見てセルランは主人の成長が嬉しくなった。そして、よせばいいのに余計な事を聞いてしまう。
「殿下は何の為に剣を取ったんです?」
「僕が剣魔祭に出場するのはおかしいかい?」
「まあ、必要はねぇでしょ?」
オーウェン達と違いエーリックは剣武魔闘祭で好成績を必要としていないはずなのだ。
「それなのに本戦に出場する程の努力は何のためかと思いやしてね」
「決まっているじゃないか」
何を言っているんだ、そんなの分かり切っているだろうとエーリックは笑う。
「僕の目的はいつだってウェルシェだよ」
「姫さんの?」
「そう! 来年こそはウェルシェと一緒のクラスになるんだ!」
ちょっと待て!とセルランは心の中でいつものように突っ込む。それだけの為に他の選手の努力を踏みにじってきたのか!?
「だって、ここで良い成績を残せば今度こそ特区クラに入れるでしょ?」
「そりゃそうかもしれやせんが」
「今年は修学旅行じゃ別クラスだったせいでウェルシェとはほとんど別行動だったんだよ!」
ウェル成分不足なんだよと叫ぶエーリックに、何とも言えないずスレインとセルランはチベスナ顔だ。
ウェルシェが全てと、どこまでも行動原理がブレないエーリックには感心するやら呆れるやら。
「それにさ、ウェルシェの水着……すっごいエロかったんだよ!」
クラスが一緒だったらもっと鑑賞できたのに!
後悔しない為にも僕はもっともっと頑張るよ!
腹心が呆れているのにも気づかず拳を振って力説するエーリック。クラスが別のせいで今まで数々のラッキースケベイベントを逃していたやもしれないと悔しがる。
去年、剣武魔闘祭で予選敗退した時以上の悔しがりようだ。
「こんな姿を姫さんに見られでもしたら、百年の恋も冷めるってもんだぜ」
「これはトップシークレットですぞ」
「わーってるよ」
あの腹黒令嬢が恋をするという奇跡をセルランとスレインは目撃している。これではせっかくの奇跡がおじゃんになりかねない。二人は顔を見合わせて頷いた。
ここは憎めない主人の為にも、この秘密は墓場まで持っていくと誓った。
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