あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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第6章 その策士、いつも策に溺れてませんか?

第63話 その決勝戦、まさかの大金星ですか!?①

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「ところで、お嬢様……」

 次に魔丸投擲バルクホーガンの試合が控えているウェルシェの着替えを手伝いながら、カミラはふと疑問が口を衝いた。

「お嬢様が魔弾の射手クイックショットに敗北した時点で、賭けはほぼイーリヤ様の勝ちで決まったのではありませんか?」

 圧倒的不利な状況でウェルシェに悲壮感がない。それどころか、どこか楽し気に見えるのでカミラは何となく嫌な予感を覚えたからの質問であった。

「どう考えても魔丸投擲でお嬢様がイーリヤ様に勝てるとは思えないのですが」

 魔力量がものを言う脳筋競技では技巧派のウェルシェは圧倒的に不利である。逆に氷柱融解盤戯アイシクルメルティングなら腹黒魔術の使い手ウェルシェに分があるだろう。

 そうなると勝負の決め手はやはり魔弾の射手だったのだ。イーリヤとの賭けに勝つにはウェルシェはなんとしても先の競技で勝たねばならなかった。

「そうねぇ、確かにこのままだと私がイーリヤに勝つのは難しいわねぇ」
「そう言う割にずいぶん余裕そうですが?」

 だが、窮地のはずのウェルシェがニヒッと悪戯っ子のように笑うので、カミラの疑念はいよいよ深まった。

「やっぱり不正ずるをするおつもりなんじゃないんですか?」
「だ~か~ら~、私は正々堂々と戦うって言ってるじゃない」
「絶対ウソです! 間違いありません。絶対です!」

 私には分かりますとカミラが断言した。

「酷いわッ!」

 両手で顔を覆ってウェルシェが咽び嘆く。

「私、イーリヤと真剣勝負をして本当に楽しいって思ったの。勝つとか負けるとかじゃない。私はお互いの持てる全ての力を出し切ってぶつかり合う素晴らしさを知ったのよ」
「はいはい、そういうのは、もういいんで」

 儚い幻のようなウェルシェがさめざめと泣いて訴えれば大抵の人間はコロッと騙されるが、長年この腹黒に仕えているカミラの前には無意味だ。

「ぶぅ、カミラはもうちょっと私を甘やかしてくれてもいいと思うんだけどぉ」
「私はお嬢様の幼少期に甘やかし過ぎたと後悔しているのですよ」

 二人の出会いは今から十年前、ウェルシェ六歳、カミラ十三歳の時である。

 当時のウェルシェは超ウルトラスーパーヤバいくらい可愛い天使であった。その時の邂逅をカミラは今でも忘れない。

「あの時はお嬢様に目を奪われ、息をするのも忘れたほどでした」

 たっぷり五分は息をしていなかったカミラは本当の意味で昇天しかけた。その後、ウェルシェの母グロラッハ夫人ヴェルデガルドに頼み込んで専属侍女にしてもらい、それからは実の両親以上の溺愛っぷり。

 ところが年を追うごとにウェルシェの本性が次第に露見してきた。

「それがまさか、こんな腹黒娘だったなんてッ!」

 詐欺だッ!カミラの心の叫びは現実に口を衝いて飛び出したのだった。
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