あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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第6章 その策士、いつも策に溺れてませんか?

第65話 その侍女、主人の悪巧みを看破したんですか?①

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「えっ? えっ? えぇぇぇッ!?」

 普段あまり感情を露わにしないカミラが、あまりの驚きに珍しく大声で叫んでしまった。

「イ、イーリヤ様が負けた?……」

 想定外の事態にカミラは唖然とした。いや、それはカミラに限った事ではない。

 前評判では、今年の魔弾の射手クイックショットで優勝するのはウェルシェかイーリヤであろうと目されていた。故に先のウェルシェvs.イーリヤの準決勝が事実上の決勝戦だと思われていたのである。

 実際、全ての観客が決勝戦を消化試合と思っており、イーリヤが敗北した事実を受け止めきれずにいる。誰もが言葉を失い観客席はシーンと静まり返っていた。

「いったいどういう事なんですか?」
「どういう事も何も、見ての通りイーリヤが負けたのよ」

 カミラは戸惑い種明かしを要求したが、ウェルシェは勝ち誇ってニンマリするだけであった。

「つまり、イーリヤとの賭けは、まずは私の一勝って事ね」
「で、ですが、お嬢様は先程イーリヤ様に負けたではありませんか」
「あら、勝負はイーリヤの優勝を阻止する事でしょ?」

 ウェルシェはニヤニヤ笑いながらうそぶく。言われて思い返してみれば、ウェルシェはイーリヤに勝つとは言っていないとカミラも思い至った。

「だったら、イーリヤが優勝できなかった時点で魔弾の射手クイックショットは私の勝ちでしょ?」
「そう言う事に……なるのですか?」

 確かにウェルシェの言う通りではある。だが、どうにもカミラは釈然としない。

「私は正々堂々と勝負してイーリヤの優勝を阻止するって言ったけど、私がイーリヤに勝つとは言っていなかったでしょ?」
「ま、まさか!?」

 ハッ!とカミラは気がついた。
 この腹黒、何かやりやがった!

「お嬢様は最初からそのつもりだったのですか?」
「むふふふふ……」

 ウェルシェの優越感満載のイヤらしい笑いが全てを物語っている。カミラの背筋がぞくりと冷えた。

「あ、あなたという人は……」

 確かにイーリヤの優勝を阻止するかどうかを賭けの対象にしていた。それ以降もウェルシェはイーリヤの優勝を阻止するとずっと言っていた。最初からウェルシェは自分で勝つつもりはなかったのだ。
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