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第7章 その準決勝、ただの兄弟喧嘩じゃないですか?
第74話 その準決勝、まさか王子対決なんですか?①
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――カツーン、カツーン……
闘技場へと続く静かな回廊に足音が響き渡る。
通路の暗がりから陽の下の闘技場へと現れたのは金髪碧眼の美少年。彼は口を引き結び黙って進む。
「僕は必ず勝つ!」
彼は口の中で小さいが力強く呟いた。
そこには不退転の決意が感じられる。
剣武魔闘祭も最終日。
エーリックは剣闘の部三種目で本戦に残り、今から剣部門の準決勝。他の二種目は両方とも昨日の二回戦で惜しくも敗退していた。
それでも参加者多数の競技で本戦出場を三つも果たしたのは快挙と言ってよい。しかも今から準決勝。もっとも激戦区と言われる剣部門で四位以内確定なのだ。
「この種目が最後のチャンス。絶対に優勝しなきゃ」
だが、エーリックはなんとしても優勝をもぎ取りたかった。
「たとえ腕が折れようと足が砕けようと僕は負けるわけにいかない!」
炎天下の闘技台を闘志を漲らせた瞳で睨むように見つめる。そこには死さえも厭わぬ強い覚悟が窺える。
たかだか学生の大会で何が彼をそこまで駆り立てるのか?
エーリックはいつになく厳しい表情で闘技台へと続く階段を上る。徐々に闘技台の全容がエーリックの視界に入ってくる。
闘技台の上で待つはエーリックと同じく金髪碧眼の少年。
鞘に納めた剣を床に突き、そこに両手を乗せて仁王立ち。碧い瞳はきつく闘技台に上がってくるエーリックを睨んでいた。
「来たか」
「兄上……」
オーウェン・マルトニア。
この国の第一王子である。
彼こそが今からエーリックと準決勝で雌雄を決する相手。
「悪いが今日の試合、お前に負けてやるわけにはいかない」
「それは僕とて同じです」
睨みあう二人の視線がぶつかり合い、激しい火花が散る。開始の合図の前に双方ともに切り結びそうな雰囲気だ。
それもそのはず、昨年のケヴィンの一件以来、エーリックとオーウェンの間には確執が生じていた。
エーリックはウェルシェとの婚約に難癖をつけられ、オーウェンは大事な側近であり友であったケヴィンを失った。今や二人は互いに守るべき不可侵のものを脅かす仇同士。
「アイリスの為にも、友たちの為にも、俺は負けるわけにはいかん!」
「僕だってウェルシェの為にも絶対に勝ちます!」
なるほど、オーウェンが相手ならエーリックの意気込みも理解できる。
(優勝すれば来年の特別クラス入りがかなり有利になる……)
今年はあと一歩でウェルシェと離れ離れになってしまった。その悔しさを未だに忘れられない。
(そうすればウェルシェと同じ授業を……)
この間の修学旅行で見たウェルシェの水着姿が脳裏に浮かぶ。
(ぐへへへへ)
途端にエーリックがエロリックへと変貌を果たした。これこそが、真にエーリックが優勝を目指す原動力……エロは全ての想いを凌駕するのだ。
「手加減はしないぞ」
「望むところです」
主審が闘技台の中央へとやって来て右手を上げると二人は剣を抜いて構える。
「始めッ!」
右手を振り下ろすと同時に主審の口から開始の合図が放たれた。
闘技場へと続く静かな回廊に足音が響き渡る。
通路の暗がりから陽の下の闘技場へと現れたのは金髪碧眼の美少年。彼は口を引き結び黙って進む。
「僕は必ず勝つ!」
彼は口の中で小さいが力強く呟いた。
そこには不退転の決意が感じられる。
剣武魔闘祭も最終日。
エーリックは剣闘の部三種目で本戦に残り、今から剣部門の準決勝。他の二種目は両方とも昨日の二回戦で惜しくも敗退していた。
それでも参加者多数の競技で本戦出場を三つも果たしたのは快挙と言ってよい。しかも今から準決勝。もっとも激戦区と言われる剣部門で四位以内確定なのだ。
「この種目が最後のチャンス。絶対に優勝しなきゃ」
だが、エーリックはなんとしても優勝をもぎ取りたかった。
「たとえ腕が折れようと足が砕けようと僕は負けるわけにいかない!」
炎天下の闘技台を闘志を漲らせた瞳で睨むように見つめる。そこには死さえも厭わぬ強い覚悟が窺える。
たかだか学生の大会で何が彼をそこまで駆り立てるのか?
エーリックはいつになく厳しい表情で闘技台へと続く階段を上る。徐々に闘技台の全容がエーリックの視界に入ってくる。
闘技台の上で待つはエーリックと同じく金髪碧眼の少年。
鞘に納めた剣を床に突き、そこに両手を乗せて仁王立ち。碧い瞳はきつく闘技台に上がってくるエーリックを睨んでいた。
「来たか」
「兄上……」
オーウェン・マルトニア。
この国の第一王子である。
彼こそが今からエーリックと準決勝で雌雄を決する相手。
「悪いが今日の試合、お前に負けてやるわけにはいかない」
「それは僕とて同じです」
睨みあう二人の視線がぶつかり合い、激しい火花が散る。開始の合図の前に双方ともに切り結びそうな雰囲気だ。
それもそのはず、昨年のケヴィンの一件以来、エーリックとオーウェンの間には確執が生じていた。
エーリックはウェルシェとの婚約に難癖をつけられ、オーウェンは大事な側近であり友であったケヴィンを失った。今や二人は互いに守るべき不可侵のものを脅かす仇同士。
「アイリスの為にも、友たちの為にも、俺は負けるわけにはいかん!」
「僕だってウェルシェの為にも絶対に勝ちます!」
なるほど、オーウェンが相手ならエーリックの意気込みも理解できる。
(優勝すれば来年の特別クラス入りがかなり有利になる……)
今年はあと一歩でウェルシェと離れ離れになってしまった。その悔しさを未だに忘れられない。
(そうすればウェルシェと同じ授業を……)
この間の修学旅行で見たウェルシェの水着姿が脳裏に浮かぶ。
(ぐへへへへ)
途端にエーリックがエロリックへと変貌を果たした。これこそが、真にエーリックが優勝を目指す原動力……エロは全ての想いを凌駕するのだ。
「手加減はしないぞ」
「望むところです」
主審が闘技台の中央へとやって来て右手を上げると二人は剣を抜いて構える。
「始めッ!」
右手を振り下ろすと同時に主審の口から開始の合図が放たれた。
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