あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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第7章 その準決勝、ただの兄弟喧嘩じゃないですか?

第80話 その腹黒、本当に喜んでませんか?①

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「わあ! 勝った勝った、エーリック様が勝ったわ!」

 凄い凄いとウェルシェがぴょんぴょん飛び跳ねる。

 普段お澄まししているウェルシェが少女らしく振る舞うのはとても可愛い。闘技台からそれを見てエーリックがだらしないくらい相好を崩している。

 だが、これも仕方がないとカミラは思う。とても演技とは思えないほど自然な喜びように、擬態と分かっているはずのカミラでさえニヘラと顔を崩すくらい可愛いのだから。

 ――お嬢様、おそろしい子!?

 本気で喜んでいるとしか思えない擬態とは、長年仕えていたカミラも脱帽の迫真の演技!……と、カミラは勘違いしていた。

 実際にはウェルシェは本気で喜んでいたのである。演技ではないのだからカミラが擬態と思えないのは当たり前。

「さあ、エーリック様の勝利を祝いに行きましょ」

 鼻歌混じりにルンルンとスキップでも踏みそうなウェルシェの様子に、見えないところでも気を抜かず名演技を継続するとはとカミラは感心しながら後を追った。

「ところで、これでオーウェン殿下の廃嫡に王手がかかったのではありませんか?」
「まあ、起きちゃったもんはしょうがないわ」

 あっけらかんと答えるウェルシェにあまり気にした様子はない。

「オーウェン殿下については別の手を考えましょ」
「もう猶予はあまりありませんよ?」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ」
「その根拠はいったいどこから沸いてくるんです?」
「ほら、アイリス様が言ってたじゃない」

 はて?とカミラは思案したがウェルシェが何の事を指しているのかすぐには分からなかった。

「イベントとか何とか、一発逆転の方策があるって」
「ああ、あれですか?」

 そう言えばキレ散らかしながらアイリスがほざいていたなとカミラも思い出した。

「何が起きるかは分からないけど、アイリス様はかなり自信があるみたいだったじゃない?」
「根拠の無い自信は勘違いとか妄信って言うんですよ」
「だけど修学旅行で何かしてたみたいだし、ある程度は信憑性あるんじゃない?」
「そういえば新たな遺跡を発見したのでしたね」

 あれ程の大発見なら功績として認めてもいいんじゃないかとカミラは思ったが、あれに関してはクラス全体による発見であり歴史教師が代表となっていたのでアイリスの手柄とはなっていなかった。

 それにカミラは知らないが、アイリスは『雪薔薇の指輪フローゼンエンゲージ』をがめている。それにどうして入口の開け方を知っていたのか追及されるのは都合が悪かったのだ。

「それでは、お嬢様のこれからの方針はアイリス様の陰ながらの支援でしょうか?」
「そのつもりよ」

 アイリスの手助けをするウェルシェの考えは理解できる。だけど、ともカミラは思う。

「ですがアイリス様の言葉を信じるのなら、そのイベントが上手くいくとお嬢様やイーリヤ様がザマァされてしまうのではありませんか?」
「だから、その遺跡について調べさせているのよ」

 しかし、ウェルシェはそんなのは織り込み済みだと胸を張った。
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