あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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第7章 その準決勝、ただの兄弟喧嘩じゃないですか?

第85話 その王様、完全に尻に敷かれてませんか?②

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「腐れ縁ではあったけど、あなたの事は好きだったしね」
「わ、私だって君の事を大事に思っていたぞ」

 必死な夫にオルメリアは肘掛けに頬杖を突いてクスリと笑う。歳を感じさせない艶姿を見せる王妃に、今さらながらワイゼンはどぎまぎとした。

 この部分だけを切り取って聞けば、とても甘酸っぱそうなストーリーを期待しそうになる。が、その内情は何とも情け無いワイゼンの実情があった。

「だけど、ホントは私だって王妃なんて嫌だったんだからね」
「いや、それはホントに君には済まないと思っている。だが、君の他に王妃に相応しい者がいなかったから……」
「嘘おっしゃい!」

 オルメリアはぴしゃりと夫の言い訳を遮った。

「あなたがたんにヴェルと結婚するのを嫌がっただけじゃない」

 ヴェルとはグロラッハ侯爵夫人ヴェルデガルド、つまりウェルシェの母親のことである。

「もともとヴェルがあなたの妃の第一候補だったんでしょ」
「い、いや、そ、それは……」
「私が何も知らなかったとでも思ってたの?」

 妻の指摘にワイゼンの目がオドオドキョロキョロと忙しなく動く。

「当時の令嬢の中でヴェルほどの人物は他にいなかったもの」

 実はワイゼンの妃として最も相応しいと推されていたのはヴェルデガルドだったのである。当時のヴェルデガルドは家格、品格、人格に加えて能力、美貌、人望も備わったスーパーレディとして注目されていた。

「だけどヴェルちょっと怖いもんねぇ」
「そ、そんな事は……」

 盛大に泳ぎまくるワイゼンの目が全てを物語る。

「あ、あれはだなぁ、ユリアスの奴がどうしても彼女と結婚したいと懇願したからであって」

 ユリアスとは現グロラッハ侯爵であり、ウェルシェの父である。

 彼はヴェルデガルドに一目惚れしていた。しかし、彼女はワイゼンの妃候補筆頭。そこでユリアスはワイゼンに土下座までして頼み込んだ。ヴェルデガルドが恐くて彼女との婚約に乗り気ではなかったワイゼンは渡りに船とばかりにユリアスに協力したのが事の真相である。

親友ユリアスの恋路を応援したいと思っただけだぞ」
「まあ、そういう事にしといてあげる」

 苦しい言い訳をする夫に、クスクスとオルメリアは笑った。
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