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第8章 その大会、本当にクライマックスですか?
第97話 その異国の王子、やっぱり悪い男だったんですか?②
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(そうよ……エーリック様は私に……ぞっこんなんだから!)
いや、今でも頭では理解できているのだ。だが、思考に気持ちがついてこない。理性では違うと判断していながら胸の奥のわだかまりが消えない。
――それは嫉妬。
「エーリック様は私を裏切ったりしませんわ!」
「そう信じたいだけだろ?」
「エーリック様は私を愛していると仰ったんです」
「ふ~ん、まあ、確かにエーリックは君に夢中だね」
キッと睨むウェルシェにもトレヴィルは嫌らしい笑いを崩さない。それどころか、余裕で核心を突いてきた。
「でも、彼が愛しているのは、いったいどのウェルシェだろうね?」
そんなの決まっている。
エーリックが好きだと言ったウェルシェは擬態だ。それはウェルシェ自身が一番よく知っている。
「さてさて、エーリックは君の本性を知っても愛してくれるかな?」
「そんな事……決まっていますわ」
「どう決まっているんだい?」
(本当の私はエーリック様の好みじゃ……ない)
――それは恐怖。
その時、エーリックがどんな反応をするのか知るのがウェルシェは怖い。
「いや、そもそも婚約者の本当の姿に気づかない彼が悪いのかな?」
「エーリック様は悪くありませんわ!」
だって、それはウェルシェが隠してきた事実なのだから。
「エーリックが君を本当に愛しているなら気がつくべきだろ」
「それは……」
「愛し合っているのに隠し事してるのも変だよな」
「……」
トレヴィルは的確に退路を断ってウェルシェを追い詰める。
いつの間にか抵抗を続けていたウェルシェの手から力が抜け、トレヴィルの腕にすっぽり包まれていた。だが、心が千々に乱れた今のウェルシェに気づくゆとりがない。
「エーリックは酷い男だ」
「違います。エーリック様は……とってもお優しい方……です」
首を振って否定するも耳元で囁かれるトレヴィルの毒に、男女の機微に疎いウェルシェはの心が蝕まれていく。
「怪我で婚約者を心配させておいて、そのくせ目の前で他の女の子とイチャついてるのに?」
「あなただって不特定多数のご令嬢と仲良くされているではありませんの」
「あの子達は本気じゃないさ」
「なお悪いですわ」
「そうかな?」
「女性を弄んで悪気がないんですの?」
「本気の方がよっぽどタチが悪いだろ?」
ウェルシェの非難にもトレヴィルはくつくつと笑って悪びれたところはない。
「複数の女の子に熱を上げれば修羅場だろ?」
「さ、最初から他の女性に手を出さなければよろしいではありませんか」
「だけど、王族はたいてい複数の女性を娶るものだろ?」
ウェルシェの反論にはいつものキレがなく、トレヴィルの余裕の笑みを崩す事はできなかった。
いや、今でも頭では理解できているのだ。だが、思考に気持ちがついてこない。理性では違うと判断していながら胸の奥のわだかまりが消えない。
――それは嫉妬。
「エーリック様は私を裏切ったりしませんわ!」
「そう信じたいだけだろ?」
「エーリック様は私を愛していると仰ったんです」
「ふ~ん、まあ、確かにエーリックは君に夢中だね」
キッと睨むウェルシェにもトレヴィルは嫌らしい笑いを崩さない。それどころか、余裕で核心を突いてきた。
「でも、彼が愛しているのは、いったいどのウェルシェだろうね?」
そんなの決まっている。
エーリックが好きだと言ったウェルシェは擬態だ。それはウェルシェ自身が一番よく知っている。
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「そんな事……決まっていますわ」
「どう決まっているんだい?」
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「いや、そもそも婚約者の本当の姿に気づかない彼が悪いのかな?」
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「エーリックが君を本当に愛しているなら気がつくべきだろ」
「それは……」
「愛し合っているのに隠し事してるのも変だよな」
「……」
トレヴィルは的確に退路を断ってウェルシェを追い詰める。
いつの間にか抵抗を続けていたウェルシェの手から力が抜け、トレヴィルの腕にすっぽり包まれていた。だが、心が千々に乱れた今のウェルシェに気づくゆとりがない。
「エーリックは酷い男だ」
「違います。エーリック様は……とってもお優しい方……です」
首を振って否定するも耳元で囁かれるトレヴィルの毒に、男女の機微に疎いウェルシェはの心が蝕まれていく。
「怪我で婚約者を心配させておいて、そのくせ目の前で他の女の子とイチャついてるのに?」
「あなただって不特定多数のご令嬢と仲良くされているではありませんの」
「あの子達は本気じゃないさ」
「なお悪いですわ」
「そうかな?」
「女性を弄んで悪気がないんですの?」
「本気の方がよっぽどタチが悪いだろ?」
ウェルシェの非難にもトレヴィルはくつくつと笑って悪びれたところはない。
「複数の女の子に熱を上げれば修羅場だろ?」
「さ、最初から他の女性に手を出さなければよろしいではありませんか」
「だけど、王族はたいてい複数の女性を娶るものだろ?」
ウェルシェの反論にはいつものキレがなく、トレヴィルの余裕の笑みを崩す事はできなかった。
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