あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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第8章 その大会、本当にクライマックスですか?

第100話 そのヒロイン、ベーコンレタスが大好物だったんですか?②

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(エーリック様!?)

 ウェルシェが慌ててバッと振り返ると、そこには目を大きく見開いて呆然とするエーリックがいた。

(い、今のエーリック様に見られてた!?)

 どんなに弁明をしても他の男性と抱き合いキスをしようとしていた事実は覆せない。これはどう見ても浮気である。

「ウェ、ウェルシェ?」
「エーリック様……これは……違う……違うんです……」

 目を丸くするエーリックにウェルシェはなんとか言い訳を口にしようとした。だが、いつものようにスラスラと言葉が出てこない。

「本…当に……わ、私、違ッ!?」

 ――ぽろり……

 ウェルシェは上手く言い訳ができず、何故か涙が溢れて零れて落ちた。感情が全くコントロールできない。

「ごめんなさい……私!」

 居た堪れなくなったウェルシェは、サッと踵を返すと逃げるように走り出した。

「待って、ウェルシェ!――いてッ!?」

 エーリックは制止の声を上げて追いかけようとしたが、試合の興奮が冷めたせいで足の痛みが今になって一気に襲ってきたらしい。堪えきれエーリックはずうずくまってしまった。

「ははは、君はそこで指をくわえて見てるといい」

 ウェルシェのクリーンヒットから回復したトレヴィルが、エーリックの無様な姿をふんっと笑う。

「ウェルシェは俺が慰めてやるよ」

 そして、エーリックを置き去りにトレヴィルは猟犬よろしく獲物ウェルシェの後を追った。

 否、追おうとした――のだが……

 ガシッ!

「に~が~さ~な~い」
「ヒィッ!?」

 いきなり背後から腕を掴まれ、振り返れば目が合ったアイリスがニタァと嗤う。

「な、なんなんだ、お前は!?」

 トレヴィルが幾ら振り払おうとしても、万力に締め付けられたように全く微動だにしない。

 学園屈指の魔力で身体強化したアイリスはゴリラにも勝る。トレヴィル程度の筋肉ではびくともしないのだ。

「離してくれ」
「あんな木っ葉悪役令嬢よりも私を見て」
「俺が愛しているのはウェルシェだ」
「笑わせないで」

 トレヴィルの空々しいセリフをアイリスは鼻で笑った。

「最初はオーウェンの婚約者であるイーリヤに迫ってたじゃない」
「あ、あれは……そう、真実の愛だ……俺は真実の愛に気がついたんだ」
「なぁにが真実の愛よ。母親に言われただけのくせに」
「――ッ!?」

 そう、アイリスは全てを知っていた。
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