あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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間章 水面下で動く者たち

閑話トレヴィル③ 隣国王子の暗躍③

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「精神に働きかけ、幻覚や暗示をかけて身体にまで影響を与える魔術ですね」
「ー―ッ!?」

 カミラの指摘にトレヴィルは動揺してしまった。心臓がどくりと高鳴る。取りに足りない侍女のはずなのに、カミラに全てが見透かされたようにトレヴィルには思えた。

「主審が気づくはずありません。だって、実際には何も起きていないのですから」
「ま、魔力測定器は幻術だって誤魔化せないぞ」
「我々はもとより大気中にだって魔力は存在しております。微量な魔力まで検知していたら警告音アラートが止まりませんよ」
「検出限界の微弱な魔力量で大それた魔術なんて使えないだろ」
「あなたは出場する度に闘技台の各所に少しずつご自分の魔力を残されていたのでしょう?」

 つまり、闘技台に仕込まれたトレヴィル魔力残滓のせいで、トレヴィルのみ魔術を使用しても魔力測定器は検知できなかったのだ。

 木を隠すなら森の中。木を隠したいなら森を予め作れば良いと言うわけだ。

「まあ、それでもせいぜい足元が小石ほど隆起したように錯覚させる程度の小規模な魔術でしょうが」
「……どうするつもりだ?」

 正確にタネを明かされトレヴィルはいよいよ目の前の侍女を警戒した。

「実行委員に報告して俺を失格にするか?」
「いいえ、エーリック殿下が負けた方が都合が良いので」
「?」

 トレヴィルは知らないが、ウェルシェはエーリックが国王になって欲しくない。ここで優勝などしたらエーリックの即位を望む声が大きくなる。

 カミラはウェルシェの忠実な僕。主人の願いを知っているので今回はお口にチャックである。

「それに私としてはエーリック殿下がどうなろうと知った事ではありませんし」
「一応あれでも君の国の王子だろ?」

 トレヴィルは苦笑いした。

「そんなのどうでもいいんですよ」
「――ッ!?」

 急にカミラの雰囲気が変わった。

「私にとって重要なのはお嬢様だけですから」

 無表情で感情が読めないカミラから、怒気のような圧力が膨れ上がる。

「私が許せないのは、あなたが劣悪な情動を抱いてお嬢様を傷つけようとした行為です」

 それに気圧されてトレヴィルは知らず知らずのうちに後退あとずさっていた。
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