あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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間章 水面下で動く者たち

閑話トレヴィル④ 虎よりも竜よりも恐ろしきもの①

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「あなたは私のお嬢様に暗示をかけましたね?」
「ふふふ、そんな恐い顔をしては、せっかくの美しいレディが台無しだよ」

 カミラの殺気にトレヴィルは気圧されていた。それでも何とか取り繕い、軽口を叩いて余裕を見せる。

(大丈夫だ。俺にはまだ切り札が――)

 残されているはずだった……

「そんなちんけな術は私に通用しませんよ」
「……」

 そう、トレヴィルは暗示と幻術によって人の心を操れる。だが、先程から暗示をかけ続けていたのに、カミラには全く効いている感じがしない。ウェルシェや他の令嬢達にはちゃんと効果があったのに。

「本来なら、お嬢様にだって効くような術ではありませんが……ずいぶん長い時間をかけて毒を流し込んでくれたものです」
「他の女と違ってウェルシェはなかなかガードが堅かったからな」

 隙だらけの未熟な若い令嬢は暗示をかければすぐ堕とせる。だが、ウェルシェはどうにも簡単にはなびかなかった。

「あそこまで心を掌握するのに苦労させられた」

 そこで、エーリックとの不和を誘って揺さぶり続け、心の隙を作りながら徐々に暗示を浸透させたのである。

「もう少しでウェルシェを俺のモノにできそうだったんだがな」
「まさかあの娘に助けられるとは私も思いもしませんでした。あのエセ聖女、意外とモノホンなんでしょうか?」

 トレヴィルの術は強くはない。だが、時間をかけてきた分、容易には解除できないはずだった。それをアイリスは一瞬で掻き消したのである。

「それにしても、随分と手の込んだ真似をされましたね」
「男ならウェルシェほどの女を欲するのは当然だろ?」
「ですが、本来の目的はお嬢様ではなかったはずでしょう」
「ああ、マルトニアの国力を削ぐのが俺に与えられた使命」

 トレヴィルはすらすらと疑問も感じず口を割る。

「マルトニアとトリナの国力差が徐々に開きつつある事を現王妃ははうえが脅威に感じたのさ」
あの娘アイリス様が言っていたマザコンは本当の事ですか」
「俺はマザコンじゃない!」
「トリナの国力を上げなければ隣国の国力を低下させても意味はない。それに気づいていながら母親に従っているのでしょう?」

 痛いところを突かれてトレヴィルは口を噤んだ。
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