あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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間章 水面下で動く者たち

閑話アイリス⑦ 転生ヒロインの誤算②

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「頼みの綱のオーウェンも準決勝でエーリックに負けちゃうし」

 これでは剣武魔闘祭でオーウェンや他の攻略対象達に好成績を取らせて悪役令嬢共イーリヤとウェルシェや王妃オルメリアをギャフンと言わせるアイリスの作戦がおじゃんである。

「何がみんなの幸せの為よ!」

 この原因を作った張本人は間違いなく魔丸投擲の選手を強化し、婚約者のエーリックを育ててきたウェルシェだ。

「言ってる事とやってる事がアベコベじゃない!」

 もっとも、ウェルシェは強化合宿に誘ったのに、それを拒絶したのはアイリスの方である。また、レーキ達を使ってオーウェン達の特訓にも影ながら助力していたのに、それを無駄にしたのはオーウェン達である。

まずいわ、このままじゃオーウェンが廃嫡されてしまう……って、まさか!?」

 アイリスはハッとした。

「アイツ、最初からこれが目的だったんじゃない?」

 オーウェンを陥れエーリックを国王にさせるのがウェルシェの真の狙い。そしたら自動的にウェルシェが王妃になる。

「そうか、そうだったのね!」

 そう考えれば全て辻褄が合う。

「ケヴィンを避けていたのはエーリックを落として王妃になる為だったのね。やっぱあの女、転生者なんじゃないの?」

 アイリスの中で点と点が結びつき一本の線に繋がった。

 謎はすべて解けた!
 Q.E.D.―証明終了―である。

「あの腹黒女めッ! 虫も殺さないような顔して何て悪辣なのかしら」

 可愛い顔でにこにこ笑い、油断したところを後ろから刺す。全くもって悪逆非道な姦計である。まさに悪役令嬢の所業ではないか。

「絶対あんたの思い通りにはさせないわ!」

 こうなったら意地でもエーリックを攻略してやる!

悪役令嬢達あんたらを婚約破棄イベントでザマァしてやるんだから!」

 決意を胸に正義のヒロインアイリスは、悪の枢軸ウェルシェとイーリヤの打倒を誓った。

「そうすればエーリックが即位しても私が王妃になれるもんね」

 ずいぶん打算的で安直な正義のヒロインではあるが。

「こうなってくるとやっぱ『雪薔薇の女王』イベント攻略は必須ね。それに、剣魔祭の決勝では順調にイベントもこなせたし、きっとトレヴィルの攻略も可能なはずだわ」

 アイリスの思惑通り決勝戦ではトレヴィルがイベント通り勝利の為に卑怯な手段を使った。だけどアイリスは知っている。

「実はこれってトリナの王妃がかけた呪縛のせいなのよね。その呪縛を私の力で解き放てば、トレヴィルは真実の愛に目覚めるのよね」

 それがトレヴィルを攻略するのに必要なフラグだった。だから、決勝戦の終了後にアイリスは乱入し、トレヴィルにアプローチしたのである。その時の選択肢に間違いはないはず。

「負けたエーリックへのフォローもバッチリできたし。これで二人の好感度も多少は上がったはずよね?」

 計画通り!とガッツポーズしたアイリスは天に向かって咆えるのだった。

「見てなさい腹黒女ども! アンタらから全てを奪って吠えヅラかかせてやるわ!」

 だが、アイリスは知らなかった。

 トリナの王妃にかけられたトレヴィルの呪縛は既に解かれている事に。
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