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間章 水面下で動く者たち
閑話ネーヴェの雪④ そして歴史は繰り返される②
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「むっ!……ん、ぐっ、た、確かに……」
助手達に諭されアキも自分の迂闊さを反省した。
「とは言え、このままでは埒が明かん」
「ええ、ですがファーストコンタクトは大事です」
「何事も第一印象が重要ですよ」
「分かっている」
ホントですかぁ?と助手達は疑いの目を向ける。
アキ・オーロジー29才、折衝が苦手で学会にいられなくなったマルトニア学園考古学教師。交渉ごとで全く信用が無い。
「んっ、んっ、おはよう美しき眠り姫よ」
何で口説き文句!?と助手三人衆は心の中で突っ込んだ。いや、カッコいい系美女のアキが口にすると結構サマにはなっている。なってはいるが、もう少しマシな対応はできないものだろうか?
「そなたは?」
ハラハラしている助手の心配をよそにネーヴェの光を無くした瞳がアキへと向けられた。
「私はマルトニア王国の考古学者アキ・オーロジーという者だ。君はあの雪薔薇の女王で間違いないだろうか?」
「ちょっと先生!」
「ぜんぜん分かってないじゃないですか!」
「挨拶と自己紹介は基本だろ!」
間違ってはいない。間違ってはいないが、もう少し女性らしく物腰柔らかくできないものだろうかと助手三人衆は心の中で突っ込んだ。
「雪薔薇の女王?」
氷の彫像の如く動かぬ顔でネーヴェは小首を傾げた。
「ああ済まない、雪薔薇の女王は後世に付けられた名だったな」
「後世……」
「そうだネーヴェ・ロゼンヴァイスよ。君の王国が亡んで既に数百年は経つ」
「「「先生!?」」」
「何だ助手ABC」
「「「それは言っちゃダメなヤツ!」」」
アキの無神経な発言に助手達は慌てた。自分の国が亡んだなどと言われてネーヴェが激昂しないとも限らない。
「あっ……」
アキも自分の失言に拙いと気づいた。
ここで力を暴走でもされてしまったら。アキと助手達は揃ってギギギッと首をネーヴェへと向けた。
雪薔薇の女王はアキ達をただ黙って見つめて……
……………………
…………
……
――ブワッ!
ルインズ遺跡から突如として溢れた冷気はサァッと衝撃派の如く一瞬にして辺り一帯へ広がり、遺跡も隣接する街も、美しい浜辺も何もかも飲み込む。
――そして、静寂の世界へと変貌した
その冷気は絶大で、全ての動きを止める絶対零度さえ通り越し、全ての時をも止める。
人も、馬も、犬も、猫も、空を飛ぶ鳥も……何もかもが静止している。そんな動くものは何も無い世界。
暗雲が立ち込め始め、白に玄が混じり灰色の世界へと変貌した。それはネーヴェが閉じ込められていた心象世界そのもの。
「みんな凍ってしまった……」
その中心に彼女はいた。
「このままでは……」
前合わせの白い装束に身を包んだ美しい雪薔薇の女王。襟がはだけて露出した肩が艶めかしい。
「あれはどこじゃ?」
何かを探すように彼女は辺りを見回すが、目的の物が見つからないようだった。
「ない……妾の薔薇が……『約束の薔薇』が……どこにもない……」
しばらく周囲に首を巡らしていたネーヴェは、ふと西の方角を見るとスッと目を細めた。
「あっちじゃな」
ネーヴェはその方向へ向かって音も無く歩き始めた。それはマルトニア王国の王都マルセイルがある方角。
今ここに雪薔薇の女王の伝説が再び動き出した。
助手達に諭されアキも自分の迂闊さを反省した。
「とは言え、このままでは埒が明かん」
「ええ、ですがファーストコンタクトは大事です」
「何事も第一印象が重要ですよ」
「分かっている」
ホントですかぁ?と助手達は疑いの目を向ける。
アキ・オーロジー29才、折衝が苦手で学会にいられなくなったマルトニア学園考古学教師。交渉ごとで全く信用が無い。
「んっ、んっ、おはよう美しき眠り姫よ」
何で口説き文句!?と助手三人衆は心の中で突っ込んだ。いや、カッコいい系美女のアキが口にすると結構サマにはなっている。なってはいるが、もう少しマシな対応はできないものだろうか?
「そなたは?」
ハラハラしている助手の心配をよそにネーヴェの光を無くした瞳がアキへと向けられた。
「私はマルトニア王国の考古学者アキ・オーロジーという者だ。君はあの雪薔薇の女王で間違いないだろうか?」
「ちょっと先生!」
「ぜんぜん分かってないじゃないですか!」
「挨拶と自己紹介は基本だろ!」
間違ってはいない。間違ってはいないが、もう少し女性らしく物腰柔らかくできないものだろうかと助手三人衆は心の中で突っ込んだ。
「雪薔薇の女王?」
氷の彫像の如く動かぬ顔でネーヴェは小首を傾げた。
「ああ済まない、雪薔薇の女王は後世に付けられた名だったな」
「後世……」
「そうだネーヴェ・ロゼンヴァイスよ。君の王国が亡んで既に数百年は経つ」
「「「先生!?」」」
「何だ助手ABC」
「「「それは言っちゃダメなヤツ!」」」
アキの無神経な発言に助手達は慌てた。自分の国が亡んだなどと言われてネーヴェが激昂しないとも限らない。
「あっ……」
アキも自分の失言に拙いと気づいた。
ここで力を暴走でもされてしまったら。アキと助手達は揃ってギギギッと首をネーヴェへと向けた。
雪薔薇の女王はアキ達をただ黙って見つめて……
……………………
…………
……
――ブワッ!
ルインズ遺跡から突如として溢れた冷気はサァッと衝撃派の如く一瞬にして辺り一帯へ広がり、遺跡も隣接する街も、美しい浜辺も何もかも飲み込む。
――そして、静寂の世界へと変貌した
その冷気は絶大で、全ての動きを止める絶対零度さえ通り越し、全ての時をも止める。
人も、馬も、犬も、猫も、空を飛ぶ鳥も……何もかもが静止している。そんな動くものは何も無い世界。
暗雲が立ち込め始め、白に玄が混じり灰色の世界へと変貌した。それはネーヴェが閉じ込められていた心象世界そのもの。
「みんな凍ってしまった……」
その中心に彼女はいた。
「このままでは……」
前合わせの白い装束に身を包んだ美しい雪薔薇の女王。襟がはだけて露出した肩が艶めかしい。
「あれはどこじゃ?」
何かを探すように彼女は辺りを見回すが、目的の物が見つからないようだった。
「ない……妾の薔薇が……『約束の薔薇』が……どこにもない……」
しばらく周囲に首を巡らしていたネーヴェは、ふと西の方角を見るとスッと目を細めた。
「あっちじゃな」
ネーヴェはその方向へ向かって音も無く歩き始めた。それはマルトニア王国の王都マルセイルがある方角。
今ここに雪薔薇の女王の伝説が再び動き出した。
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