あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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第9章 その王子様、本当に改心したんですか?

第110話 その隣国の王子、本当に改心したんですか?

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「あの侍女に比べたら母上なんて可愛いもんさ」
「そんなにですか」

 長年かけられていたマインドコントロールは簡単には解けないものだ。それを一瞬にして破る恐怖とはいったい?

「あの侍女の前に立つと想像しただけで身震いするよ。はっきり言って彼女と戦うくらいなら裸でドラゴンの前に立つ方がよっぽどマシだ」
「ドラゴンよりも恐ろしい侍女って……」

 そんな存在がマルトニアにいただろうか?

 エーリックは首を捻った。それほど強ければ噂になっていそうだし、第一どうして騎士とか傭兵ではなく侍女なのであろう。

「まあいっか」

 エーリックにしてみればトレヴィルとウェルシェがくっついてなければそれで良い。トレヴィルがウェルシェから手を引くなら願ったり叶ったりだ。

「それじゃあ、トレヴィルはもう他人の恋人に手を出すつもりはないんだね」
「ああ、横恋慕なんて良くはないだろ?」

 人は変われば変わるもんだ。

「女の子をたらし込んでいたのは母上への復讐だった。そうやって女性を貶める事で自我を保っていたんだな。だが、それはとてもつまらない人生だと気がついたよ」

 常に可愛い令嬢達を侍らせ薄ら笑いを浮かべていたトレヴィルが、一人で自分のところへ来て爽やかな笑顔を向けている。

「俺は失った青春を取り戻す!」
「せ、青春ですか?」
「そうだ、青春、それは努力、友情、勝利……そして愛!」

 いや、ちょっと変わりすぎだろ。

「これから俺は真実の愛を探す!」
「ウェ、ウェルシェはダメですよ?」
「当たり前だ、友の彼女に手を出すなんて無粋なマネはしないさ」
「えっ、友!?」
「そう、友だ!」

 いったい誰と誰が友人になったと言うのだろう?

「やはり俺の青春には真の友情が必要だと思うんだ」
「は、はあ?」

 それがどうして自分なのか?

「一度敵として戦った相手は『強敵』と書いて『とも』と呼ぶんだろ?」
「なんですかそれは!?」

 いったいどこのバトル系少年マンガだ。

「これから俺は真の友情を一つ一つ結んでいくつもりだ。そこでエーリック、君と友誼ゆうぎを結びたい」

 爽やかな笑顔でトレヴィルが右手を差し出してきた。

「俺の友達になってくれ」

 トレヴィルの握手を求める手をエーリックはしばし見つめていた。そして、顔を上げたエーリックは負けないくらい爽やかな笑顔を返して答えた。

「絶対イヤです」
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