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第10章 その女王様、王都に接近中なんですか?
第116話 そのお手製菓子、リーサル・ウェポンですか?①
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剣武魔闘祭も終わり二週間が経った。
ルインズの事件にも慣れ、マルトニア学園は落ち着きを取り戻していた。学生食堂の一画には金髪の美少年と銀髪の美少女の姿も見える。二人はお茶を楽しみながら談笑していた。
「エーリック様のクラスの模擬店は喫茶店なのでございますか?」
「提案者のカオロ嬢が張り切ってるんだ」
「まあ」
どうやら二人は来月の文化祭を話題としているようだ。
「しかも、執事喫茶だって」
「執事?……」
エーリックの説明によると、見目麗しき男子生徒に執事の格好をさせて給仕させる喫茶店なのだとか。
「『これが戦闘服よ!』とか言ってお手製の執事服を男子に渡しているんだ」
「どうして執事の服装なんですの?」
喫茶店はまあ学園祭の定番だから分からなくもない。だが、そこに執事の格好をさせる意味がウェルシェには全く理解できない。
「さあ? 僕にも分からないよ」
小首を傾げるウェルシェにエーリックも肩をすくめた。二人にとって転生者のアイリスの考える事は意味不明のようである。
「しかも兄上達まで巻き込んでいるんだ」
「ええ!?」
これにはウェルシェも驚きだ。他の、それも上級生を自分のクラスの催しに引き込むなど前代未聞。しかも、王族や高位貴族ばかりときている。
それに……
「オーウェン殿下に残された猶予はもうあまりございませんが?」
「そうなんだよねぇ」
オルメリアの出した宿題の期限は半年程しかない。学園祭で油を売っている時間はないのだ。オーウェンは本当に大丈夫なのだろうか?
(アイリス様だってそんな事は承知のはず……承知しているわよね?)
破天荒なアイリスの言動を思い出してウェルシェはだんだん不安になってきた。
「それでも兄上達は嬉々としてロオカ嬢の作った衣装に袖を通していたよ」
その話にウェルシェはギョッとした。アイリスは王族や高位貴族に執事服を着せたと言うのか!?
「まさかエーリック様もお召しになられるんですの?」
「そのまさかさ」
自分の婚約者に何をさせるのかとウェルシェは少し顔を険しくした。だいたい王族に使用人の服を着せるなど無礼にも程がある。
「抗議なさらないんですの?」
「僕以外のクラスのみんなは意外とやる気なんだよ……主に女子が」
オーウェン達は攻略対象だけあって黙ってさえいれば全員イケメンである。そんな美男子達の執事姿を目の前で見たクラスの女子が陥落したのだ。
クラスの男子は女子集団に逆らう勇気が無く消極的賛成に回り、エーリックも仕方なしに同意したのである。
「女子達の目つきが恐いんだよ。とても反対意見なんて言える状況じゃなくてね」
「それは何とも……ご愁傷様でございます」
同性のウェルシェも女子が集団になった時の恐さは理解できる。
「ウェルシェのクラスは何をするんだい?」
「うちはトレヴィル殿下が個人的に例の出し物をするとかで、クラスの男子も何人か抜けてしまって……」
残った人数が少なく模擬店を出すのは断念した。その為、手の空いた者は所属するクラブの出店に注力するらしい。どこにも所属していないウェルシェは手持ち無沙汰となってしまったのだ。
「学園祭は一人寂しくみなさんの模擬店を周らせていただきますわ」
「ダメだよそんなの!」
ガタッとエーリックがイスを蹴って立ち上がった。
ルインズの事件にも慣れ、マルトニア学園は落ち着きを取り戻していた。学生食堂の一画には金髪の美少年と銀髪の美少女の姿も見える。二人はお茶を楽しみながら談笑していた。
「エーリック様のクラスの模擬店は喫茶店なのでございますか?」
「提案者のカオロ嬢が張り切ってるんだ」
「まあ」
どうやら二人は来月の文化祭を話題としているようだ。
「しかも、執事喫茶だって」
「執事?……」
エーリックの説明によると、見目麗しき男子生徒に執事の格好をさせて給仕させる喫茶店なのだとか。
「『これが戦闘服よ!』とか言ってお手製の執事服を男子に渡しているんだ」
「どうして執事の服装なんですの?」
喫茶店はまあ学園祭の定番だから分からなくもない。だが、そこに執事の格好をさせる意味がウェルシェには全く理解できない。
「さあ? 僕にも分からないよ」
小首を傾げるウェルシェにエーリックも肩をすくめた。二人にとって転生者のアイリスの考える事は意味不明のようである。
「しかも兄上達まで巻き込んでいるんだ」
「ええ!?」
これにはウェルシェも驚きだ。他の、それも上級生を自分のクラスの催しに引き込むなど前代未聞。しかも、王族や高位貴族ばかりときている。
それに……
「オーウェン殿下に残された猶予はもうあまりございませんが?」
「そうなんだよねぇ」
オルメリアの出した宿題の期限は半年程しかない。学園祭で油を売っている時間はないのだ。オーウェンは本当に大丈夫なのだろうか?
(アイリス様だってそんな事は承知のはず……承知しているわよね?)
破天荒なアイリスの言動を思い出してウェルシェはだんだん不安になってきた。
「それでも兄上達は嬉々としてロオカ嬢の作った衣装に袖を通していたよ」
その話にウェルシェはギョッとした。アイリスは王族や高位貴族に執事服を着せたと言うのか!?
「まさかエーリック様もお召しになられるんですの?」
「そのまさかさ」
自分の婚約者に何をさせるのかとウェルシェは少し顔を険しくした。だいたい王族に使用人の服を着せるなど無礼にも程がある。
「抗議なさらないんですの?」
「僕以外のクラスのみんなは意外とやる気なんだよ……主に女子が」
オーウェン達は攻略対象だけあって黙ってさえいれば全員イケメンである。そんな美男子達の執事姿を目の前で見たクラスの女子が陥落したのだ。
クラスの男子は女子集団に逆らう勇気が無く消極的賛成に回り、エーリックも仕方なしに同意したのである。
「女子達の目つきが恐いんだよ。とても反対意見なんて言える状況じゃなくてね」
「それは何とも……ご愁傷様でございます」
同性のウェルシェも女子が集団になった時の恐さは理解できる。
「ウェルシェのクラスは何をするんだい?」
「うちはトレヴィル殿下が個人的に例の出し物をするとかで、クラスの男子も何人か抜けてしまって……」
残った人数が少なく模擬店を出すのは断念した。その為、手の空いた者は所属するクラブの出店に注力するらしい。どこにも所属していないウェルシェは手持ち無沙汰となってしまったのだ。
「学園祭は一人寂しくみなさんの模擬店を周らせていただきますわ」
「ダメだよそんなの!」
ガタッとエーリックがイスを蹴って立ち上がった。
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