スタートライン(あなたにもう一度会いたくて)

寿太郎

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第5話

光と影 栄光と挫折

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 2051年7月 
 大樹らは3年生になり部活動も最後の夏の大会に向けて気合いが入っていた。県大会までは終了し2人とも優勝という成績を収めていた。涼子は走り幅跳びを5m60cmで全中の出場を決めており、大樹は100m11秒20であり全中の大会参加標準記録を収めていたが追い風であったため参考記録となり次の九州大会でそのタイムを切ることが出場条件であるという現状であった。大樹はその現状から多少焦りがあり思うようなタイムを出せずに九州大会がやって来た。

 本番当日、涼子をスカウトしてきた東北の高校と同じ学校に進学をしていた宮永先輩が応援に駆けつけてくれていて事前に情報を伝えてくれた。

「100m走にすごいやついるらしいぞ。そいつと一緒に走ることになりそうだからペースを崩すなよ」

宮永先輩がアドバンスをくれた。しかし、大樹は余計にプレッシャーを感じウォーミングアップの時点で身体が思うように動かなかった。
 出走するためにレーンに入る。大樹は4レーンに入った。隣の3レーンにいるのが名前はのちに知ることになるが多田インパクト。身長が高く上半身の筋肉のつき方が良くハーフである。宮永先輩から名前とレーンは聞いていなかったがすぐにこの人のことを言っているということが分かった。多田もロケットスタートだった。

「ヨーイ、ドン」

スタートと同時に前に出たのは3レーンの多田だった。大樹のスタートが失敗したわけではなかったが今までスタートから自分の前に人がいる感覚がなかったため最初からペースを乱され結果としてゴールに着いた時のタイムは11秒85で全中どころか県大会の記録からも落ちてしまい大樹の夏はここで終わった。
 一方、涼子は走り幅跳びで5m85cmという記録を出し全国2位という成績で夏の大会が終わった。

 
 部活動を引退すると涼子にはスカウトが来ていた東北の高校への推薦での入学の話が進む一方、大樹には推薦が来ないため勉強をして入学をする決意を固めた。授業を必死に受け、塾にも通った。親には高校に入って陸上とメインで勉強をするから東北の高校に行かせて欲しいと言い説得をした。


 2052.1.1
 年明けこの日は涼子と初詣を行くことになっていた。福岡にも雪が降り気温は1℃。それでも2人で大樹の受験合格祈願を行うため太宰府天満宮に訪れた。

「なんでここなの?」

大樹は尋ねる。

「知らないの?太宰府天満宮は学業の神様なんだよ?ここで祈願して一緒に高校に行って陸上もやりたいの!」

涼子が言った。この頃、涼子は東北宮城県への高校の進学が決まっていた。後は大樹が結果を出すだけであった。帰りには博多駅の屋上へ行き、2人で一緒に

「何かいい事ありますように」

とお願いをした。


 2052.2  
 大樹の受験が明日のため前日である今日から宮城へ行くことになっていた。飛行機で行くため朝早くから涼子が福岡空港に見送りに来てくれていた。

「明日の試験頑張ってね。また緊張しすぎて九州大会の時みたいにミスしないでよね」

そう言いながら涼子が手作りのお守りを渡してくれた。

「そういえば明後日は福岡空港には何時に着陸するんだっけ?」

「14時だよ」

大樹は答える。

「分かった。1時間前までにはここで待っておくからね。それじゃ行ってらっしゃい」

大きく両手を振りながら優しい笑顔で送り出してくれた。


 試験が終わり合格した自信があったので涼子に来年も一緒に陸上をやろうねと言う準備をして福岡空港に到着すると涼子の姿はなかった。携帯を開いてみたがもちろん涼子は携帯を持っていないので通知はない。涼子は時間は必ず守る性格で携帯を持っていないこともあってか集合時間の30分~1時間前には集合場所にいつも居たのだがたまには遅れることもあるだろうと思った。結局3時間程度待っても来なかったので1人で帰ることにした。

 家に帰ると1つのニュースがテレビで流れていた。

『今日13時頃。福岡空港前の交差点の路上で歩行者とトラックの接触事故があり、交差点を走っていた中学生の川上涼子さん、15歳が倒れていて意識不明の重体。搬送先の病院で本日死亡が確認されました。』

「……………………………………。」


 大樹はテレビの前から動くことができなかった。




PS ちょっと息抜き 
 第1章 作者寿太郎のリアルな話
 第5話 漫画家募集中
 私は今現在小説を書いていますが本当は漫画で書きたいという気持ちがあります。ですが画力が皆無で漫画という選択肢はありません。もし、私の作品を読んでみて面白いとか一緒にやってみたいと思った方、漫画を描いてくれる方がいらっしゃればお願いしたいと思っています(笑)お待ちしています。
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