【完結】糸と会う〜異世界転移したら獣人に溺愛された俺のお話

匠野ワカ

文字の大きさ
19 / 187

19.お風呂!

しおりを挟む


 タイル張りの浴室に、高い位置で固定されたシャワーヘッド。
 猫足の浅いバスタブが、外国情緒あふれるバスルームだ。

 壁の棚に置かれた備え付けの固形石けんは、頭から体まで全身に使えるのだそうだ。

 おそるおそる濡らした髪に石けんを使ってみれば、思っていたよりよく泡立った。

 そのまま体も洗っていく。
 これは便利だ。


 シャワーで泡を洗い流して、ふかふかのタオルで体を拭きながらなんとなく棚に置いてある小瓶を手に取った。


 肌の保湿や髪のトリートメントが必要なら、オイルを使うようにとルルルフさんがいっていた。
 これだろうか。

 ものは試しに、瓶に入ったオイルを少量手のひらに取りだしてみる。

 透明でさらっとしていて、香りも強くない。


 地球では何も塗っていなかったけど、せっかくだしな。
 俺は取りだしたオイルを髪先に薄く伸ばした。

 それでも手のひらにあまったオイルは顔に塗っておいた。


 さっきまで塩でぱりぱりだった肌もオイルで落ちついて、ぬるつくこともない。
 さらりとした使い心地がとてもいい。

 こだわりのある渡来人は、シャンプーやトリートメント、化粧水、乳液などを自作して、販売している人もいるのだそうだ。

 俺にはこれで充分だけど。




 きれいさっぱり生き返った俺は、木製の丸いスツールに畳んで置いてあった生成り色の服を広げた。


 シンプルでユニセックスな感じだが、オーニョさんが着ていた服と形は似ている。

 この世界のルームウェアかな。心遣いに感謝しながら、ありがたく使わせてもらうことにした。

 風呂上がりにあの塩だらけの服をもう一度着るのは、心の底から遠慮したい。



 服の下から出てきた下着らしき布は、紐でしばるトランクスのような形をしていた。

 危惧していたより簡単に着られそうだ。
 俺はほっと胸をなで下ろす。


 パンツの穿きかたを教えてもらうのは、なかなか勇気が必要だと思う。

 本当によかった。

 ふんどしタイプの異世界じゃなくて。




 服は、ひざ下丈くらいのエジプトのガラベーヤに似たストレートの長袖ワンピース。
 その下にはゆったりとした幅広のズボンをあわせて着るようだった。

 洗いざらしの布の風合いは柔らかく、気候にあった風通りのいい服だ。

 残念ながら俺には少し大きかったので、裾は折り返しておく。


 スツールに残ったのは一枚の布だ。

 大きさから頭に巻く布かなと目星をつける。




 街の人やオーニョさんも巻いていた布はピーリャというらしく、頭を守るとても大切な布だとルルルフさんがいっていた。

 鏡を見ながらいろいろ試してはみたが、巻き方が分からない。

 布を巻くのは諦めよう。




 こうやってなんだかんだしているうちに気持ちも落ち着いて、俺はそのまま浴室を出た。





しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる

おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。 知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

異世界に転移したら運命の人の膝の上でした!

鳴海
BL
ある日、異世界に転移した天音(あまね)は、そこでハインツという名のカイネルシア帝国の皇帝に出会った。 この世界では異世界転移者は”界渡り人”と呼ばれる神からの預かり子で、界渡り人の幸せがこの国の繁栄に大きく関与すると言われている。 界渡り人に幸せになってもらいたいハインツのおかげで離宮に住むことになった天音は、日本にいた頃の何倍も贅沢な暮らしをさせてもらえることになった。 そんな天音がやっと異世界での生活に慣れた頃、なぜか危険な目に遭い始めて……。

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

異世界転移しました。元天才魔術師との優雅なお茶会が仕事です。

渡辺 佐倉
BL
榊 俊哉はつまらないサラリーマンだった。 それがある日異世界に召喚されてしまった。 勇者を召喚するためのものだったらしいが榊はハズレだったらしい。 元の世界には帰れないと言われた榊が与えられた仕事が、事故で使い物にならなくなった元天才魔法使いの家庭教師という仕事だった。 家庭教師と言っても教えられることはなさそうだけれど、どうやら元天才に異世界の話をしてイマジネーションを復活させてほしいという事らしい。 知らない世界で、独りぼっち。他に仕事もなさそうな榊はその仕事をうけることにした。 (元)天才魔術師×転生者のお話です。 小説家になろうにも掲載しています

処理中です...