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19.お風呂!
しおりを挟むタイル張りの浴室に、高い位置で固定されたシャワーヘッド。
猫足の浅いバスタブが、外国情緒あふれるバスルームだ。
壁の棚に置かれた備え付けの固形石けんは、頭から体まで全身に使えるのだそうだ。
おそるおそる濡らした髪に石けんを使ってみれば、思っていたよりよく泡立った。
そのまま体も洗っていく。
これは便利だ。
シャワーで泡を洗い流して、ふかふかのタオルで体を拭きながらなんとなく棚に置いてある小瓶を手に取った。
肌の保湿や髪のトリートメントが必要なら、オイルを使うようにとルルルフさんがいっていた。
これだろうか。
ものは試しに、瓶に入ったオイルを少量手のひらに取りだしてみる。
透明でさらっとしていて、香りも強くない。
地球では何も塗っていなかったけど、せっかくだしな。
俺は取りだしたオイルを髪先に薄く伸ばした。
それでも手のひらにあまったオイルは顔に塗っておいた。
さっきまで塩でぱりぱりだった肌もオイルで落ちついて、ぬるつくこともない。
さらりとした使い心地がとてもいい。
こだわりのある渡来人は、シャンプーやトリートメント、化粧水、乳液などを自作して、販売している人もいるのだそうだ。
俺にはこれで充分だけど。
きれいさっぱり生き返った俺は、木製の丸いスツールに畳んで置いてあった生成り色の服を広げた。
シンプルでユニセックスな感じだが、オーニョさんが着ていた服と形は似ている。
この世界のルームウェアかな。心遣いに感謝しながら、ありがたく使わせてもらうことにした。
風呂上がりにあの塩だらけの服をもう一度着るのは、心の底から遠慮したい。
服の下から出てきた下着らしき布は、紐でしばるトランクスのような形をしていた。
危惧していたより簡単に着られそうだ。
俺はほっと胸をなで下ろす。
パンツの穿きかたを教えてもらうのは、なかなか勇気が必要だと思う。
本当によかった。
ふんどしタイプの異世界じゃなくて。
服は、ひざ下丈くらいのエジプトのガラベーヤに似たストレートの長袖ワンピース。
その下にはゆったりとした幅広のズボンをあわせて着るようだった。
洗いざらしの布の風合いは柔らかく、気候にあった風通りのいい服だ。
残念ながら俺には少し大きかったので、裾は折り返しておく。
スツールに残ったのは一枚の布だ。
大きさから頭に巻く布かなと目星をつける。
街の人やオーニョさんも巻いていた布はピーリャというらしく、頭を守るとても大切な布だとルルルフさんがいっていた。
鏡を見ながらいろいろ試してはみたが、巻き方が分からない。
布を巻くのは諦めよう。
こうやってなんだかんだしているうちに気持ちも落ち着いて、俺はそのまま浴室を出た。
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