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150.結婚式の準備
しおりを挟むこの日を皮切りに、俺とオーニョさんは招待状を配り歩いた。
ライラ母さん、パォ一族のみんな、絵を描くときにお世話になった人にも、忘れずに招待状を配る。
オーニョさんは、俺を自慢したいから職場の人にも配るのだと張りきっていた。
少し恥ずかしいけど、俺もオーニョさんを夫だよってみんなに紹介したいから同じだねと返せば、オーニョさんの尻尾はブンブンと揺れるのだった。
かわいい。
オーニョさんの所属する軍に、どんな同僚の人がいるのかひそかに楽しみだ。
きっとまだまだ会ったことのない種族の人もいるのだろう。
それなら式も、種族に応じたおもてなしが必要だ。
種族に合わせた料理については、ンバンヴェさんが一手に引きうけてくれた。
俺とオーニョさんの思い描いた結婚式が、パォ一族の心強い協力のもと、着実に実現しつつあった。
式の前日には平らな山頂に色とりどりのテントを張って、日陰を作った。
例えばオーニョさんのお父さんのように、強い日差しが苦手な種族には必要不可欠だ。
山頂の平地に広がる不思議な緑の絨毯のあちらこちらに、自由に座って休める場所を作っていく。
山頂での盛大な結婚式を執りおこなうにあたって、前もってルルルフさんがここの住民に使用許可をとってくれていた。
それでも迷惑なのではと心配していたのだが、芝生で暮らす妖精族は大歓迎で、率先して、むしろ奪いあいながらお手伝いをしてくれたのだ。
蛍のように点滅しながらただよう妖精をはっきりと見ることはやっぱりできなかったけど、あっちこっちで布を引っ張りあいながら、色とりどりのテントを張っていってくれた。
近くで作業する俺の耳にも、妖精たちの楽しそうな笑い声が聞こえて、その微笑ましさに癒やされた。
妖精さんに感謝の気持ちを言葉にして伝えれば、みるみるうちに明滅する光に囲まれた。
まるでおとぎ話みたいな幻想的な光景だった。
たくさんの妖精がいっせいに口を開くものだから何をいっているのかは分からなかったが、祝福の気持ちは伝わってくる。
俺は嬉しくて、光に囲まれながら何度もお礼をいった。
式当日はいっぱい楽しんでもらいたい。
妖精族の食事も忘れずに用意してほしいと、ンバンヴェさんにお願いしよう。
俺は忘れないように、魔法の本にメモをとった。
ンバンヴェさんは、この日のために腕によりをかけた料理を準備してくれている。
式の当日はテントの下に敷布を広げ、飲み物や料理を並べていく予定だった。
そうして迎えた式の前夜、婚姻の儀式の服が完成したと、エリナスィーナ洋服店の店主から連絡があった。
結婚式の招待状を渡しにいったときに、無理を承知でオーニョさんが依頼していた服だった。
俺は出来合いの服で構わないといったのだが、オーニョさんが店主に頼みこんでいたのだ。
そのせいで店主にかなり無理をさせたのではないかと、俺は気が気ではない。
エリナスィーナ洋服店でさっそく服を試着しながら、俺はハリネズミの店主に何度もお礼をいう。
間仕切りの向こうでは、オーニョさんが店主の奥さんに衣装を合わせてもらっていた。
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