大切なお義兄ちゃんのために皇帝になりましたが実弟と戦ったり臣下に惚れられたり色々と大変です。

米田薫

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第1編皇帝陛下の日常

第9章李憲と李弘

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話し合いが終了した後、李弘は宋璟に話しかけた。
李弘は言った。
「一つだけ聞いてもよろしいですか?」

宋璟にとって李弘は敵ではあるものの上司である。
無視する事は出来ず言った。
「はい。なんでしょうか?」

李弘は言った。
「どんな気持ちなのですか?自分のせいで自分の上官が鞭に打たれるというのは?」

宋璟は表情を変えずに答えた。
「反省しております。」

すると李弘は笑みを浮かべて言った。
「反省ですか。それはそうですよね。勝手に独善的な決断をして、皆に迷惑をかけたんですから。この際、自害なさったらどうですか?生き恥をさらすこともないでしょう。」

宋璟は李弘の言葉に腹が立った。
もっともその言葉に間違いは無いと感じられ、言い返す事が出来なかった。

すると、二人の間に李憲が入ってきた。
李憲は言った。
「李弘殿。私の可愛い部下を虐めないでくださいよ」

それを聞いて李弘は言った。
「虐めるなんてとんでもない。ただ失敗した時の身の振り方というのを指南していただけです」

それに対して李憲は言った。
「失敗した時に大切なのはしっかり反省し、次は繰り返さない事です。頼んでもいないのに、勝手に自分を罰するのは、かえって無責任です。」

李弘と話す李憲の姿はまるで宋璟を守っているようだった。
それは李弘に対してというよりも、宋璟に対して言っているようだった。
宋璟はその言葉を聞き、静かに頷いた。

すると李弘が李憲に対し言った。
「それで自分は鞭打ちになっては意味がないでしょう。弱いくせに他人を救おうとするとは、とんだお人よしですね。」

李憲は言った。
「昔からずっとですよ。でも少しだけ変わった事も有ります。以前は、孤独で苦しんでいる彼女を優しく慰める事しか出来ませんでしたが、今は共に戦えるようになりました。」

李弘はそれを聞いて、少し切ない表情を浮かべた。
「僕はあなたが嫌いだ。ですが時々想像する事が有ります。もし、あなたが姉上ではなく、僕の側に居たのなら、立場が逆だったのかもしれないとね」

李憲は笑みを浮かべて言った。
「あなたはどんなに対立していてもあの方の弟だ。もし仲良くして下さるならこちらとしては大歓迎ですよ。」

それは李憲の本心からでた言葉だった。
李憲とはそういう男なのである。

李弘は言った。
「言ったでしょう。想像すると。現実ではありません。気をつけてください。俺はあなたを失った姉上に興味があるので」

李憲は言った。
「それは気をつけないといけませんね。あの方のために死ぬ覚悟など、とうの昔に出来ていますが、あの方の悲しむ顔は見たくない。」

それはこれから鞭打ちを受ける李憲の決意表明だった。
そして李憲は李弘に対し、自らの決意を示すように悠然と歩いて行ったのだった。
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