116 / 234
水の惑星『カメーネ』
10
しおりを挟む
「何!? ペトアが負けただと!?」
配下からの報告を受けたコルテカの国王、ラオスは部下からの報告を聞いて声を荒げた。
「ハッ、報告によりますと、討伐軍は撤退……ジャック・フネ殿は戦死! ペトア殿下は行方不明とのことッ!」
「おのれッ!」
配下の男の言葉から敗北を実感させられたラオスは拳を強く握り締めながら玉座の肘掛けを勢いよく叩き付けた。
「陛下、これは由々しき事態にございます。今こそハイドラ隊を向かわせないませ」
と、声を上げたのは側に控えていたコリンヌであった。
その言葉を聞いたラオスは難しそうな顔を浮かべながら振り返っていった。
「コリンヌか、だが、ハイドラ隊とはいうもののあれはまだ編成して少ししか経たぬものぞ」
「いえ、そうは仰せられても、既に彼らは立派な陛下を守る楯であり矛であらせられます! 今こそ王位を守る盾として、そして逆賊どもを始末する矛として活用するべきですぞ!」
『ハイドラ隊』とはコリンヌの助言によって編成された国王の親衛隊の名前である。装備としてはヴィシー財閥が開発した『ロベール』のパワードスーツを纏ったコルテカ王国の貴族たちの子弟からなる二世部隊の名であった。
名誉からいっても実力からいっても申し分のない実力を秘めた勇敢な部隊であった。名前もコルテカ王国の守護神である『ハイドラ』という複数の蛇の頭を持つ怪物の名前から取っているので間違いない。
ただ、唯一の欠点を挙げるとするのならばパワードスーツを着用した際の見た目のみであろう。大量生産の品として作られたこともあり、全員のパワードスーツの見た目に華美がないのだ。
そのため白い骨を用いた兜に装甲、貴族の子弟たちによるウケというものは最悪と言っても過言ではなかった。
現在はそうした不満の声をラオスが無理やり押さえ付けている状態となっている。
こうした姿勢には貴族たちからの反感も存在したが、それでも名誉な役職にあることは変わりない。ラオスにとってはもっとも頼りになる存在だ。
「では、今よりハイドラ部隊を討伐隊として派遣させよう。ただしその指揮を取るのはコリンヌ、お主が取れ」
「わ、私がですか!?」
予想外の命令を受けてコリンヌの声は明らかに動揺していた。
だが、ラオスは容赦なく命令を続けた。
「左様、お主の虎の力とやらで我が王位を狙う不貞の輩を滅するのじゃ!」
「ハ、ハハッー」
国王の命令とあっては逆らうわけにもいかない。コリンヌは深々と頭を下げた。
現在ハイドラ隊の指揮官はヴィシー財閥より教官として派遣されたリディ・ステングリッドという女性が務めている。
彼女は軍隊にも所属していたことがある言うなればプロの軍人だ。それに対してコリンヌは単なる部門の一部長に過ぎない。いくらパワードスーツを所持しているといっても戦闘経験はないに等しいものだ。
不満そうな顔を浮かべてブツブツと呟いているのは国王に対しての不満であることには違いない。
いっそこのまま投げ出してしまえば全てが楽になるのではないだろうか。
肩を落として部屋で準備をしていた時だ。
「あら、ミュルトン部長……どうなさいましたの?」
と、入り口から声が聞こえてきた。声のした方向を向くと、そこにはリディ・ステングリッド本人の姿が見えた。
軍人らしく髪こそゴムで縛ってはいるものの、リディは非常に愛らしく可愛い見た目をしていた。
「あのクソジジイに無茶を言われてね。私がどうやらキミの代わりに二世部隊を率いることになったそうだ」
「そんな! ミュルトン部長が責任を負われることなんてありませんのに!」
話を聞いたリディはプンスカと怒ってみせた。怒る仕草も女児向けのアニメのキャラクターを思わせるようで非常に可愛らしいものであった。
その仕草にコリンヌも思わず絆されてしまったのか、顔に微笑を浮かべている。
「しかし王様の命令だ。逆らうわけにはいくまい。もし、何かあればキミが私の代わりにこの星で得たものをフランスに運んでくれ」
そう言ってコリンヌは懐から宇宙船の鍵をリディへと手渡した。
「そ、そんな受け取れませんわ!! 部長には奥様とお子様がいらっしゃるはずでしょう!? もし、あなたの身に何かあればお二方はどうなるんですの!?」
「心配はない。会社が面倒を見てくれるはずだ」
そうは言ったもののコリンヌの声はどこか弱々しかった。
遺族に対してヴィシー財閥が手厚い保証をしてくれる保証などどこにもなかったからだ。現在の欧州は完全な競争型の社会ということもあり、競争から外れたものに対しては容赦がない世界となっている。
いわば人に対する余裕がない社会であるともいえた。かつてベンジャミン・フランクリンが「時は金なり。それが分からぬ者は死ね」とまで言っていたように資本主義社会で泣き言を言うだけの存在は社会から無視されるようになっていた。
リディもそのことを理解していたのか、両方を落とすコリンヌになんの声も掛けることができなかった。
気まずそうな顔を浮かべるリディに対してコリンヌは明るい声で言った。
「大丈夫だ! 侵入者さえ倒せばいいんだから!そうすれば無事に商品を持ってヴィシーに帰ることができる。それで帰ってからは温泉にでも子どもたちを連れて行くよ」
「素敵ですわ。叶うといいですね」
リディは弱々しく微笑みながらコリンヌを送り出した。
血気盛んな貴族の子弟たちと共に城門を出ていったコリンヌの姿はまるで、どこか遠い国に行くかのような錯覚をリディに与えた。
心の内でリディは察した。コリンヌはこの後は戻ってこない、ということを。
根拠はないが、第六感というものが熱心に囁いていた。
だが、自分が身代わりになる必要もないのでリディは見送ることしかしなかった。
「さて、私は部屋に戻って会長にこのことを報告しないとね」
リディはそのまま城門に背を向けて自身の部屋へと戻っていった。もう既にリディの頭からはコリンヌの家族についてのことは抜け落ちていた。
コリンヌはそんなリディの心境も知らずに意気揚々と討伐軍を率いていった。もちろん馬に乗ることはできない。そのため兵士たちが担ぐ腰に乗って先端にいた。
更にその横には副官が馬で進んでいた。左目に黒い眼帯を当てた老将である。
コリンヌからは老人とはいったものの頑強な肉体は地球にいる若者よりも立派に見えた。話によれば頭も切れるそうだ。
コリンヌが軍事に関しての素人であることや実績などを踏まえると、彼こそがハイドラ隊の真の隊長であるともいえた。
有力貴族の子弟たちで構成された親衛隊の実質的なリーダーということだけもあり、彼の優秀さは群を抜いていた。
彼は目撃地付近の住民のみならず、外れに住んでいる猟師や森番にまで地道な聞き込みを続けていったのだ。
そして最後の目撃証言から修也たちが王都近隣の森に潜んでいることを割り当てたのである。
ハイドラ隊は副官の指示に従い、近隣の森を包囲した。いや、そればかりではない。修也たちを炙り出すために火を放とうとした。
流石にこれはコリンヌが静止したが、それでも炙り出すためだと称し、森の周りに焚き火を行ったのだ。
煙を森の中に注いでいくと、副官の読み通りに修也たちが姿を現した。
ゴホゴホと咳き込む修也たちに対してハイドラ隊の兵士たちの全員が槍を構えていく。
「終わりだ。賊どもめ」
副官は自らが腰に下げていた剣を突き付けながら流暢なクレタリア王国語で言った。
クレタリア王国語は島内においては教養の高さを示すためのステータスとされており、コルテカ王国でも教養のある人物は喋ることができた。
「賊? 賊はあなた方の方でしょう!?人民を不要な戦に駆り立て、天より与えられた兵器で虐殺を行うなど、恥を知りなさいッ!」
シーレは剣を突き付けられた状態であるにも関わらず、王女に相応しい毅然とした態度で副官に向かって叫んだ。
「フッ、我々は正当な王位に就いていた人物を弑奉り、正当な王位継承権を持つ王子を追い立てた悪党を玉座から引き摺り下ろそうとしているだけのことよ!」
「違う! 父は自身の兄が人民を苦しめ、不要な戦を引き起こそうとしていたから『王殺し』の汚名を負ってでも自身がその道を正すために王位に就いたのよ!」
「フン、簒奪者の娘の詭弁だ。ここで片付けさせてもらうぞ」
副官の男が剣を構えてシーレの元へと突っ込んでいった。シーレも弓矢を使って迎え撃とうとしたが、副官の男がシーレの元へと突っ込んでくる方が早かった。
目の前に剣が迫ってきた。シーレが己のを死を覚悟して両目を瞑った時のことだ。
ボゴンと何かが吹っ飛ぶような音が聞こえた。恐る恐る両目を開くと、そこには『ゼノン』の装甲を纏い、剣を構えて突っ込んできた副官の男を吹き飛ばした悠介の姿が見えた。
「大丈夫か!? シーラ!?」
悠介はシーレの安否を心配し、その両肩を強く揺さぶっていった。
シーレは悠介の言葉が分からなかったが、動揺して肩を揺さぶっている姿から察するに彼が心配してくれていることだけは分かったので小さく首を縦に動かした。
悠介はシーレが無事であることを確認した後に副官の男に向かって人差し指を震わせながら叫んでいった。
「テメェ! シーレに何をするつもりだったんだ!?」
無論、悠介が使ったのは日本語である。異星の人間である副官の男が理解できるはずがなかった。
だが、至近の空気が振動したことから彼が怒っていることだけは伝わった。
それならば彼の怒りに応えなくてはなるまい。こちらも全力で叩き潰してやるのみだ。
副官の男は編成時にリディから与えられたカプセルを取り出し、『ロベール』の一種である『ハーピー』という装甲を纏っていた。
配下からの報告を受けたコルテカの国王、ラオスは部下からの報告を聞いて声を荒げた。
「ハッ、報告によりますと、討伐軍は撤退……ジャック・フネ殿は戦死! ペトア殿下は行方不明とのことッ!」
「おのれッ!」
配下の男の言葉から敗北を実感させられたラオスは拳を強く握り締めながら玉座の肘掛けを勢いよく叩き付けた。
「陛下、これは由々しき事態にございます。今こそハイドラ隊を向かわせないませ」
と、声を上げたのは側に控えていたコリンヌであった。
その言葉を聞いたラオスは難しそうな顔を浮かべながら振り返っていった。
「コリンヌか、だが、ハイドラ隊とはいうもののあれはまだ編成して少ししか経たぬものぞ」
「いえ、そうは仰せられても、既に彼らは立派な陛下を守る楯であり矛であらせられます! 今こそ王位を守る盾として、そして逆賊どもを始末する矛として活用するべきですぞ!」
『ハイドラ隊』とはコリンヌの助言によって編成された国王の親衛隊の名前である。装備としてはヴィシー財閥が開発した『ロベール』のパワードスーツを纏ったコルテカ王国の貴族たちの子弟からなる二世部隊の名であった。
名誉からいっても実力からいっても申し分のない実力を秘めた勇敢な部隊であった。名前もコルテカ王国の守護神である『ハイドラ』という複数の蛇の頭を持つ怪物の名前から取っているので間違いない。
ただ、唯一の欠点を挙げるとするのならばパワードスーツを着用した際の見た目のみであろう。大量生産の品として作られたこともあり、全員のパワードスーツの見た目に華美がないのだ。
そのため白い骨を用いた兜に装甲、貴族の子弟たちによるウケというものは最悪と言っても過言ではなかった。
現在はそうした不満の声をラオスが無理やり押さえ付けている状態となっている。
こうした姿勢には貴族たちからの反感も存在したが、それでも名誉な役職にあることは変わりない。ラオスにとってはもっとも頼りになる存在だ。
「では、今よりハイドラ部隊を討伐隊として派遣させよう。ただしその指揮を取るのはコリンヌ、お主が取れ」
「わ、私がですか!?」
予想外の命令を受けてコリンヌの声は明らかに動揺していた。
だが、ラオスは容赦なく命令を続けた。
「左様、お主の虎の力とやらで我が王位を狙う不貞の輩を滅するのじゃ!」
「ハ、ハハッー」
国王の命令とあっては逆らうわけにもいかない。コリンヌは深々と頭を下げた。
現在ハイドラ隊の指揮官はヴィシー財閥より教官として派遣されたリディ・ステングリッドという女性が務めている。
彼女は軍隊にも所属していたことがある言うなればプロの軍人だ。それに対してコリンヌは単なる部門の一部長に過ぎない。いくらパワードスーツを所持しているといっても戦闘経験はないに等しいものだ。
不満そうな顔を浮かべてブツブツと呟いているのは国王に対しての不満であることには違いない。
いっそこのまま投げ出してしまえば全てが楽になるのではないだろうか。
肩を落として部屋で準備をしていた時だ。
「あら、ミュルトン部長……どうなさいましたの?」
と、入り口から声が聞こえてきた。声のした方向を向くと、そこにはリディ・ステングリッド本人の姿が見えた。
軍人らしく髪こそゴムで縛ってはいるものの、リディは非常に愛らしく可愛い見た目をしていた。
「あのクソジジイに無茶を言われてね。私がどうやらキミの代わりに二世部隊を率いることになったそうだ」
「そんな! ミュルトン部長が責任を負われることなんてありませんのに!」
話を聞いたリディはプンスカと怒ってみせた。怒る仕草も女児向けのアニメのキャラクターを思わせるようで非常に可愛らしいものであった。
その仕草にコリンヌも思わず絆されてしまったのか、顔に微笑を浮かべている。
「しかし王様の命令だ。逆らうわけにはいくまい。もし、何かあればキミが私の代わりにこの星で得たものをフランスに運んでくれ」
そう言ってコリンヌは懐から宇宙船の鍵をリディへと手渡した。
「そ、そんな受け取れませんわ!! 部長には奥様とお子様がいらっしゃるはずでしょう!? もし、あなたの身に何かあればお二方はどうなるんですの!?」
「心配はない。会社が面倒を見てくれるはずだ」
そうは言ったもののコリンヌの声はどこか弱々しかった。
遺族に対してヴィシー財閥が手厚い保証をしてくれる保証などどこにもなかったからだ。現在の欧州は完全な競争型の社会ということもあり、競争から外れたものに対しては容赦がない世界となっている。
いわば人に対する余裕がない社会であるともいえた。かつてベンジャミン・フランクリンが「時は金なり。それが分からぬ者は死ね」とまで言っていたように資本主義社会で泣き言を言うだけの存在は社会から無視されるようになっていた。
リディもそのことを理解していたのか、両方を落とすコリンヌになんの声も掛けることができなかった。
気まずそうな顔を浮かべるリディに対してコリンヌは明るい声で言った。
「大丈夫だ! 侵入者さえ倒せばいいんだから!そうすれば無事に商品を持ってヴィシーに帰ることができる。それで帰ってからは温泉にでも子どもたちを連れて行くよ」
「素敵ですわ。叶うといいですね」
リディは弱々しく微笑みながらコリンヌを送り出した。
血気盛んな貴族の子弟たちと共に城門を出ていったコリンヌの姿はまるで、どこか遠い国に行くかのような錯覚をリディに与えた。
心の内でリディは察した。コリンヌはこの後は戻ってこない、ということを。
根拠はないが、第六感というものが熱心に囁いていた。
だが、自分が身代わりになる必要もないのでリディは見送ることしかしなかった。
「さて、私は部屋に戻って会長にこのことを報告しないとね」
リディはそのまま城門に背を向けて自身の部屋へと戻っていった。もう既にリディの頭からはコリンヌの家族についてのことは抜け落ちていた。
コリンヌはそんなリディの心境も知らずに意気揚々と討伐軍を率いていった。もちろん馬に乗ることはできない。そのため兵士たちが担ぐ腰に乗って先端にいた。
更にその横には副官が馬で進んでいた。左目に黒い眼帯を当てた老将である。
コリンヌからは老人とはいったものの頑強な肉体は地球にいる若者よりも立派に見えた。話によれば頭も切れるそうだ。
コリンヌが軍事に関しての素人であることや実績などを踏まえると、彼こそがハイドラ隊の真の隊長であるともいえた。
有力貴族の子弟たちで構成された親衛隊の実質的なリーダーということだけもあり、彼の優秀さは群を抜いていた。
彼は目撃地付近の住民のみならず、外れに住んでいる猟師や森番にまで地道な聞き込みを続けていったのだ。
そして最後の目撃証言から修也たちが王都近隣の森に潜んでいることを割り当てたのである。
ハイドラ隊は副官の指示に従い、近隣の森を包囲した。いや、そればかりではない。修也たちを炙り出すために火を放とうとした。
流石にこれはコリンヌが静止したが、それでも炙り出すためだと称し、森の周りに焚き火を行ったのだ。
煙を森の中に注いでいくと、副官の読み通りに修也たちが姿を現した。
ゴホゴホと咳き込む修也たちに対してハイドラ隊の兵士たちの全員が槍を構えていく。
「終わりだ。賊どもめ」
副官は自らが腰に下げていた剣を突き付けながら流暢なクレタリア王国語で言った。
クレタリア王国語は島内においては教養の高さを示すためのステータスとされており、コルテカ王国でも教養のある人物は喋ることができた。
「賊? 賊はあなた方の方でしょう!?人民を不要な戦に駆り立て、天より与えられた兵器で虐殺を行うなど、恥を知りなさいッ!」
シーレは剣を突き付けられた状態であるにも関わらず、王女に相応しい毅然とした態度で副官に向かって叫んだ。
「フッ、我々は正当な王位に就いていた人物を弑奉り、正当な王位継承権を持つ王子を追い立てた悪党を玉座から引き摺り下ろそうとしているだけのことよ!」
「違う! 父は自身の兄が人民を苦しめ、不要な戦を引き起こそうとしていたから『王殺し』の汚名を負ってでも自身がその道を正すために王位に就いたのよ!」
「フン、簒奪者の娘の詭弁だ。ここで片付けさせてもらうぞ」
副官の男が剣を構えてシーレの元へと突っ込んでいった。シーレも弓矢を使って迎え撃とうとしたが、副官の男がシーレの元へと突っ込んでくる方が早かった。
目の前に剣が迫ってきた。シーレが己のを死を覚悟して両目を瞑った時のことだ。
ボゴンと何かが吹っ飛ぶような音が聞こえた。恐る恐る両目を開くと、そこには『ゼノン』の装甲を纏い、剣を構えて突っ込んできた副官の男を吹き飛ばした悠介の姿が見えた。
「大丈夫か!? シーラ!?」
悠介はシーレの安否を心配し、その両肩を強く揺さぶっていった。
シーレは悠介の言葉が分からなかったが、動揺して肩を揺さぶっている姿から察するに彼が心配してくれていることだけは分かったので小さく首を縦に動かした。
悠介はシーレが無事であることを確認した後に副官の男に向かって人差し指を震わせながら叫んでいった。
「テメェ! シーレに何をするつもりだったんだ!?」
無論、悠介が使ったのは日本語である。異星の人間である副官の男が理解できるはずがなかった。
だが、至近の空気が振動したことから彼が怒っていることだけは伝わった。
それならば彼の怒りに応えなくてはなるまい。こちらも全力で叩き潰してやるのみだ。
副官の男は編成時にリディから与えられたカプセルを取り出し、『ロベール』の一種である『ハーピー』という装甲を纏っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる