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漂流する惑星『サ・ザ・ランド』
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ゆっくりとタラップを昇って食事を求めに行く姿はさながら両親にドヤされたことで慌てて遊びを中断して公園から家に戻る子どものようであった。修也は入り口の前でパワードスーツを解除して中に入るとそこには料理の準備を終え、配膳を行なっている麗俐の姿が見えた。
「カレーか、私としては他の食事の方が良かったんだが」
修也は目の前に出されたレトルトのカレーを見つめながら愚痴をこぼした。
皿の代わりに使われる簡素なパックの中にはぐつぐつと鍋の中でじっくりと煮込まれた牛肉や野菜が入ったこげ茶色のカレーと炊き出された真っ白なご飯とが五分五分の割合で詰め込まれていた。
「贅沢言わないの。今の状況だと用意できるレトルトの中で一番手軽に用意できるんだからね。それ以外だと携帯食料くらいなんだよ」
麗俐はプラスチックのスプーンを片手に言った。
「ったく、こんな状況で飯の心配なんて……お姉ちゃんは大胆というか、豪胆というか」
悠介はレトルトのカレーのルーのみをプラスチックのスプーンで掬い上げながら言った。ご飯や丁寧に煮込まれた肉や野菜には手を付けることができなかった。喉が食事を拒否していたのだ。
「『腹が減っては戦はできぬ』と昔から言うでしょ? 私はそれに倣っただけだよ」
麗俐は得意げな笑みを浮かべながら言った。
「けど、飯のことはいいとして、今後のことはどうするんだよ? こんな惑星の中で死ぬなんておれはごめんだぜ」
「あたしだって嫌だよ。端末も通じない、ショッピングモールもないような星での垂れ死ぬなんて」
「しかし脱出できないのも事実です。先ほど、麗俐さんがレトルトの食事を作られている間に我々の方で通信機を試しましたが、どこにも通じません」
それまでは黙って腕を組んでじっと話を聞いていたジョウジが初めて口を挟む。
「それに通じたとしてもどの国のデータにも入っていないような未知の星なんですよ。救助船に位置を伝えることなど不可能です」
ジョウジと同様にカエデは悲痛な顔を浮かべながら答えた。
「けど、諦めたらそこで試合終了って言葉もありますよね?そうそう、悠介、あんたの好きなバスケの漫画でそう言ってなかった?」
「そうだけど、あれとは話が違うだろ? あくまでもバスケの試合は逆転の可能性があるからそう思えるだけで……こんなところまで追い詰められたら無理だよ」
悠介の顔は絶望に満ち溢れていた。その顔からはとっくの昔に希望というものが失われていると言わんばかりの顔であった。
修也には今見える悠介の顔が時代劇で無茶な年貢を取り立てられている百姓と重なってみえた。あの時は単にテレビで観るだけの存在であったが、今となってはその気持ちが痛いほどわかる。
自惚れと言われるのを覚悟で言わせてもらうと、修也はどうしようもない窮地へと落とされた人間の気持ちは地球にいるどの人間よりも分かっているつもりでいた。
それ程までに悠介は打ちのめされた顔を浮かべていたのだ。
現実で発生した理不尽とも思えるような時代の数々に有望なバスケットボールの選手とは思えないほど全てを諦め切っていた悠介であったが、それとは対照的に麗俐はどこか落ち着いた調子で弟を見つめていた。顔に焦る様子は見えない。
変に取り乱すこともなく落ち着いたまま食事を摂る姉の姿を見て悠介は不気味に思ったのか、パックの中にあったカレーを三分の一も食べずに、スプーンを置いて椅子の上を立ち去ったのである。
「どこ行くの?」
「部屋だよ! 部屋で遺言書を書くんだ!」
悠介は声を荒げながら言った。
「遺言書?」
麗俐は信じられないと言わんばかりの顔で悠介を眺めたが、悠介の顔は本気だった。悠介はフンと鼻を鳴らしたかと思うと、そのまま部屋へと戻っていった。
全てを諦め切り、目の前で繰り広げられる試合を放棄した悠介の前にはいかなる説得を口にしても無駄に終わるに違いなかった。
その様子を見て麗俐は大きく溜息を吐いた。
「仕方がない、この星から……いいや、宇宙から脱出するための方法は私たちの手で考えようじゃあないか」
修也が『この星』という単語を『宇宙』という壮大で果てのないものに変更したのは適切な表現に言葉を修正したというより彼自身も心の片隅では諦めの窮地へと達していたからだ。
わざわざ広い表現を使うことで無意識のうちに何も理解できていない麗俐に対して窘めるような意味も含めていたのである。
だが、麗俐は修也の意味をそのままの意味として好意的に受け取ったのだろう。眩しく輝く太陽のような笑顔を浮かべながら修也に向かって言った。
「そうだよね! じゃあ、食事も終わって食休みでもしたらこの星の探検に行きましょう!」
麗俐の純粋な悪意のない目線を前にして修也も今更「面倒だ」と口にするのは憚れたらしい。苦笑した顔を浮かべつつも麗俐の提案を受け入れて食休み後に惑星探検へと乗り出すことを了承したのである。
腹ごなしの運動を終え、用心のため、とパワードスーツを身に付けた後でタラップを降り、修也は以前惑星ラックスフェルンで用いた例のホーバークラフトを取り出す。ホーバークラフトの前面に乗り、麗俐を自身の背中に捕まえさせる。
二人乗りの形でホバークラフトは砂埃を巻き上げて前へと進む。地球と異なり誰も静止する人物がいないというのは大きかった。
水や緑といった資源はそれぞれのパワードスーツのヘルメットの中に搭載されている探知機能が発見してくれるので二人は特別に目を凝らす必要などはない。
修也が大人向けのキックボードことホバークラフトを蹴って必死に大きな惑星の中を走っていた時のことだ。
「あっ! お父さん! 止まって! ここで水の反応を感じたよ!」
「何!?」
麗俐の発した『水』という単語に修也は慌ててホバークラフトを停止させた。
そして飛び降りるかのように慌てて降りると、修也は麗俐が指し示す方向へと向かって歩みを進めていった。
自身のヘルメットに内蔵されている探知機能を活用して地面の下に目線を落とすと、確かに麗俐が言った水の反応が確認できた。ヘルメットの端に地下に内蔵されている水の量が具体的な数値となって表示されていく。それはこの小さな惑星の中に井戸を作れるほどの水である。
「やった! 初日から水が飲めるなんてついてるぞ!」
メトロイドスーツを身に付けた修也はパワードスーツのまま両手を上げて大げさと言わんばかりの態度で喜んでみせた。
「そうだね! 早速みんなに知らせてこなくちゃーー」
「ま、待て」
喜び勇む麗俐とは対照的に修也の顔は先ほどまでとは一転してすっかりと青くなっていた。額からは脂汗がゆっくりと地面の下へと垂れていった。
「この水は安全なのか?」
「あっ」
麗俐は意表を突かれたとばかりに口を大きく開けていた。麗俐も修也も喜びに目を囚われて水を口にする上で大事なことを忘れていた。現在の地球においてほとんどの地球人は自然に発生する水を飲む上で必ず濾過して飲んでいる。
産業革命以前の世界に住む人間であれば気にせず無加工の水を飲むのに躊躇いなどなかったであろうが、20世紀の後半になってからは川や泉といった自然の中で発生する水いわゆる自然の水と呼ばれる水には殺菌処理が施されておらず、濾過する前の水を飲むことで健康に悪影響を与えることもあると知られ、それ以後は機械による濾過が必要となったのだ。
地下水とて例外ではない。近代化以前の地下水をなんの疑いもなく飲んでいた人々にとって地下水は自分たちの生活を見守る慈母のごとき存在であった。
だが、現在では悪魔と慈母の両方の顔を見せる存在になった。
近隣の排水などによる汚染、季節や天候、施設等の衛生状態によって変化する水質、何より細菌や有害物質が基準以上に含まれている場合もある。人間を罠に嵌めて食す悪魔と喩えられるのも無理はない。
これらの問題点を突き付けられたことで二人はまたしても頭を抱えることになった。例えるのならば自分の実力以上の志望校と無茶苦茶なスケジュールを提案して教師にいっかっされる計画性のない学生のようなものだ。
修也が頭を抱えていた時のことだ。その計画性のない学生に対して手を差し伸べる教師のように麗俐が優しく肩に手を置いた。
「やってみないとわからないじゃん。一回みんなを呼んでこよう?」
その一言は修也にとって神からのお告げに等しい言葉だった。懺悔を告解して牧師に諭される哀れな子羊というのは今の修也のような心境を指すのかもしれない。
修也は力なく首を縦に動かした。話を聞いたジョウジたちは宇宙船の中に内蔵されていたという濾過器を持って地下水が内蔵されている場所へと向かった。
安全な飲み水を確保するための作業として一番難航したのは地下水を掘り出すための作業であったかもしれない。掘り出すための作業はスコップなどの地面を採掘するための道具なかったことから各々が所有するビームソードを用いることになった。本来であれば外敵を除去するための道具を無理に採掘用に用いたので作業は難航を極めた。
そのため無事に水が勢いよく地面の下から噴出してきた時には全員が両手を重ねて喜び合った。
噴出した水はジョウジの手によって調べられたが、地下水としては珍しく有害なものは何も含まれていないとのことだった。それでも安全のために濾過器を用いて水を使用するとのことだった。これは工場の仕上げ過程によるダブルチェックのようなものなので修也たちは口を出すことができなかった。黙ってジョウジが料理に使うレードルいわゆるおたまを思わせる片手サイズの小さな濾過器を使って水質の安全を高める姿を見つめることしかできなかった。
ジョウジの水質安全宣言によって気を抜かれた二人は力を失ったようにそのまま地面の上へと崩れ落ちていった。
早速スコーピオン号の中では修也たちが持ち帰った水を使ってインスタントのコーヒーが淹れられることになった。その目的は水の安全性の確認と水を発見したことによる祝勝会、そして今後のことを話し合うための会議の三つだった。
この時コーヒーを淹れたのは麗俐ではなく修也であった。
麗俐は自ら志願したのだが、麗俐よりも修也の方が上手いとのカエデによる主張によって麗俐は大人しく椅子の上に座らされた。
そして全員の前には温かいコーヒーが置かれていった。温かい湯気が使い捨ての紙コップの中に立っているのが全員の視線に見えた。
どうやらコーヒーの技術に関しては麗俐よりも修也の方が上であるそうだ。
「カレーか、私としては他の食事の方が良かったんだが」
修也は目の前に出されたレトルトのカレーを見つめながら愚痴をこぼした。
皿の代わりに使われる簡素なパックの中にはぐつぐつと鍋の中でじっくりと煮込まれた牛肉や野菜が入ったこげ茶色のカレーと炊き出された真っ白なご飯とが五分五分の割合で詰め込まれていた。
「贅沢言わないの。今の状況だと用意できるレトルトの中で一番手軽に用意できるんだからね。それ以外だと携帯食料くらいなんだよ」
麗俐はプラスチックのスプーンを片手に言った。
「ったく、こんな状況で飯の心配なんて……お姉ちゃんは大胆というか、豪胆というか」
悠介はレトルトのカレーのルーのみをプラスチックのスプーンで掬い上げながら言った。ご飯や丁寧に煮込まれた肉や野菜には手を付けることができなかった。喉が食事を拒否していたのだ。
「『腹が減っては戦はできぬ』と昔から言うでしょ? 私はそれに倣っただけだよ」
麗俐は得意げな笑みを浮かべながら言った。
「けど、飯のことはいいとして、今後のことはどうするんだよ? こんな惑星の中で死ぬなんておれはごめんだぜ」
「あたしだって嫌だよ。端末も通じない、ショッピングモールもないような星での垂れ死ぬなんて」
「しかし脱出できないのも事実です。先ほど、麗俐さんがレトルトの食事を作られている間に我々の方で通信機を試しましたが、どこにも通じません」
それまでは黙って腕を組んでじっと話を聞いていたジョウジが初めて口を挟む。
「それに通じたとしてもどの国のデータにも入っていないような未知の星なんですよ。救助船に位置を伝えることなど不可能です」
ジョウジと同様にカエデは悲痛な顔を浮かべながら答えた。
「けど、諦めたらそこで試合終了って言葉もありますよね?そうそう、悠介、あんたの好きなバスケの漫画でそう言ってなかった?」
「そうだけど、あれとは話が違うだろ? あくまでもバスケの試合は逆転の可能性があるからそう思えるだけで……こんなところまで追い詰められたら無理だよ」
悠介の顔は絶望に満ち溢れていた。その顔からはとっくの昔に希望というものが失われていると言わんばかりの顔であった。
修也には今見える悠介の顔が時代劇で無茶な年貢を取り立てられている百姓と重なってみえた。あの時は単にテレビで観るだけの存在であったが、今となってはその気持ちが痛いほどわかる。
自惚れと言われるのを覚悟で言わせてもらうと、修也はどうしようもない窮地へと落とされた人間の気持ちは地球にいるどの人間よりも分かっているつもりでいた。
それ程までに悠介は打ちのめされた顔を浮かべていたのだ。
現実で発生した理不尽とも思えるような時代の数々に有望なバスケットボールの選手とは思えないほど全てを諦め切っていた悠介であったが、それとは対照的に麗俐はどこか落ち着いた調子で弟を見つめていた。顔に焦る様子は見えない。
変に取り乱すこともなく落ち着いたまま食事を摂る姉の姿を見て悠介は不気味に思ったのか、パックの中にあったカレーを三分の一も食べずに、スプーンを置いて椅子の上を立ち去ったのである。
「どこ行くの?」
「部屋だよ! 部屋で遺言書を書くんだ!」
悠介は声を荒げながら言った。
「遺言書?」
麗俐は信じられないと言わんばかりの顔で悠介を眺めたが、悠介の顔は本気だった。悠介はフンと鼻を鳴らしたかと思うと、そのまま部屋へと戻っていった。
全てを諦め切り、目の前で繰り広げられる試合を放棄した悠介の前にはいかなる説得を口にしても無駄に終わるに違いなかった。
その様子を見て麗俐は大きく溜息を吐いた。
「仕方がない、この星から……いいや、宇宙から脱出するための方法は私たちの手で考えようじゃあないか」
修也が『この星』という単語を『宇宙』という壮大で果てのないものに変更したのは適切な表現に言葉を修正したというより彼自身も心の片隅では諦めの窮地へと達していたからだ。
わざわざ広い表現を使うことで無意識のうちに何も理解できていない麗俐に対して窘めるような意味も含めていたのである。
だが、麗俐は修也の意味をそのままの意味として好意的に受け取ったのだろう。眩しく輝く太陽のような笑顔を浮かべながら修也に向かって言った。
「そうだよね! じゃあ、食事も終わって食休みでもしたらこの星の探検に行きましょう!」
麗俐の純粋な悪意のない目線を前にして修也も今更「面倒だ」と口にするのは憚れたらしい。苦笑した顔を浮かべつつも麗俐の提案を受け入れて食休み後に惑星探検へと乗り出すことを了承したのである。
腹ごなしの運動を終え、用心のため、とパワードスーツを身に付けた後でタラップを降り、修也は以前惑星ラックスフェルンで用いた例のホーバークラフトを取り出す。ホーバークラフトの前面に乗り、麗俐を自身の背中に捕まえさせる。
二人乗りの形でホバークラフトは砂埃を巻き上げて前へと進む。地球と異なり誰も静止する人物がいないというのは大きかった。
水や緑といった資源はそれぞれのパワードスーツのヘルメットの中に搭載されている探知機能が発見してくれるので二人は特別に目を凝らす必要などはない。
修也が大人向けのキックボードことホバークラフトを蹴って必死に大きな惑星の中を走っていた時のことだ。
「あっ! お父さん! 止まって! ここで水の反応を感じたよ!」
「何!?」
麗俐の発した『水』という単語に修也は慌ててホバークラフトを停止させた。
そして飛び降りるかのように慌てて降りると、修也は麗俐が指し示す方向へと向かって歩みを進めていった。
自身のヘルメットに内蔵されている探知機能を活用して地面の下に目線を落とすと、確かに麗俐が言った水の反応が確認できた。ヘルメットの端に地下に内蔵されている水の量が具体的な数値となって表示されていく。それはこの小さな惑星の中に井戸を作れるほどの水である。
「やった! 初日から水が飲めるなんてついてるぞ!」
メトロイドスーツを身に付けた修也はパワードスーツのまま両手を上げて大げさと言わんばかりの態度で喜んでみせた。
「そうだね! 早速みんなに知らせてこなくちゃーー」
「ま、待て」
喜び勇む麗俐とは対照的に修也の顔は先ほどまでとは一転してすっかりと青くなっていた。額からは脂汗がゆっくりと地面の下へと垂れていった。
「この水は安全なのか?」
「あっ」
麗俐は意表を突かれたとばかりに口を大きく開けていた。麗俐も修也も喜びに目を囚われて水を口にする上で大事なことを忘れていた。現在の地球においてほとんどの地球人は自然に発生する水を飲む上で必ず濾過して飲んでいる。
産業革命以前の世界に住む人間であれば気にせず無加工の水を飲むのに躊躇いなどなかったであろうが、20世紀の後半になってからは川や泉といった自然の中で発生する水いわゆる自然の水と呼ばれる水には殺菌処理が施されておらず、濾過する前の水を飲むことで健康に悪影響を与えることもあると知られ、それ以後は機械による濾過が必要となったのだ。
地下水とて例外ではない。近代化以前の地下水をなんの疑いもなく飲んでいた人々にとって地下水は自分たちの生活を見守る慈母のごとき存在であった。
だが、現在では悪魔と慈母の両方の顔を見せる存在になった。
近隣の排水などによる汚染、季節や天候、施設等の衛生状態によって変化する水質、何より細菌や有害物質が基準以上に含まれている場合もある。人間を罠に嵌めて食す悪魔と喩えられるのも無理はない。
これらの問題点を突き付けられたことで二人はまたしても頭を抱えることになった。例えるのならば自分の実力以上の志望校と無茶苦茶なスケジュールを提案して教師にいっかっされる計画性のない学生のようなものだ。
修也が頭を抱えていた時のことだ。その計画性のない学生に対して手を差し伸べる教師のように麗俐が優しく肩に手を置いた。
「やってみないとわからないじゃん。一回みんなを呼んでこよう?」
その一言は修也にとって神からのお告げに等しい言葉だった。懺悔を告解して牧師に諭される哀れな子羊というのは今の修也のような心境を指すのかもしれない。
修也は力なく首を縦に動かした。話を聞いたジョウジたちは宇宙船の中に内蔵されていたという濾過器を持って地下水が内蔵されている場所へと向かった。
安全な飲み水を確保するための作業として一番難航したのは地下水を掘り出すための作業であったかもしれない。掘り出すための作業はスコップなどの地面を採掘するための道具なかったことから各々が所有するビームソードを用いることになった。本来であれば外敵を除去するための道具を無理に採掘用に用いたので作業は難航を極めた。
そのため無事に水が勢いよく地面の下から噴出してきた時には全員が両手を重ねて喜び合った。
噴出した水はジョウジの手によって調べられたが、地下水としては珍しく有害なものは何も含まれていないとのことだった。それでも安全のために濾過器を用いて水を使用するとのことだった。これは工場の仕上げ過程によるダブルチェックのようなものなので修也たちは口を出すことができなかった。黙ってジョウジが料理に使うレードルいわゆるおたまを思わせる片手サイズの小さな濾過器を使って水質の安全を高める姿を見つめることしかできなかった。
ジョウジの水質安全宣言によって気を抜かれた二人は力を失ったようにそのまま地面の上へと崩れ落ちていった。
早速スコーピオン号の中では修也たちが持ち帰った水を使ってインスタントのコーヒーが淹れられることになった。その目的は水の安全性の確認と水を発見したことによる祝勝会、そして今後のことを話し合うための会議の三つだった。
この時コーヒーを淹れたのは麗俐ではなく修也であった。
麗俐は自ら志願したのだが、麗俐よりも修也の方が上手いとのカエデによる主張によって麗俐は大人しく椅子の上に座らされた。
そして全員の前には温かいコーヒーが置かれていった。温かい湯気が使い捨ての紙コップの中に立っているのが全員の視線に見えた。
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