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4.国王と王妃の証言
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「母上! 父上も聞いてください! オルタンスと婚約破棄し、ここに居るリュシエンヌと婚約を結ぶ事をお許しいただきたいのです!」
「許しません」
アルベールの必死の訴えは、3秒と保たず王妃の短い一言でアッサリと終わりを告げた。
「なぜです! なぜ!? 僕たちは真実の愛で結ばれているんだ! オルタンスは婚約者を立てようとせずいちいち注意ばかりしてきて、僕に寄り添う事をしなかったのですよ!」
「……あなたは、国王と王妃が愛だけで務まると思っているのですか?」
「そうです、愛があればどんな困難も乗り越えられるでしょう!!」
それを聞いて国王が呟く。
「今この場ですら乗り越えられていないようだが……」
「それではそちらの令嬢にお訊きしますが、王妃の仕事をどのように考えていますか?」
リュシエンヌは「それなら良く分かってますわ」と満面の笑みで答える。
「盛大なお茶会を開いたり、貴族の皆さんが開かれるパーティに参加する事ですよね!」
時が止まったかのように会場が静まりかえり、音が一切無いと逆に耳が痛くなるんだと言うことを多くの者が感じた。
「やはり王妃たるもの恥ずかしい格好はできませんからパーティの度にドレスも新調しなければなりませんし……。そうだわ、アルベール様! 使用人達の部屋を潰して広いクローゼットを作りましょう!」
「あ……、あぁ……、そう……だな……」
先ほどから自身の思うようにならず頭に血が上り冷静さを欠いていたアルベールでも、この発言は王妃である母を侮辱している事に気がついた。
婚約の許可すら貰えていないのに、すでに自分が王妃となると信じているリュシエンヌ。
(まさか、リュシエンヌは僕が王太子だと思ってるのか?)
王太子は学園を卒業してから決定されるとされていた。
先ほどフェルナンドに対し不敬罪をちらつかせたが(上手くいかなかったが)、今のこの発言は正真正銘の不敬にあたるだろう。自分も連帯責任を問われるかもしれない。
事がここに至ってようやくアルベールは自身が窮地に立たされている事に気がついた。汗がダラダラ止まらない。
「あ……、あの、母上……」恐る恐る王妃の顔を見る。
「そうですねアルベール、確かにあなたの母はパーティに出席して遊び歩いてるだけですものね」
扇で口元を隠し、目は笑っている。
笑ってはいるが、全身から発せられるオーラは笑ってはいなかった。強い威圧感は錯覚では無いだろう。
「私の可愛いオルタンスちゃんは……、ではなかった、そちらのオルタンス嬢はね」
妃教育でも優秀な生徒であり、聡明なオルタンスの事を実の娘のように可愛がっている。
「特進クラスでフェルナンド殿と1、2位を争うほど勉学に勤しみながら、父であるクラヴェル侯爵の領地経営も手伝い成果をあげています。病院や療養所を増やし公衆衛生の概念を庶民の間に広め、今では病気による死亡率が王国内で一番低い領となったのもオルタンス嬢の功績です」
ランベールも知ってるエピソードを披露する。
「産業も特産も何もない領内の寂れた村で見つけたカカオなる植物で作った高級菓子が王都で大人気となり、村の発展に繋げたりしていますね」
王妃が言い足りないとばかりに言葉を重ねる。
「そんな多忙な中でも、妃教育が終わったら婚約者である貴方との時間を持とうとしていたのよ? それを貴方は自分の浮気で断っておきながら『婚約者として寄り添う事をしなかった』ですって? 笑わせてくれますこと」
アルベールは彫像と化している。
(題を付けるなら『茫然自失』か。もっと砕けて『こんなハズでは』の方がより彫像の心情に合ってるかな…)などと考えながらも、フェルナンドはさすがに声に出さなかった。
それまで話しの主導権を王妃に握られていた国王が締めは自分だとばかりに話しを引き取る。
「アルベール、その間お前は何をしていた? 学園でも上のクラスに上がる為の勉強を重ねる訳でもない。側近候補と言えば聞こえはいいが特に才も能も無い普通クラスに留まっている取り巻き連中にチヤホヤされいい気になっていただけだな」
そうして国王が締めたつもりだったのに、王妃はご立腹のためか話しが止まらない。
「そもそもが伯爵家以上、もしくは王家が特別に多大な貢献があったと認めた者しか参加できないこのパーティに、なぜ男爵令嬢を伴ってるのですか?」
物言わぬ彫像は当然答える事は無かった。
(あの、皆様……、殿下の精神力はゼロのようです。もうその位にしてあげた方が……)
オルタンスはあまりにも蚊帳の外に置かれすぎたせいか、自身がこの騒動の主役の1人だという事を忘れ舞台を観劇する観客になってしまっていた。
「許しません」
アルベールの必死の訴えは、3秒と保たず王妃の短い一言でアッサリと終わりを告げた。
「なぜです! なぜ!? 僕たちは真実の愛で結ばれているんだ! オルタンスは婚約者を立てようとせずいちいち注意ばかりしてきて、僕に寄り添う事をしなかったのですよ!」
「……あなたは、国王と王妃が愛だけで務まると思っているのですか?」
「そうです、愛があればどんな困難も乗り越えられるでしょう!!」
それを聞いて国王が呟く。
「今この場ですら乗り越えられていないようだが……」
「それではそちらの令嬢にお訊きしますが、王妃の仕事をどのように考えていますか?」
リュシエンヌは「それなら良く分かってますわ」と満面の笑みで答える。
「盛大なお茶会を開いたり、貴族の皆さんが開かれるパーティに参加する事ですよね!」
時が止まったかのように会場が静まりかえり、音が一切無いと逆に耳が痛くなるんだと言うことを多くの者が感じた。
「やはり王妃たるもの恥ずかしい格好はできませんからパーティの度にドレスも新調しなければなりませんし……。そうだわ、アルベール様! 使用人達の部屋を潰して広いクローゼットを作りましょう!」
「あ……、あぁ……、そう……だな……」
先ほどから自身の思うようにならず頭に血が上り冷静さを欠いていたアルベールでも、この発言は王妃である母を侮辱している事に気がついた。
婚約の許可すら貰えていないのに、すでに自分が王妃となると信じているリュシエンヌ。
(まさか、リュシエンヌは僕が王太子だと思ってるのか?)
王太子は学園を卒業してから決定されるとされていた。
先ほどフェルナンドに対し不敬罪をちらつかせたが(上手くいかなかったが)、今のこの発言は正真正銘の不敬にあたるだろう。自分も連帯責任を問われるかもしれない。
事がここに至ってようやくアルベールは自身が窮地に立たされている事に気がついた。汗がダラダラ止まらない。
「あ……、あの、母上……」恐る恐る王妃の顔を見る。
「そうですねアルベール、確かにあなたの母はパーティに出席して遊び歩いてるだけですものね」
扇で口元を隠し、目は笑っている。
笑ってはいるが、全身から発せられるオーラは笑ってはいなかった。強い威圧感は錯覚では無いだろう。
「私の可愛いオルタンスちゃんは……、ではなかった、そちらのオルタンス嬢はね」
妃教育でも優秀な生徒であり、聡明なオルタンスの事を実の娘のように可愛がっている。
「特進クラスでフェルナンド殿と1、2位を争うほど勉学に勤しみながら、父であるクラヴェル侯爵の領地経営も手伝い成果をあげています。病院や療養所を増やし公衆衛生の概念を庶民の間に広め、今では病気による死亡率が王国内で一番低い領となったのもオルタンス嬢の功績です」
ランベールも知ってるエピソードを披露する。
「産業も特産も何もない領内の寂れた村で見つけたカカオなる植物で作った高級菓子が王都で大人気となり、村の発展に繋げたりしていますね」
王妃が言い足りないとばかりに言葉を重ねる。
「そんな多忙な中でも、妃教育が終わったら婚約者である貴方との時間を持とうとしていたのよ? それを貴方は自分の浮気で断っておきながら『婚約者として寄り添う事をしなかった』ですって? 笑わせてくれますこと」
アルベールは彫像と化している。
(題を付けるなら『茫然自失』か。もっと砕けて『こんなハズでは』の方がより彫像の心情に合ってるかな…)などと考えながらも、フェルナンドはさすがに声に出さなかった。
それまで話しの主導権を王妃に握られていた国王が締めは自分だとばかりに話しを引き取る。
「アルベール、その間お前は何をしていた? 学園でも上のクラスに上がる為の勉強を重ねる訳でもない。側近候補と言えば聞こえはいいが特に才も能も無い普通クラスに留まっている取り巻き連中にチヤホヤされいい気になっていただけだな」
そうして国王が締めたつもりだったのに、王妃はご立腹のためか話しが止まらない。
「そもそもが伯爵家以上、もしくは王家が特別に多大な貢献があったと認めた者しか参加できないこのパーティに、なぜ男爵令嬢を伴ってるのですか?」
物言わぬ彫像は当然答える事は無かった。
(あの、皆様……、殿下の精神力はゼロのようです。もうその位にしてあげた方が……)
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