8 / 10
(番外編)その後の2人
しおりを挟む
アルベールとリュシエンヌはパーティー会場から連れ出されアルベールの自室に放り込まれた。
ごく普通の人ならば気まずくなって沈黙が部屋を支配するところだが、この2人は違う。
「なんで……、なんでこんな事に! アルベール様が頼りないからこんな事になってしまったのですよ!」
「な! 人のことを騙しておきながらよくも僕を責められたものだな! まずは謝罪の言葉があってしかるべきだろう!!」
「あんな見え透いた嘘に騙される殿下の方が悪いに決まってるじゃありませんか!」
「ふん、僕は善良で素直なところが長所だからな、騙されてしまうのは仕方ない」
お互いに『自分は悪くない』と信じる2人の意見が交わる事などない。
「まさかわたくしの話し以外に婚約破棄の切り札が無いとは思いませんでした。長年一緒に居れば婚約破棄するに足る理由があると思いましたのに」
「君が見せてくれた破かれた教科書や切られた制服は準備していた」
「それこそ誰が破いたか分からない物が証拠になる訳ないじゃないですか」
「……もうよい!」
アルベールはつい先ほど多くの人から反論され一つも言い返せなかったのに、部屋に戻ってからもまた言い返せない。
「僕たちは平民として結婚し、一緒に暮らさなければならないんだ、いがみ合ってても仕方ない」
「わたくしは貧乏な暮らしなどゴメンですので、即座に離婚し大きな商会の跡取り息子でもつかまえて嫁ぎますわ」
「な、なんだと! 自分だけ逃げようとは許さんぞ!!」
「アルベール様も裕福な中産階級の令嬢をつかまえて婿養子に入ればよろしいではありませんか。見た目だけは素晴らしいんですから」
「そ、そうか、そうすれば落ちぶれた惨めな生活を送らなくて済むな、良い案だ。それでいこう!」
「そうですわ、見た目だけは素晴らしい殿下と、若さと美貌と知性を兼ね備えたわたくしが手を結べば明るい未来が待っていますわ!」
アルベールは何かが引っ掛かったが言ってもまたやり込められるだけだと口をつぐんだ。
そうして2人は同志として作戦会議という名の甘い夢を見始める。
「まずはドゴール殿に名家の令息令嬢を紹介してもらうとしようか」
2人は大きな声でやりあっていた為、扉の外で警護していた衛兵にすべての会話が筒抜けだった。
パーティー会場での一部始終を見ていた衛兵からすると、さすがにドゴールが2人と関わりを持つはずが無いと思うのだが……。
結局、作戦会議は盛り上がり、王族に復帰できるほど壮大な計画に膨れ上がるのを2人は実現可能な目標だと信じて楽しい時間を過ごしていた。
扉の外で衛兵は「案外と相性の良い夫婦になりそうだな……」と、そっと呟いた。
■□■□■□■□■□■□■□
すでに完結済みでしたが、感想欄で2人のその後が気になるというお言葉を戴きましたので書いてみました。
どこか憎めない2人に凄惨な「ざまぁ」はしたくなかったので、前向きな形にしましたがいかがだったでしょうか?
フェルナンドについてもご要望をいただいておりますので、前向きに検討します。
初めて書いた作品を多くの方に楽しんでいただき、さらにご要望もいただけるとは非常にありがたい事です。
本編のみのつもりでしたので「完結」にしていましたが、番外編を書くために「連載中」に戻しておきます。
少し時間がかかるかと思いますが、更新した際にはまたよろしくお願いいたします。
ごく普通の人ならば気まずくなって沈黙が部屋を支配するところだが、この2人は違う。
「なんで……、なんでこんな事に! アルベール様が頼りないからこんな事になってしまったのですよ!」
「な! 人のことを騙しておきながらよくも僕を責められたものだな! まずは謝罪の言葉があってしかるべきだろう!!」
「あんな見え透いた嘘に騙される殿下の方が悪いに決まってるじゃありませんか!」
「ふん、僕は善良で素直なところが長所だからな、騙されてしまうのは仕方ない」
お互いに『自分は悪くない』と信じる2人の意見が交わる事などない。
「まさかわたくしの話し以外に婚約破棄の切り札が無いとは思いませんでした。長年一緒に居れば婚約破棄するに足る理由があると思いましたのに」
「君が見せてくれた破かれた教科書や切られた制服は準備していた」
「それこそ誰が破いたか分からない物が証拠になる訳ないじゃないですか」
「……もうよい!」
アルベールはつい先ほど多くの人から反論され一つも言い返せなかったのに、部屋に戻ってからもまた言い返せない。
「僕たちは平民として結婚し、一緒に暮らさなければならないんだ、いがみ合ってても仕方ない」
「わたくしは貧乏な暮らしなどゴメンですので、即座に離婚し大きな商会の跡取り息子でもつかまえて嫁ぎますわ」
「な、なんだと! 自分だけ逃げようとは許さんぞ!!」
「アルベール様も裕福な中産階級の令嬢をつかまえて婿養子に入ればよろしいではありませんか。見た目だけは素晴らしいんですから」
「そ、そうか、そうすれば落ちぶれた惨めな生活を送らなくて済むな、良い案だ。それでいこう!」
「そうですわ、見た目だけは素晴らしい殿下と、若さと美貌と知性を兼ね備えたわたくしが手を結べば明るい未来が待っていますわ!」
アルベールは何かが引っ掛かったが言ってもまたやり込められるだけだと口をつぐんだ。
そうして2人は同志として作戦会議という名の甘い夢を見始める。
「まずはドゴール殿に名家の令息令嬢を紹介してもらうとしようか」
2人は大きな声でやりあっていた為、扉の外で警護していた衛兵にすべての会話が筒抜けだった。
パーティー会場での一部始終を見ていた衛兵からすると、さすがにドゴールが2人と関わりを持つはずが無いと思うのだが……。
結局、作戦会議は盛り上がり、王族に復帰できるほど壮大な計画に膨れ上がるのを2人は実現可能な目標だと信じて楽しい時間を過ごしていた。
扉の外で衛兵は「案外と相性の良い夫婦になりそうだな……」と、そっと呟いた。
■□■□■□■□■□■□■□
すでに完結済みでしたが、感想欄で2人のその後が気になるというお言葉を戴きましたので書いてみました。
どこか憎めない2人に凄惨な「ざまぁ」はしたくなかったので、前向きな形にしましたがいかがだったでしょうか?
フェルナンドについてもご要望をいただいておりますので、前向きに検討します。
初めて書いた作品を多くの方に楽しんでいただき、さらにご要望もいただけるとは非常にありがたい事です。
本編のみのつもりでしたので「完結」にしていましたが、番外編を書くために「連載中」に戻しておきます。
少し時間がかかるかと思いますが、更新した際にはまたよろしくお願いいたします。
150
あなたにおすすめの小説
辺境伯令嬢が婚約破棄されたので、乳兄妹の守護騎士が激怒した。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
王太子の婚約者で辺境伯令嬢のキャロラインは王都の屋敷から王宮に呼び出された。王太子との大切な結婚の話だと言われたら、呼び出しに応じないわけにはいかなかった。
だがそこには、王太子の側に侍るトライオン伯爵家のエミリアがいた。
婚約破棄されたと思ったら結婚を申し込まれました
を
恋愛
「リッカ・ウィンターベル!貴様との婚約を破棄する!」
「あ、はい」
リッカがあっさりと承諾すると、思っていた反応とは違ったので殿下は困惑した。
だが、さらに困惑する展開が待ち受けているのだった。
愛しい義兄が罠に嵌められ追放されたので、聖女は祈りを止めてついていくことにしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
グレイスは元々孤児だった。孤児院前に捨てられたことで、何とか命を繋ぎ止めることができたが、孤児院の責任者は、領主の補助金を着服していた。人数によって助成金が支払われるため、餓死はさせないが、ギリギリの食糧で、最低限の生活をしていた。だがそこに、正義感に溢れる領主の若様が視察にやってきた。孤児達は救われた。その時からグレイスは若様に恋焦がれていた。だが、幸か不幸か、グレイスには並外れた魔力があった。しかも魔窟を封印する事のできる聖なる魔力だった。グレイスは領主シーモア公爵家に養女に迎えられた。義妹として若様と一緒に暮らせるようになったが、絶対に結ばれることのない義兄妹の関係になってしまった。グレイスは密かに恋する義兄のために厳しい訓練に耐え、封印を護る聖女となった。義兄にためになると言われ、王太子との婚約も泣く泣く受けた。だが、その結果は、公明正大ゆえに疎まれた義兄の追放だった。ブチ切れた聖女グレイスは封印を放り出して義兄についていくことにした。
美形の伯爵家跡取りが婚約者の男爵令嬢に破棄返しを食らう話
うめまつ
恋愛
君が好みに合わせないからだよ。だから僕は悪くないよね?
婚約解消したいと伝えた。だってこんな地味で格下の相手は嫌だ。将来有望な伯爵家の跡取りで見た目だって女性にモテるんだから。つれて回るのに恥ずかしい女なんて冗談じゃない。せめてかしずいて気分良くしてくれるなら我慢できるのにそんなことも出来ないバカ女。だから彼女の手紙はいつも見ずに捨ててた。大したこと書いてないから別にいいよね。僕が結婚したいんじゃないんだし。望んだのはそっちだよね。言うこと聞かないと婚約解消しちゃうよ?
※スカッとはしないかなぁ。性格クズは死ぬ間際もクズかな……(読み返してこういう感想でした)
※だらだら番外編書いてます。
※番外編はちょっとじれじれと可愛いイチャイチャ雰囲気にまとまりました。
酔って婚約破棄されましたが本望です!
神々廻
恋愛
「こ...んやく破棄する..........」
偶然、婚約者が友達と一緒にお酒を飲んでいる所に偶然居合わせると何と、私と婚約破棄するなどと言っているではありませんか!
それなら婚約破棄してやりますよ!!
【本編完結】真実の愛を見つけた? では、婚約を破棄させていただきます
ハリネズミ
恋愛
「王妃は国の母です。私情に流されず、民を導かねばなりません」
「決して感情を表に出してはいけません。常に冷静で、威厳を保つのです」
シャーロット公爵家の令嬢カトリーヌは、 王太子アイクの婚約者として、幼少期から厳しい王妃教育を受けてきた。
全ては幸せな未来と、民の為―――そう自分に言い聞かせて、縛られた生活にも耐えてきた。
しかし、ある夜、アイクの突然の要求で全てが崩壊する。彼は、平民出身のメイドマーサであるを正妃にしたいと言い放った。王太子の身勝手な要求にカトリーヌは絶句する。
アイクも、マーサも、カトリーヌですらまだ知らない。この婚約の破談が、後に国を揺るがすことも、王太子がこれからどんな悲惨な運命なを辿るのかも―――
断罪されそうになった侯爵令嬢、頭のおかしい友人のおかげで冤罪だと証明されるが二重の意味で周囲から同情される。
あの時削ぎ落とした欲
恋愛
学園の卒業パーティで婚約者のお気に入りを苛めたと身に覚えの無いことで断罪されかける侯爵令嬢エリス。
その断罪劇に乱入してきたのはエリスの友人である男爵令嬢ニナだった。彼女の片手には骨付き肉が握られていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる