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陥落するまでの話
13.懐柔
しおりを挟む塞がれて苦しかったはずなのに、レオンの唇が離れてしまえば寂しいとさえ思ってしまった。まるで灯っていたあかりが消えたときのように、確かなものがない喪失感。
これは同意じゃない。俺の意思など関係なしに好き勝手されているというのに。本当は憤っていいはずだ。暴れて罵って、レオンへの非難だって滝のように浴びせていい。
けれど──
間近で碧眼が俺を見る。すべて見透かされている気がして、何も言えない。どうしたってレオンの手は拒めないのだ。俺は……
「平気そうだね。嫌悪されると思ったのにアルは素質あるみたいだ……もっといっぱい挿入れてあげよう?」
「く、んぅ……ぁ、っあっ あ、ちがう、できなっ……うぁ」
身を起こしたレオンは嬉々としてゆっくり指の根元までうずめた。そして内壁を撫でながら引き抜き、また奥まで差し入れる。何度も何度もそうやって挿入れては引き抜き、指を曲げて後孔の入口を引いては拡げ、すんなり動かせるようになると他の指が増やされた。
一度精液を吐き出し硬度をなくしていた分身へ再びレオンの手が伸びる。後孔を弄られながら扱かれると、どこで湧いた快感なのか境目がわからない。休む間もなく昂らされて、身体を巡る熱が沸騰しそうだ。
「そんな、っあ、……」
後孔へ含む指は三本に増やされていた。動き回る指先がコリッと内壁のどこかへ当たったとき、俺は顕著に腰を戦慄かせ、同時にあられもない声が漏れ出ていた。
「ひぃ、あぁっ!」
「ここにあった」
感じる場所を知られてしまえば容赦なくそこばかりを攻められる。ぐにぐに押されては何度も指先で弾かれた。
「あっあ、ぁっ、……んぅ、うぁ」
それなのに追い上げられても絶頂の手前で動きを緩められてしまい、腰を揺らして強請るが、それ以上与えてはもらえない。すっかり身体が反応するようになってしまった俺は、レオンに翻弄されていた。
視界が滲み、目尻から耐えきれない涙が溢れた。それに気づいたレオンが唇を寄せ、わざとらしくチュッと音を鳴らす。敏感になっている俺はそういった些細な行為でも快感として拾ってしまうのに。
何かが足りない。熱くなっている身体に触れられていても、満たされたいのは別のものだ。
「もっ、と……」
かさついた唇の隙間から舌先を出してレオンへキスを強請る。正気ならきっとこんなことはできない。自分から求めるなんて。おかしくなっていたのだ、このときの俺は。なにもかも。
妖艶に笑んだレオンが顔中にちゅ、ちゅ、ちゅと触れてから望みどおり唇へ辿りついた。俺は首に腕を回し巻きついた。
隙間がないほど深く結び合わせ、俺の舌と絡める。それから口蓋を舐め、舌の横側をくすぐり、ぐるぐる口腔を荒らし回った。
「んふ、ぅ」
飲み下せなくなった唾液が口角から溢れ、首筋を伝ってだらりと流れる。そんな些末なことは気にもならず、深く貪るような口吻を続けた。
こんなに乱され、わけのわからないことをされているというのに。レオンは決して乱暴なことはせず、傷つけはしない。
そして何度も何度も丁寧に愛撫され、感じるはずのない場所でも快感を拾うようなった。レオンは何も言わない。触れる唇や手から俺に対する欲は伝わっても、真意は何もわからなかった。
「くっふ、っう……っ、──っ!!」
俺のナカへ埋められていた三本の指に代わって、レオンの先端が入口に充てがわれた。そのままずぶずぶ躊躇うことなく雄が挿入れられた。
息を止めて声にならない絶叫までも塞がれ、身を硬くしている俺をまるごとレオンが抱きしめた。
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