姫様ごめん!うちのNo.1は俺の事大好きです!

鈴音

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短編

キスがしたい 2

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R-18を匂わせる表現があります。
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「さきさん。おいで。」

今日もアイ君はうちに来ている。

俺を膝の上に乗せるのはいつものこと。
そのままそれぞれの事をするのもいつもの事だけれど、こんなに密着しているのにアイ君は何もしてこない。

正直な話、もっと手が早いと思ってた。
半年なんてまたずにキスもそれ以上も迫られるものだと…。

でも現実は全く何もない…。
スキンシップは欧米人並みなのに。なぜ。

絶対今日問い詰めるからな。
とりあえず、女の子からきたLINEに返信をしながらタイミングを伺う。


「さきさん、今度のハロウィン何する?」

お店のハロウィンイベントの事だ。
従業員は全員コスプレをする決まりになっている。
まだ決めてないけどそうだよなぁ…今9月だし、そろそろ準備しないと。

「あー…どうしよう。何も決めてなかった。アイ君は?」

「僕はー…ベタにドラキュラとか?」

「え!絶対似合う!」

「本当ですか?じゃあそうしよっと。」

「うん。きっとめちゃくちゃかっこいいよ。」

「おお…嬉しいこと言ってくれますね。」

めちゃくちゃ楽しみ。
女の子も絶対撃ち抜かれるだろうなぁ…。
いいなぁ。ドラキュラのアイ君に接客されたい。
ずるい。

「みんなメロメロになっちゃうね。」

おっと。とってもわかりにくい全力の嫌味が口から出てしまった。

「えー…僕はさきさんだけがメロメロになってくれたらそれでいいよ。」

「そうかよ。」

ついぶっきらぼうな反応をしてしまうけど、毎回欲しい言葉をくれるのは本当にすごいと思う。
だから売れるんだ。毎回言うけど。

でも1番欲しいのはキスなんだよなぁ…。
言葉もめちゃくちゃ嬉しいけど、やっぱり好きな人とは触れ合いたい。
何で言葉はわかるのにこれはわからないの?

「冷たい…。僕はいつもさきさんにメロメロだけど。」

「じゃあ何でキスしてくれないの。」

「は。」

え、待って。やばい。やばいやばいやばいやばい。
やったわ。
ちょっと待って考えすぎて口から出た。
アイ君絶対固まってるよ。待って本当に待って。

「待って今のなし。」

「さきさん。」

「本当になし。待って。なし。」

「キスしたいの?」

俺がテンパっている間にもアイ君の追求は止まらない。
まるで俺を追い詰めるかのように、抱きしめる力が強くなっていく。

「待って本当に待って聞かなかった事にして。」

「なしにしていいの?」

「っ…。」

強く抱きしめられているせいで顔がめちゃくちゃ高い。
耳元で喋られると余計に心臓が跳ねる。

この際勢いでも何でもいい、これを言わないと!

「まって、ちがくて、えと、んっ!?」

慌てながらでも何とか言葉にしようと口を開くが、その口は塞がれてしまった。

!?
塞がれてしまった!?

「ちょっ…まっ…んっはっ…。」

え、俺今キスされてる?
しかも深いやつじゃん。最初はちょんってくらいじゃないの…?え?

俺がフリーズしている間にもアイ君の舌の動きは止まらない。

「んん…!?ぁっ…。」

待って気持ちいい…むり。溶ける。
こんなうまいのアイ君。
追い付くだけで精一杯なんだけど。
あと角度的に首痛い…。

でもそれも気にならないほど気持ちよくて、なんとか俺も舌を絡める。
体感にして数分、ようやく終わった。

「は…。ぁ…。」

「ふふ。顔とろとろで可愛い。気持ちよかった?」

今頭撫でられるの気持ちいい…。アイ君の手に頭を擦り付けてしまう。

「気持ち…よかったけど。でもなんで…急…。」

「してほしかったんでしょ?キス。」

「嫌…なのかと思ってた…。」

正直に伝えると、きょとん。という言葉が頭上に乗っていてもおかしくない顔をするアイ君。

「え、なんで?」

「だって…スキンシップ激しいのにキスはしないから…俺ら仕事上女の子ともできるじゃん?だから男の俺とはそういうのはなしの関係なのかなとか…。考えちゃって…。」

「はぁ…。」

そのままを話すとため息が聞こえてくる。
どういうため息?女々しいとか思われてたらどうしよう。

「あーーーーー!!!」

不安に駆られていると、急にアイ君が絶叫し始めた。

「な、なに。ごめん。え、なに。」

と思ったら顔を覆って落ち込み始めた。なに怖い。

「はあぁぁぁ…。こんな事ならもっと早く手出しとけばよかった…。」

ん?なんか思ってたのと違うぞ。

「え?」

聞き返すと、アイ君は俺を膝から下ろして向き合い、真面目な顔で話し始めた。

「不安にさせてごめんなさい。
さきさんが僕のことを好きでいてくれてるのはわかってます。
でも強引な告白しちゃったし、さきさんは元々女性が好きだから…その、そういうのは僕とは嫌かなぁとか…考えてたんですけど…

あー…くそ。損した。」

そういう事だったんだ…。
じゃあ本当に大切にしてくれてたんだ。
気を使いすぎだけど。
好きなんだからいいに決まってるじゃん。あれ、これ俺もブーメランか。

「損?」

「損ですよ。もっと早くこの可愛いさきさんが見れたってことでしょ。まじで我慢してたのに…。
不安にさせててごめんなさい。
これからはめちゃくちゃしますね。」

さらっと何いってんだお前。

「俺がもたないからだめ!」

「んふふ。本当に可愛い。毎回とろとろにしてあげますから大丈夫ですよ。」

何が大丈夫だというんだ。全くもって大丈夫じゃない。

「黙れ…。」

「黙らせてくれます?キスする?」

「本当にうるせえ。もうさせない。」

「ごめんそれはやめて。キスしたい。」

「ストレートだな…。
まあ、よかった。ほっとした…。」

「したくないわけないですよ。不安にさせてごめんなさい。でも僕めちゃくちゃ嬉しいです。さきさんもそう思ってくれてて。」

「別に…。恋人だから普通じゃない?俺はアイ君とならその後だって…待って。」

やらかした。今日失言しかしてない。
口の防波堤が崩壊してる。

「待たない。なに?その後?その後ってなに?」

案の定見逃してくれるわけもないから問い詰められる。
もう無理恥ずかしい無理!

「かえる!もうかえる!」

「さきさん。ここさきさん家。テンパリすぎ。」

「じゃあお前が帰れ!」

「聞くまで帰らないよ?なに?その後したいの?んー?」

こいつまじで性格悪い…。
もうこうなったら開き直りしかない。

「あー!もうそうだよ!やりてえよわるいかよ!とっとと手出してこいよ!中途半端なスキンシップばっかりしてきやがって!」

今世紀最大の口の悪さで全てをぶちまける。

「ふはは。口悪。じゃあ遠慮なく。」

そう言って俺の服に手をかけてこようとする。
待って勢いで言ったはいいけど心の準備できてない!

「え、ちょ、まっ、まって!」

「もう待ちませーん。というか…
充分待ちましたよ、俺。もういいですよね?」

今日はキスだけのつもりだったから全然良くなかったけど、イケメンに言われたら頷くしかない。
俺本当ちょろい。

「んふふ。可愛い。ベッド行こ。いっぱいとろとろにしてあげる。」

「っ…。んぁー…。」

恥ずかしすぎて何言っていいかわかんない。
何でお前こんな時までかっこいいの。

「声出てないじゃん。本当可愛い。ほら、行こ。」

「ん…。」
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