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51~60話
53a、ご主人様は私の願いをわかっていなかった
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愛らしく頬を染めて恥ずかしそうにしながらも、自らの言葉通り口付けを嫌がる素振りはない。
契約で縛りつけているだけだとわかっていても、俺のすべてを受け入れてくれるかのようなその振る舞いにうっかりと幸せを感じてしまいそうになる。
少なくともマヤも不自由なく暮らしていると、そう思っていた。
「……契約?」
「い、今更なんですけど、奴隷を続ける期限とか、あの、奴隷を辞めさせる条件とか……」
ある日帰宅すると唐突に、マヤが自身の契約期限について切り出した。
これまで契約のことなど、口にしたこともなかったのに。
期限は無期限であること、解放の条件も、聞かれた内容に端的に答えてやりながら頭の中で考える。
いつの間にか我慢を重ねさせていたのだろうか?
どうすればいい?
どうすればマヤをこの手に留めおける?
出会う前ならいざ知らず、マヤを知ってしまった今となってはもう手放すことなど考えられるはずもない。
だがもし、もしもマヤが本当に心から解放されたいと望んでいたのなら、俺は……
俺は…………
「……マヤは、愛玩奴隷を辞めたいのか?」
「え……」
マヤは虚をつかれたように口ごもる。
ばつが悪そうに瞳を伏せ、言葉を探して迷いながら薄く口を開いた。
「それ、は……」
ああ、やめてくれ。
嫌だ。聞きたくなどない。
「いや、いい。言いづらい事を聞いてすまなかった」
マヤが返事をするより早く、俺は被せるように言い放った。
まだ物言いたげなマヤの髪をそっと撫でる。
俺は自分で質問をしておきながら、俺の元を離れたいと言うマヤの訴えを耳にする覚悟などなかったのだ。
契約で縛りつけているだけだとわかっていても、俺のすべてを受け入れてくれるかのようなその振る舞いにうっかりと幸せを感じてしまいそうになる。
少なくともマヤも不自由なく暮らしていると、そう思っていた。
「……契約?」
「い、今更なんですけど、奴隷を続ける期限とか、あの、奴隷を辞めさせる条件とか……」
ある日帰宅すると唐突に、マヤが自身の契約期限について切り出した。
これまで契約のことなど、口にしたこともなかったのに。
期限は無期限であること、解放の条件も、聞かれた内容に端的に答えてやりながら頭の中で考える。
いつの間にか我慢を重ねさせていたのだろうか?
どうすればいい?
どうすればマヤをこの手に留めおける?
出会う前ならいざ知らず、マヤを知ってしまった今となってはもう手放すことなど考えられるはずもない。
だがもし、もしもマヤが本当に心から解放されたいと望んでいたのなら、俺は……
俺は…………
「……マヤは、愛玩奴隷を辞めたいのか?」
「え……」
マヤは虚をつかれたように口ごもる。
ばつが悪そうに瞳を伏せ、言葉を探して迷いながら薄く口を開いた。
「それ、は……」
ああ、やめてくれ。
嫌だ。聞きたくなどない。
「いや、いい。言いづらい事を聞いてすまなかった」
マヤが返事をするより早く、俺は被せるように言い放った。
まだ物言いたげなマヤの髪をそっと撫でる。
俺は自分で質問をしておきながら、俺の元を離れたいと言うマヤの訴えを耳にする覚悟などなかったのだ。
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