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71~80話
77d、私は大事な日をわかっていない
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最近のガルは少し忙しそうだ。
以前より帰りが遅く、非番の日だって月に一度は執事に呼ばれて屋敷内の執務室に籠もっている。
なんでも普段は執事に一任している領地運営に関して、最終決定権を持つガルが定期的に確認処理をする必要があるのだとか。
領地なんて持ってたんだ……。
ダダダダダ……
廊下を走る足音に、いそいそと扉に向かう。
バタンッ
「ガル様、おかえりなさいっ」
「ああ。マヤ、ただいま」
勢いよく飛びつけば、ひょいと抱き上げて口付けられる。
そのまま膝に抱かれソファに座るまでがいつもの流れ。
ソファ前のローテーブルには、夕方に執事が置いていった銀のトレーが乗せられている。
トレーの上に乗っているのはガル宛に届いた手紙類だ。
「今日はお手紙が多いですね?」
手紙なんて一通もない日の方が多いくらいなのに、今日は十通近く乗っている。
「ああ、生辰だからだろうな」
ガルは封筒の束を手に取りパラパラと差出人を確認すると、興味なさそうにポイとトレーの上に放った。
「セイシン?」
「生まれた日のことだ」
「あー誕生日。…………誕生日!?」
驚きにピッと背筋が伸びる。
「な、な、なんで教えてくれなかったんですか!?」
私が手紙について聞かなければ、ガルが誕生日だと口にすることもなかったように思う。
そりゃあ事前に教えてもらってたって何が用意できたわけでもないだろうけど、それでもやっぱり……。
「何かお祝いしたかった……」
「っすまない! めでたいことだという意識がなくてな」
しょんぼりと項垂れた私に、ガルがおろおろと謝る。
ああ、違う。違うの。ガルを責めたいわけじゃなくって。
バッと顔を上げ、改めてしっかりとガルの目を見る。
「ガル様、お誕生日、おめでとうございます!」
「……ありがとう」
言葉とは裏腹に、ガルは少し困ったように眉尻を下げた。
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