異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。

バナナマヨネーズ

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出会い編

13 私と温かい涙

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 腹が減ってはなんとやらということで、私は黙々と朝食を食べた。そんな私を見た二人も、特に何かを話すこともなく、静かに用意された朝食に手を付けた。

 ヴェインとアグローヴェは、ロールパンを見たことがないのか、不思議そうに手にとって匂いを嗅いでいた。
 その姿が、とても似ていたのがおかしくて、私は思わず笑ってしまっていた。だけど、他人に笑った顔を見られたくなかった私は、直ぐに表情をもとに戻して何食わぬ顔で食べ進めた。
 二人は、そんな私を同じ様に首を傾げて見た後にパンに齧りついた。
 首をかしげる姿も似ていて、私は内心、クスクスと笑ってしまったけど、表情に出さないように敢えて難しい顔をした。
 だけど、そんな私を他所にパンを口に入れた状態で、ヴェインとアグローヴェはフリーズしていた。
 あれ?パン美味しくなかったかな?今日のパンはなんちゃってバターの風味が効いていてとっても美味しいと思うんだけど?
 それとも、口に合わなかったかな?
 そんなことを考えていると、突如ヴェインとアグローヴェは勢いよくパンを食べ始めた。
 それはもう、イケメンが台無しってくらいリス顔だった。
 
「ぷっ!!くっふふ。あはははは!!」

 そりゃあね、イケメン台無しのリス食いを見てしまった日には笑わずにはいられませんって。
 それくらい、イケメンのリス食いは私に刺さった。
 久しぶりに、お腹を抱えて笑った気がする。
 あれ、久しぶりすぎて呼吸の仕方がわからない!!
 
「あはは!!げほっ!!ゴホゴホ!!」

 ちょっと呼吸困難気味になっていた私は、頑張って呼吸の仕方について考える。なんとか、呼吸の仕方を思い出した私は、ぜぇはぁぜぇはぁと荒く呼吸を繰り返しながら、自然に浮かんだ涙を拭った。
 
 突然笑い出したと思ったら、呼吸困難気味になっていた私を見てポカンとしている二人を見たら、また可笑しくなってしまった。
 だって、ほっぺたがまだパンパンの状態で、目を丸くしてイケメン二人がポカンとしてるんだもん。
 これは、可笑しすぎるでしょうが!!
 
 一頻ひとしきり笑ったら、なんとか笑いの発作は落ち着いてきた。
 息を整えてから、私は突然の爆笑について二人に謝罪した。
 
「ふう。ごめんなさい。二人の食べっぷりが可笑しくって……」

 私の言葉を聞いた二人は、急いで口の中のものを咀嚼してから飲み込んでもとのイケメンの顔に戻って言った。
 
「別にいいさ、楽しかったら笑う。それって普通のことだろ?」

「ふん。人を見て笑うなんて、失礼ですよ貴方」

 ヴェインの言葉に、何故か私は心が軽くなるのを感じた。
 そっか、私が笑っても二人は何も気にしないんだ。
 そっか、そうだよね。今まで気にしすぎだったんだよ。かっちゃんの言葉に振り回されて、私馬鹿みたい。
 ヴェインは、いい人だな。温かくて、お兄ちゃんって感じがする。
 それに比べて……、アグローヴェの言い方。
 まあいいや。
 だって、私が笑っても顔色を変えない人が目の前にいるってことが今の私にとっては嬉しいことなんだから。
 
「ありがとうございます……。えっと、ラズロさん?」

 馴れ馴れしく、名前で呼ぶのもどうかと思ったけど、二人共ラズロさんなんだよね?そんなことを思っていると、ヴェインがニカってお日様みたいな笑顔を見せながら私に言ってくれた。
 
「俺のことは、ヴェインでいいよ。アークのことも気軽に呼んでいいよ」

「ふん。兄様がそう言うなら、気軽にアークと呼ぶことを許してあげますよ」

「ヴェインさん、ありがとうございます。ふふふ。アーくんはブラコンなんだね」

「ちょっ!ブラコンとはなんですか!!僕は兄様を敬愛しているだけです!!それに、アーくんって!?」

「えっ?そういうのをブラコンっていうんだよ?えっと、アーク君は言いにくいから、アーくんで?」

「~~~~~~」

 なんだか、この空気私好きかもしれない。
 そんな事を考えながら、今度は穏やかな空気の中朝食を食べ始めた私達は、先程とは打って変わって、会話をしながら食べ進めたのだった。
 
「改めて、私は香澄静弥って言います。名前が静弥で、家名が香澄です。えっと、ここは魔の森って呼ばれている場所みたいです」

 私の自己紹介と合わせて説明された場所にヴェインさんとアーくんは驚きの表情をして固まっていた。
 私は、首を傾げてどうしたのと二人に声を掛けた。
 
「えっと?どうしたんですか?」

「まさか……、ここが魔の森だなんて……。シズ……、と呼ばせてもらうよ」

 そう言って、私の方を見たヴェインさんに了承の意を伝えるために頷いてみせた。私が頷いたのを見てヴェインさんは話を続けた。

「えっと、シズの言葉を信じないわけではないけど、ここが魔の森だなんて……。俺たちの知っている魔の森は、人が踏み込めない魔境だと言われている。例え中に入れたとしても、魔物が跋扈ばっこする世界だと言われている。そんな場所で君は生活しているというのか……」

 えっ、魔境?魔物が跋扈する?
 モンスターらしき生物はいたけど、ヴェインさんが驚くほどでは無かった気がするし……。もしかして、千歌子ちゃんがミスって、別の場所に飛ばされたのかな?
 う~ん、謎だわ。
 
「えっと、私をここに飛ばした人は、私を魔の森に捨てるって言ってたんですけど……、ここは魔の森じゃない別の場所なのかな?」

「えっ?魔の森に捨てる?飛ばされる?ちょっと待って、シズ。どういうことだ?」

 えっ?なんでそんな怖い顔をするんですかヴェインさん?それに、アーくんもなんでそんな顔するの?
 
「あの……?」

「どうして君みたいな幼い女の子が魔の森に捨てられるなんてことになるんだ!しかも飛ばされたって!何か?シズは、たった一人でこの場所に転移させられて、今まで暮らしてきたっていうのか?」

 ヴェインさんの剣幕にちょっと仰け反りつつも、恐恐と頷いた。
 
「くそっ!なんてことだ!!シズ、今までよく一人で頑張ったね。これからは俺たちがいるからな!」

「えっ?」

「酷い人間もいるもんだ。だが、安心しろ。俺たちが、シズを守るから安心しろ」

 この人は何を言っているんだろう?一人で頑張った?それって普通のことでしょ?
 困惑して、アーくんを見ると彼も痛ましそうに私を見て頷いていた。
 
 何これ、どうして?一人でいるのは普通で、頑張るもなにもないよ……。
 だけど、父さんがいなくなってからたった一人で生きていた私には、ヴェインさんの言葉は何故か心に響いていた。
 よく分からないけど、喉の奥が詰まったみたいに苦しくって、前がよく見えない。
 目の前にいる、ヴェインさんとアーくんが何故か歪んで見えた。
 不思議に思って瞬くと、温かい何かが頬を伝っていった。
 
 あぁ、私泣いてるんだ。でも、どうしてだろう?
 そっか、私誰かにそう言ってもらいたかったのかな?父さんも母さんもいない。たった一人で生きている私のこと、誰かに認めてもらいたかったんだ。頑張ってるって……。
 そっか、そうだったんだ。
 
 私は、決壊したように涙を流して声を上げて泣いていた。
 だけど、ヴェインさんはそんな私の肩を包み込むようにそっと抱いて、優しく頭を撫でてくれた。
 アーくんは、ぶっきらぼうにだけど私の涙を拭ってくれた。
 
 子供のように泣きじゃくる私を、ただただ優しく接してくれるヴェインさんと、不器用に慰めようとしてくれるアーくんの存在に私は救われた気がしていた。
 出会ってまだ二日目で、最悪な出会いをしたにもかかわらずだ。
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