[完結]“引き籠もりの悪女”と言われ追放された公爵令嬢、実は最強の軍師でした!

青空一夏

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3 影の軍師

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 《シルヴィア12歳》

 ここはアルストレイン公爵家のシルヴィアの私室である。
 大きな執務机の上には、手のひらほどの木製の兵士の人形が並べられていた。歩兵の部隊が整列し、その後ろには騎兵の隊列。弓兵は丘の上に配置され、魔導兵が中央に立っている。

 12歳になったシルヴィアは静かに『戦律の書』を開き、先人の軍略を目で追いながら、繊細な指先でひとつずつ兵士の人形を動かした。

 「敵が森を利用して奇襲を仕掛けてきた場合……前線を展開するのは危険ね」
 
 彼女は歩兵の隊列を後方に下げ、代わりに騎兵の部隊を二手に分ける。

 「左右からの包囲戦に持ち込むなら、弓兵は丘の上ではなく……」
 
 彼女は弓兵の人形をひとつ、低い丘の陰へと移動させた。
 戦場では風向き、地形、陽の傾きまで計算に入れなければならない。

「奇襲部隊が弓の射程に入る直前、騎兵が側面を突けば……」
 
 彼女の金色の瞳が鋭く光った。人形の配置が決まり、戦場の縮図が完成する。

「ふふっ……悪くない。」
 彼女は人形を眺めながら、にっこりと微笑んだ。

 この瞬間、シルヴィアの脳内ではすでに、100を超える戦術が描かれている。
 戦場に出るまでもなく、完璧に戦略を練り上げ、いかにして戦果をあげられるかを緻密に考えることができるのだ。
 
 まもなく、父がシルヴィアの部屋を訪れ、彼女に作戦を説明させた。今回は、チアーズ王国との戦において使用される作戦である。シルヴィアは、ルドヴィクから求められた軍の動かし方や陣形を、冷静かつ的確に披露した。
 
「なるほど、なかなか良いぞ。このエグリス王国では女性は家庭を守り、軍や政治に関わるなどご法度だ。つまり、お前の才能はなのだよ。ゆえに、私がこうして有効利用してやっておるが……このことは誰にも言ってはならんぞ」

 8歳の頃、父はシルヴィアに『手伝っておくれ』と頼んだ。シルヴィアは『役に立つ子』とも言われ、必要とされたことが嬉しかった。しかし、今では、以前喜んでいた言葉とは裏腹に、を言われることが増えていた。

 ――『』……この才能は女の私が持っていては、いけないものなの?
 
 シルヴィアの心に、言葉では言い表せない虚しさが、次第に積もり始めていた。


 ルドヴィクはアルストレイン公爵家の当主でありながら、軍事面では目立った手柄を挙げることなく、凡庸な存在であった。
 しかし、シルヴィアの非凡な才能を早くに見抜き、彼女を影の軍師として裏で支配し、自身はその手柄を横取りする形で名声を得て、今では王家の軍師として名をあげていた。
 このことを他人に知られてはならないと思ったルドヴィクは、何度もシルヴィアに念を押す。
 
「このことは誰にも言ってはならんぞ」と。

 
 一方、王宮の広間では――


 •───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
 次話、エグリス王国の王太子レオナルトsideのお話しになりますよ(^^)
 エグリス王国はシルヴィアが住んでいる国名ですよ。
 

 宣伝:「狂愛ショートショート集」も投稿しています。こちらは一話完結の2,000文字程度のお話しの寄せ集めになります。狂愛以外のお話しも途中混ざるかも💦

 暇つぶしにサクッと読んでいただける短さです! 
 読んでいただけると嬉しいです(^^)
 
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