恋の代役、おことわり!

ichigo/小日向江麻

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1巻

1-3

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 グラスを口に運びながら頷く。陽希も芳賀くんもクラスで目立つ存在だったけど、グループが違ったので、話しているところはあまり見たことがなかった。
 クラスでも発言の少ないわたしも、もちろんそう。

「っていうより、高校のメンツと飲みに行くこと自体、あんまりないかも」
「そうなの?」
「うん――」

 彼はそう答えつつ、手にしていたグラスをあおってから、すこし寂しそうに続けた。

「大学の友達ともごくたまに、かな。土日も仕事で時間作れなかったりするから、歯がゆい思いもするんだけど……まあ仕方ないよな」
「その……そんなにハードなんだね、仕事」
「ん、昼間は外回りで、それが終わったら会社に戻って書類仕事だからな。すっかり仕事人間って感じ」
「ちゃんと休めてるの?」
「休めるときは。普段できない家のこととかやって終わる日もあるけど」
「そっか。でもすこしでも休めてるならよかった」
『仕事が忙しいのにわざわざ時間作ってくれてるの知ってるから、今さら断り辛いんだもん』

 なるほど、陽希がそう言っていた理由がわかった気がする。
 忙しさに追われる彼がせっかく確保してくれた時間を、「やっぱり無理です」なんてアッサリ断るのは、さすがに申し訳なさすぎる。

「平野のとこはどう?」
「あたしは……」

 自分の職場のことが脳裏のうりに浮かぶ。
 最近よく見掛けるオシャレで可愛い雰囲気の『フラワーショップ』ではなく、完全地域密着型の『花屋』。店頭は飾り気のないガラス張りで、生花保存用の冷蔵庫がガッツリ丸見えの、ひたすら地味じみな花屋がわたしの職場だ。
 お客さんは顔見知りの人たちばかりだし、無茶な注文もほとんどないから、忙しさとは無縁。店番も一日の大部分をひとりで任されていて、気楽に働ける。
 いて言えば、お客さんの多い日は立ちっぱなしだから、足腰が辛いときもあるけど――芳賀くんの激務と比べてしまうにはあまりに申し訳ない。

「ま、まあまあかな。たまに休日出勤もあるけど、そんなに多くはないし」

 わたしは頭の中にある花屋の光景をき消しつつ、陽希のスケジュールを思い返して答えた。
 忙しい時期もあるけれど、ちゃっかりと自分の時間を確保しているように見受けられる。今日みたいに、好きなバンドのライブに行ったりとか、こんな風に誰かと飲みに行く約束をしたりとか。

「お互い大変だな」
「あたしは、芳賀くんほどじゃないけど」
「そんなことないだろ」

 芳賀くんがくくっと喉をならして笑う。

「――そういえばさ」

 話題を切り替えるように、彼が声の調子を上げた。

「う、うん」

 答えながら、わたしは再びグラスを口元に運んだ。緊張のせいか、何だか今日はやけに喉が渇く。

「平野って、確か妹いたよな?」
「っ!」

 口に含んでいたカシスオレンジを吐き出しそうになったけれど、こらえた。その代わり、お酒が変なところに入ってしまったらしく、咳き込んでしまう。

「おい、大丈夫か?」

 彼は店員さんを呼んでおしぼりを頼み、むせるわたしに差し出してくれた。

「ごほっ……あ、ありがとうっ……」
「いや、それはいいんだけど」

 一通り落ち着いたところで、再び芳賀くんがたずねてくる。

「同じクラスでさ――妹の名前、何だっけ?」
「……那月っていうんだけど」
「ああ、そうだよな。懐かしい」

 そしてわたしの名前を聞いた瞬間、納得したように一度うなずいてから笑った。

「『平野』って呼び掛けると、両方同時に振り向いたりしたよな」
「そうそう」

 よく似た『平野さん』がクラスにふたりいるのは、さぞかしややこしかったろう。
 とはいえ、先生や一部の仲のいいクラスメートは、わたしたちのことを『陽希』『那月』と呼び分けていたから、そこまで不便ではなかったのだけど。
 あまり縁がなかったとはいえ、わたしの名前くらいは覚えていてくれているかな、と期待していたのだけど、やはりそんなことはなかったか。ちょっとガッカリだ。

「妹は元気?」
「うん、元気にしてるよ」

 たった今、こうして会話を交わしながらお酒を飲んでいるのがその那月のほうだなんて知ったら、芳賀くんはどう思うだろう。
 わたしは内心でそんなことを考えながら、何食わぬ顔で答える。

「そっか」

 芳賀くんは視線をちょっと遠くにやると、昔を懐かしむように笑った。

「しかし、平野たちほど名はたいを表してるのも珍しいよな」
「え?」
「陽希に那月。太陽と月ってことだろ。陽希はけっこうにぎやかにしてた印象だけど、那月は大人しかったもんな」
「……」

 彼が放った言葉に、わたしは口を閉ざしてしまう。
 わかってる。きっと芳賀くんに悪気なんてないってことは。
 でも――

『那月ちゃんと陽希ちゃんて、全然似てないね』

 幼稚園、小学校、中学校、高校。どの時代の知り合いにも、必ず言われてきた言葉だ。
 そしてその知り合いは、最後に必ずこう付け足す――『顔はこんなにそっくりなのにね』と。
 わたしと陽希は、似ているようで全く似ていない。それはまるでついを成す太陽と月のように。
 自ら光を発して輝ける太陽と、何かの光を受けずには輝くことのできない月。
 ふたつを比較するたび、わたしは陽希に助けられている存在だと意識せずにはいられなくなる。

「平野?」

 呼び掛けられて、自分がうつむいていたことに気付く。

「あ、ごめんっ」

 悟られないようにパッと顔を上げた。
 ……今はそんなことを気にして、暗くなってる場合じゃない。

「今日の平野、こないだ会ったときと雰囲気違う感じ」

 芳賀くんが何の気なしに放った一言に、背筋がヒヤリとする。

「……そう? そんなことないけど」
「妙に静かだし、口数も少ない気がして」

 ……もしかして、もう怪しまれてるんだろうか?
 いやいや。こんなときほど、堂々としていないと!

「えー、変かな?」
「いや。面白い」

 内心はビクビクだけど、外には出さないように頑張る。そんなわたしの顔を見て、芳賀くんがおかしそうに笑った。

「やっぱり、時間が経つと変わるもんだな。高校のときもそうだけど、もっとうるさくて豪快なイメージあった」
「あはは」

 内心でホッと胸をなで下ろしつつ、ごまかすみたいに笑う。
 とにかくバレてはいないようだし、悪い感情も持たれていないようだ。……よかった。
 芳賀くんオススメのガーリックシュリンプやハワイアンスペアリブに舌鼓したつづみを打って、お酒も何杯か頂くころには、この特殊な環境にも慣れてきていた。
 目の前にはあこがれの芳賀くん。美味おいしいお酒と料理。高校時代の思い出話。
 ときには回答に詰まることもあるけど、わたしはこの時間を楽しみはじめていた。
 大学を卒業して、社会人になって、自信がつきはじめたのか高校時代よりももっとキラキラしている彼の姿をこんなに近くで眺めることができるなんて……やっぱり嬉しい。

「平野」
「うん?」

 この時間がずっと続けばいいのに――なんて、頭の片隅でベタな恋愛小説の一節のようなことを考えていると、おもむろに彼が呼び掛けてくる。

「そっち、行ってもいい?」

 ――そっち、とわたし側のベンチを指して、彼が言う。

「えっ、あっ……」

 彼がこっちに来るということは、わたしと横並びに座るということだ。

「嫌?」
「あの、嫌じゃないけど」
「じゃあ、そっち行くわ」

 芳賀くんは立ち上がると、困惑気味のわたしの右どなりに来て、そこに腰掛ける。
 ……えっと、これは、どういう状況?

「平野」
「あっ、はいっ」

 右耳に注ぎ込まれるような彼の声にドキッとして、身体ごとそちらを向く。

「っ……!」

 お店のベンチは、大人がふたりおさまると窮屈きゅうくつに感じるくらいの大きさだ。
 向かい合わせに座っていたときとは距離感が全然違う。芳賀くんの顔が、十五センチくらいの近さにあった。

「……そろそろ、素直になってもらっていい?」
「えっ? ――!」

 彼は微笑を浮かべながらそうたずねる。と同時に、左のわき腹に何かが触れる感触。
 そこでわたしは、彼が腰に手を回したのだと気が付いた。

「高校のころ、そこまで仲良くなかったのに、急に俺のこと誘ってきたのは……何で?」
「な、何でって」

 芳賀くんの手が、ワンピースの生地の上をすべり、わずかに上昇していく。
 え、何? これって、どういう状況?
 彼の顔を見つめて言葉を探すけど、ふさわしい言葉が浮かんでこない。
 芳賀くんは、微笑を顔に貼り付けたまま、ささやくようにして続けた。

「――俺に興味があるからでしょ?」

 ゆっくり、ゆっくり。わき腹に置いていた手が、わたしの腕を通り、肩を通り、後頭部に辿り着く。

「まどろっこしいのはやめだ。平野の気持ち、正直に教えて」
「あっ……!」
「態度でも、いいけど」

 わたしの後頭部にある手に、力が入った。彼のほうへと引き寄せられる。
 否応なしに彼の顔が近づいてきて――
 こ、これっ、これって……!
 芳賀くんがわたしに、キッ、キスしようとしてるってこと!?
 そんな――わたし、キスなんてしたことないしっ。そもそも、わたしは陽希じゃなくて那月だから、芳賀くんは勘違いしてるわけでっ!
 というか、芳賀くんてこういう人だったの!?
 告白もしてない、初めて飲みに行った女の子と簡単にキスできちゃうような、軽薄でプレイボーイなタイプっていうか。
 昔はさわやかで歳の割に誠実そうで、好青年って感じだったのに。わたしが彼に感じていたまばゆさは、キラキラじゃなくてギラギラだったっていうの?
 彼の唇が迫って来るわずかな瞬間に、様々な感情が交錯こうさくする。

「ご、ごめんなさいっ!」

 わたしは混乱の中、精神力を振り絞り、自分と彼との唇の間に、まるで三猿さんざるの『言わザル』のようなポーズで手を挟んだ。

「えっと、あのっ……勘違いさせてしまったなら、ごめんなさいっ。陽希は――いや、あたしは、全然、そういうつもりで誘ったわけじゃなくてっ。ただ、同窓会で会ったときに、話が弾んで、もっとお互いの仕事の話ができたらなって思っただけ、だったのっ」

 陽希にそういうつもりがないというのは、わたしがよくわかっている。彼と目線を合わせないように左斜め上の壁を見ながら、まくし立てた。

「は、芳賀くんは素敵だし、もちろん男性としても魅力を感じる人だけどっ……その、今日のところは、そういうつもりはなかったからっ。だから、ごめんなさいっ!」

 この状況をどうにか収めるには、とにかく謝るしかない、と思った。
 経験豊富な陽希なら、もっと角の立たない、上手い方法を知っているんだろうけど、男の人との接し方がわかっていないわたしには、これが精いっぱいだったのだ。
 慌ただしく謝罪の言葉を述べたあと、芳賀くんが「期待させやがって」なんて怒り出したりはしないか、とか、強引に押し切られてしまうんじゃないか、という不安がよぎる。
 おそるおそる彼の顔に焦点を合わせると――彼はきょとんとした目をしていた。
 そして、くすくすとおかしそうに笑いだす。間に挟んだ手のひらに、彼の温かな呼気がかかる。

「いや、こっちこそ――悪かった」

 彼はひとしきり笑うと、そう口を開いた。

「確かに平野は、男の友達多かったもんな。そういうヤツだったってこと、忘れてた」
「……勘違いさせて、ごめんなさい」
「いや、こっちも勘違いしてた。ついでに言うと、もし平野が俺の誘いにノッてくるようだったら、もう帰ろうって思ってた」
「……?」

 意味がわからない。
 困惑しているわたしに対し、彼は安堵したようなため息をひとつつくと、立ち上がって向かい側の席に戻った。
 そして、飲み掛けだった本日三杯目のビールに口を付けてから、「だから」と切り出す。

「今の会社に入ってから、急に近寄って来る女の子が増えたんだよな。学生のころは見向きもしなかったようなヤツでも、社名にかれて興味持たれることが増えたっていうか」
「はぁ……」
「そういうのって、結構えるんだよ。俺っていう人間よりも、俺が働いてる会社のほうに興味がいくんだなって思うとさ。近寄って来る女の子のこと、信用できなくなっちゃって。平野だって、高校時代は俺にあまり話し掛けてこなかったのに、同窓会で会ったら、いきなり『今度ふたりで飲みに行こう』だろ」

 つまり芳賀くんは、陽希が彼の社名に惹かれて飲みに行きたがっていたと思っていたのか。社名に惹かれたと言えばそうではあるけど、陽希の場合はちょっと意味合いは違う。それこそ『そこに勤める男性』ではなく『その会社』が気になっているのだから。
 とはいえ彼に、そんな事情はわからない。だから寄ってくる女の子を敬遠するために、さっきみたいなわかりやすい誘い水で反応を見たってことだ。

「でもだからって……こんなの、びっくりするよ。一瞬、どう反応していいかわからなかったし」

 わたしが男の人に免疫めんえきがなさすぎるというのが一番の原因ではあるけれど。
 想定外の出来事で動揺してしまい、つい、彼をなじるような言葉を吐いてしまう。

「うん、だから悪かった。平野なら、笑ってかわしてくれるかな、と思ったんだけど……まさかこんなに真剣に謝って来るとは思わなくて、悪いなって思ったよ。本当にごめん」

 言葉の初めは笑みを含んでいたけれど、芳賀くんの口調が徐々に深刻さを帯びたものに変わっていく。「ごめん」と言いながら、彼はしっかりとわたしに頭を下げた。

「キスするつもりはなかったけど、フリだけでもそういうことされると、ビックリするよな。それは本当に悪かった」
「え、いいよそんなっ……」

 頭を下げ続ける芳賀くんを前に、わたわたしてしまう。

「別に謝ってほしいとか思ったわけじゃなくて。ただ、その……おどろいちゃっただけなの。だから、顔上げて」
「本当?」
「本当、本当」

 わたしが力強くうなずくと、彼がようやく顔を上げる。

「……ありがとう」

 芳賀くんはそう言って、小さく笑った。
 その言葉に、わたしの意識は高校三年生の冬の保健室に引き戻される。

『……平野。本当に、ありがとう』

 具合が悪い芳賀くんに肩を貸したあの日、保健室のベッドの上で聞いた彼の声と重なった気がした。
 社会人になり、彼は変わってしまったかもしれない――なんて、そんなの思い過ごしだった。
 芳賀くんは芳賀くんらしさを残したまま、素敵な男性になっていたのだから。

「――飲みなおそうか」
「うん」

 わたしは笑顔で頷きながら、夢の時間の続きを楽しんだのだった。



   3


「すっかり遅くなっちゃったな」

 お店を出て、待ち合わせをした駅前の噴水あたりに差し掛かったところで、芳賀くんが言った。

「うん。こんな時間になってるなんて、全然気が付かなくて」
「けっこう、昔の話題で盛り上がったもんな」
「そうだね」

 わたしはうなずきながら、思い出し笑いをこぼした。
 担任だった先生やクラスメートたちが今どうしてるとか、当時流行はやってたものの話とか。
 他愛ない内容だったけど、だからこそ永遠に話していられそうなほど、話題は尽きない。
 時を忘れるくらいに楽しむ、なんて経験は、本当に久しぶりだった。
 特に働きはじめてからは、休日はひとりの時間を淡々と過ごすことが多かったからなおさらだ。こんな風に誰かとのおしゃべりに明け暮れるなんて、めったにない機会で、新鮮な気持ちになる。
 ……それも、高校時代のあこがれだった芳賀くんと、なんて。

「平野」

 改札に入ろうとするわたしを、彼が呼び止めた。

「何?」

 足を止めて振り返る。

「あのさ――さっき、あんなことした手前、言い辛かったりするんだけど」

 きまり悪そうに頭をきつつ、彼が重たい口調で言う。
 あんなこと――とは、彼がわたしにキスする素振りを見せたことだと、何となくわかった。そのまま、言葉の続きを待つ。

「今日、本当に楽しかった。リフレッシュできたって感じだった。……平野は?」
「え?」
「平野はどうだった? 俺と過ごして、楽しかった?」

 終電の時間が近づき、足早にホームへと向かう足音がいくつか横を通りすぎていく中、彼の声がクリアに響く。

「わた――あたしも、楽しかったよ。すごく」

 素直な感情を、率直に伝えた。
 もう二度と、こうして芳賀くんと会う機会なんてないのだろう。でもだからこそ、『陽希』としてではなく『那月』としての感想を伝えたくて。

「よかった」

 彼はわたしの答えを聞くと、目を細めて笑った。それから。

「――じゃあ、スマホ直ったらまた誘って」
「え?」
「また一緒に飲もう。社交辞令じゃなくて、絶対に誘えよ。……いいだろ?」
「えっ――あのっ」

 ――誘う? わたしが?
 おどろいていると、彼は返事を催促さいそくするように軽く首を傾げる。

「『うん』って言ってくれないと、帰れないんだけど」
「あっ、あのっ……はいっ」

 おどけて言う彼に、勢いで返事をしてしまう。

「よかった」

 わたしの返事を聞き届けた彼は、安心した様子で言い、改札を挟んで反対側のほうへと足を向けた。

「俺、こっちだから。じゃあな、気を付けて」

 彼はひらりと手を振ると、振り返らずに歩いて行ってしまった。

「……」

 全く予想していなかった展開に言葉を失い、すこしの間、その場に立ち尽くしていた。
 けれど、終電の到着を知らせるアナウンスが流れたことで我に返り、駆け足でホームへと向かう。
 また誘う? 芳賀くんを?
 わたしが、また彼を誘っていいの? ……本当に?
 ホームへ向かうエスカレーターを駆け上がりながら、わたしの頭の中で、彼のセリフがぐるぐるとうずを巻いていた。


 ――午後十一時四十五分。
 本日も残り十五分、というところで自宅前に到着したわたしは、おそらく寝ているだろう両親を起こさないように静かに鍵を開けて、家に入った。
 ヒールの高いパンプスを脱ぐと、足の裏全体を心地よい解放感が包む。俄然がぜん歩きやすくなった足で、そろそろと二階にある自分の部屋に向かう。
 慎重に階段を上り終えて、音を立てずに自室の扉を開ける。電気を点けて、トートバッグを下ろそうとしたとき、

「おかえり♪」

 ぽん、と後ろから肩を叩かれた。振り向くと、ピンク地に白いドット柄のパジャマを着た陽希が、満面の笑みで立っていた。

「お疲れさま~。今日は本当にありがとうねえ、那月ちゃん」
「ううん、別に」
「ささ、こっちにお茶用意してますんで! 立ち話も何だし、あたしの部屋で今日のこと、聞かせてくれる~?」
「……はいはい、わかりましたっと」

 わたしは自分の部屋着を腕に掛けると、陽希に続いて彼女の部屋に向かった。

「疲れたでしょ~。『帰る』ってメールもらった時間から計算して、那月の好きな紅茶、れといたんだぁ」
「ありがと」

 部屋に入ると、甘ずっぱい果実のいい香りがただよっていた。
 わたしが気に入ってよく飲んでいる、ラズベリーのフレーバーティ。自分の代わりに飲みに行った妹をねぎらうために、帰宅の時間に合わせてれておいてくれたらしい。
 陽希にしては気の利くサプライズだ。

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