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気がつけば異世界
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俺の名前は真田かおす、24歳サラリーマンだ。
かおすは混沌じゃなくて火於須だ。
俺の親は馬鹿だが今はこの名前も割りと気に入っている。
趣味は模型作り、もちろん彼女はいない。
掲示板などで妻に模型を捨てられた人とか見ると、結婚に絶望しか見いだせない。
模型製作は戦車でもロボでもなんでもござれなのだが、特に好きなのがガンブレイブのプラモデルだ。
他の模型はガンブレイブをうまく作るためのトレーニングの為に作っているだけで特に好きとか言うわけではない。
しかし、社会人になってからプラモデルひとつ作る時間さえなくなった。
積みプラが増える一方だ。
最近は異なるプラモデルのパーツを合わせて一つにする、ミキシングビルドと言う製作方法にハマっている。
フルスクラッチモデラーやセミスクラッチモデラーからは格下扱いされるけど、現代の忙しい社会人にはちょうど良い趣味なのだ。
今日はHRGガンブレイブの店頭限定販売の日だ、しかも平日秋葉原店舗限定!
頭にウジでも湧いてるんだろうか?
それとも、癒着か? 袖の下もらってんのか?
平日に販売するなよ、社会人は気軽に休めないんだぜ?
まあ、もちろん会社休みましたよ、有給とれるホワイト企業最高!
嘘です、親戚の叔母さんごめんなさい今日があなたの命日です。
うちは親戚多いからまだ残弾数はある。
殺ってやるガンブレイブの為なら親戚くらい、いくらでも殺ってやるさ!
後で叔母さんに東京銘菓カラーひよこでも送っておこう。
この店の唯一の神対応は、9時前に場所取り禁止にもかかわらず並んでた連中に引換券渡さなかったのはマジ神でした。
俺ですか? ちゃんと9時にならびましたよ、そして限定ガンブレイブをゲット! 俺はガンブレイブをこれ見よがしに空高くかかげた。
”ブスッ”
鈍い音と共に正面から女性がぶつかってきた。
その衝撃でガンブレイブを地面に落としてしまった。
ああ、箱も価値があるのにイラスト面から地面に落としてしまった。
食パンのバターを塗った面を床に落とした気分だ、三秒ルールは使えない。
女は俺の落としたガンダロンを拾うと脇目も振らず走り出した。
ちょ、まてよ。プラモ泥棒だと?
追いかけようと立ち上がろうとするが力が入らない、苦しい、息が出来ない。
よく見と、俺の鳩尾の少し下にはナイフの柄が生えていて服が瞬く間に朱に染まる。
周囲に悲鳴が響き渡った。
さっきの女はプラモデルごときで殺人を犯したのか?
いや、このプラモはそれだけの価値がある、その気持ち分からなくもないぜ。
だが……。
そりゃないぜセニョリータ!
意識が朦朧としてくる、これが死と言うものなのか、まだ大量の積みプラモがあるって言うのに、こんなところで死ぬのか。
神様できるなら次の人生も模型製作できますように、俺は目を閉じ意識を手放した。
深い深い闇が俺を包む。
なにも聞こえずなにも見えない。
これが死というものなのか。
だが暫くすると周りが騒がしくなった、金縛りの時に聞こえるノイズのような雑音ではなく人の声や歩く音がだ。
……静かに死なせてくれ。
「おい! あんちゃん、こんなところに寝られたら邪魔だよ!」
ドスの効いた声が誰かに邪魔だと怒鳴る声で俺の鼓膜が揺れる。しかし邪魔になるように寝転がるなんてとんでもない奴だ。
俺は常識のないそいつに自分の死を棚に上げ憤慨する。
「なんだ、行き倒れか?」
俺は強い力で起き上がらせられると往復ビンタを食らった。
「痛ぁぁぁあ!!」
叩かれた痛みで、俺は再び目を開ける、そこにはモヒカンのヒャッハァーがいた。
「なんだ、生きてるじゃねぇか」
俺を小脇に抱えると道の端に移動させ一枚のコインを投げてよこした。
「これで飯でも食いな」
そう言い残し、振り向きもせず足早に立ち去ってしまった。
「いや、怪我してるんで病院……」
あれ? 苦しくないし血も出てない、何よりナイフが胸に刺さってないぞ。
よく見ると、服がカジュアルな服装から、まるで袋に穴を開けたようなズタ袋みたいなものになってる。
周りはとても秋葉原とは言えない石畳に中世風の建築物、そして頭に獣耳をつけてる人にハ虫類人。
なんだこれ、これが死ぬ前に見る走馬灯?
いや、走馬灯は今までの人生を瞬間で見るものだから違うか白昼夢?
なんにせよ夢か、死ぬ前にこんな夢見るとかアホだな俺。
だが待てども暮らせど目が覚めることもなく死ぬこともなかった。
そして、頬をなでる風や鼻を突く悪臭がこれがリアルなのだと認識させた。まさか異世界とか言うやつか?
建物を眺めるていると、右端でチカチカ光ってるアイコンに気がついた。
それは封書の形でどう見てもメールマークにしか見えなかった。
恐る恐る空中に映るそれをタップするとメールマークは展開して目の前に文書が現れた。
文字は日本語だ、映像なのにわざわざご丁寧に紙の上にに書かれている。
そのせいで俺の視覚は塞がれてしまって周りが見えない。
◆◇◆◇◆
突然の事で驚かれたことでしょう。
あなは死にました、しかし精神をこちらの世界に持ってきて、私が再構築した肉体に入ってもらいました、性能は前の肉体と完全に同じですので、あまり無茶はしないでくださいね。
さて、貴方を助けた理由ですが、ガンブレイブを愛する同好の士だからです、魔王を倒してくれとか、世界を救ってくれとかはありません、そもそもたいした力は与えていませんから。
あとサービスとして第五次ガンブレイブ大戦と対戦型オンラインゲームのガンブレイブオンラインのインターフェースをつけておきました、それとお金1000Gと短剣もつけておきました活用してください。
では、大変だと思いますが頑張って生きてくださいね。
by 革命戦士ガンブレイブ、ズオン公国派の女神クトリスより
◆◇◆◇◆
読み終わるとボンッと言う音と共に手紙は消え失せ、インターフェースが現れた。
うあ、じゃまくせぇ。
その言葉に呼応するように、インターフェースは掻き消えた。
あ、消えんなよ、邪魔じゃないから現れて! その願いに呼応するように再びインターフェースが現れた。
インターフェースは自分の意思で出したり消したり出来るようだ。
インターフェースの見た目は女神様が言うようにガンブレイブオンラインの物だ。
ただし見慣れないボタンがいくつかある。それを押すと第五次ガンブレイブ大戦のマップがあらわれた。
それは、左半分の画面を使い、自分を俯瞰できるマップであった。
リアルタイムに俯瞰で見えるってある意味チートだな。
しかし、この押す動作って不便だなインターフェイスと同じように思っただけで操作できないものかと思案してみる。
画面を切り替えボタンを押す動作をイメージしてみると、左の俯瞰マップが消え最初のインターフェースに戻った。
どうやらすべて意志で操作できるようだ。
右側のボタン類を見ると。
PT編成
模型製作
従属体
素材一覧
アイテム
所持金 1100G
と出ていた。
あのモヒカン100Gもくれたのかよ。俺は手元のコインを見て銀貨なのに気が付きGがゴールドの意味じゃないことに気が付いた。
それはさて置き、まずはこいつの操作だ。知らないボタン名だけど、取り敢えず上から押していくか。
PT編成
ボタンを選んだが選択できない、念のため手でも押したが反応しない。仲間がいないんだから当然か。
能力数値
それを選択すると画面上に色々な数値が飛び出した。
名前:カオス
LV1
Age:24
職業:造型師
HP10
MP5
力:8
速:3
知:15
技:5
運:1
基本技能
特殊技能
個人技能
・部位交換
うあ、俺のステータス低すぎ! 俺は口許を押さえて驚愕した。
基本技能、特殊技能という項目はあるがスキル自体が無い。この二つがどんな能力かは知らないが無いと言うのは無能な証なのは間違いない。
唯一の救いは個人技能の部位交換だろう。
職業は造型師とか俺好みの職業だ。模型好きの俺に、この世界でも作れるよう配慮してくれたのだろうか。
女神様には感謝だな。
模型製作のボタンを押すと目の前に選択肢がでた。
"人間をやめる?"
yes/no
そこに現れたのは到底受け入れられない選択だった。
やめませんよ? なにこれ怖い!
人間やめないと模型ひとつ作れないの? 意味がわからないよ。
俺はそれをスルーして次の従属体を押した。
"部位交換が解放されていないため使えません"
次の素材一覧を押した。
"部位交換が解放されていないため使えません"
くっそ! どれだけ俺に人間やめさせたいんだよ! 次だ! 次だ!
俺はすべてのボタンが意味をなさないことにいら立ちながらアイテムボタンを押した。
ベルト×1
鞘付き短剣×1
クソ! 分かってたよ!
俺は短剣を取り出し腰に巻いた。
取り合えず現状確認だ。
ここは異世界ということで間違いないだろう、今いる町は比較的安全な街という認識で良いだろう。念のためマップを開き現在位置を確認する。
そのまま広範囲モードに切り替えると。国の名前はグランヘイムで超大陸の一国家なのが見て取れた。
マップには赤い光点がたくさんある。よく見ると魔物なのが分かった。そして町の中には緑の光点がたくさんある。この赤い光点がモンスターで緑色が人間ということらしい。
そういえば俺の強さはどの位なんだろう?
女神様は前の世界と変わらない強さと言ってたけど、こちらの強さの基準がわからないとな。
無理をするなと言ってたから強くはないんだろうけど……。
周りの人の数値見れないかなと思い、近くにいる露店商の親父をじっと見ると大量の文字が現れた。
名前:ジュニアレス
LV56
Age:35
職業:商人 元王国騎士団長
HP569
MP128
力:1200
速:720
知:860
技:960
運:120
基本技能
剣術:S級
盾術:S級
槍術:A級
弓術:A級
馬術:A級
聖魔法:B級
話術:C級
鑑定:B級
特殊技能
聖王国の加護
(騎士の仲間が多いほどステータス補正がある。)
個人技能
強面
あかん、あれはあかん。
数値の基準がわからない俺でも分かる。
あのおっさんは規格外だ。
なんだよ元王国騎士団長って、そんなの強いに決まってんだろ!
他のサンプルを探すべく、近くにいた子供を見た。
名前:ゴリアテ
LV1
Age:9
職業:子供
HP24
MP12
力:12
速:13
知:1
技:2
運:8
基本技能
剣術:E級
特殊技能
個人技能
ぐっ、嘘だろ。こんな子供に負けるというのか。
こんな年端もいかない子供にさえ及ばない俺の力って……。
俺はこの世界だとかなり弱いってわけだ。
よし、無謀な冒険はしないことにしよう。質実剛健、人間万事塞翁が馬だ、田舎の台所にはカマドウマだ。
だいたい子供に劣るステータスでどうしろと言うのか。良くもなく悪くもなく生きていくしかないじゃない。
俺は自分の力のなさにため息をつき、屋台を眺める。
貨幣価値はどの位なんだろうか?
ちょうど元王国騎士団長の露店が果物売ってるから、なにか買ってみるか。
第一異世界人がポンと100Gくれたくらいだから、1食分として100Gは千円位の価値だろうか?
恐る恐る果物屋の前に行き、リンゴについてる値札を見ると、1個2Gと書いてある。とすると1Gは70円位かな。
ええ! あのモヒカン7千~1万位の金額くれたの?
「にいちゃん、買ってくかい」
強面の元王国騎士団長の店主が話しかけてくる。
言語は分かるし文字も読める、スキルには言語理解のようなものは無かったから最初からそういう風に作られたってことか。
この体自体は異世界で再構成された物のようだしな。
それならせめてステータスも上げて欲しかったけどね。この世界の情報を全部入れておいてくれたら良いのにとも思ったけど、人格形成にか変わりそうだから無理か。
知識が人格を作ると言われてるわけだし、そんな知識があったらもうそれ俺じゃないよな。
おっさんに、この世界の話を聞くために声をかけたがなにも買わない奴に話すことはなにもないと言われた。
情報を聞き出すために少し買うか。
俺はモヒカンからもらった銀貨を一枚出してリンゴを3個購入しようとしたが、そんな大きな金出されてもこまると言われリンゴを100個買わされた。
顔怖いし、仕方ないね。
「すみません、この町で仕事とかありますかね?」
店主はすごい形相でうなって顎にてを当てる。
このおっさん確実に客商売に向いてないと思う。
「兄ちゃんいくつだい」
おいおい、まだ売り付ける気かよ、どんだけ悪どいのよ。
だがしかし俺はノーといえる日本人。
ここはキッパリと断らせていただきます。
「すみません、申し訳ありません。リンゴはもう持てないほど買ったので……」
最後は濁す、これぞ日本人の美しい断り方だ!
いや、だってこの人の顔怖いし、これ以上は無理。
「馬鹿野郎、年齢に決まってんだろ!」
「ヒッ!すみません……24歳です」
「レベルとスキルは?」
「LV1でスキルは……まったく無いです」
それを聞くと、おっさんは再び唸る。
「その年齢だと弟子入りとか無理だし、冒険者の荷物持ち位しかないな」
「荷物持ちって儲かります?」
「儲かるなら、俺がやってる」
「そうですよね……」
俺はリンゴをアイテムボックスにしまった。
それを見たおっさんは驚きの表情を見せる。
「あんちゃん、虚空ボックス持ちなのか?」
「あ、はい」
ドスの効いた声で言われ、ビビって虚空ボックスではないと思うけど返事してしてしまった。
「いいか、これから荷物持ちするならその能力は隠しておけ、LV1じゃ利用されてしゃぶりつくされるぞ」
助言をしてくれるとか、なかなか良いオヤジだな。
なるほど場所を取らない運搬と言うのは、それだけでチートだ。あくどい奴がいたら俺は拘束されかねない。
「わかりました、ありがとうございます」
俺はおっさんに頭を下げるとその場を後にした。
俺はマップに頼らずに冒険者ギルドを探した、マップに頼っていては土地勘が掴めないからな。
町行く人に道を聞いてなんとかたどり着けた。目の前に立つとアルコールの臭いが鼻を突く。
どうやら冒険者ギルドは酒場と併設しているようだ。
扉を開けて中に入ると、強面な連中がギロリと睨む。
この世界強面の奴しかいないのか?
「よう兄ちゃん、なんかようか?」
ガタイの良いおっさんが、酒の臭いをさせて近寄ってくる。
「荷物持ちをしようと思ってギルドに登録に……」
「おお、そうか! ちょうど、うちの荷物持ちが辞めて困ってたんだ。よかったら今日からどうだ?」
おっさんは俺の肩を叩きガハガハ笑う。
今日は登録だけにしようとしたのだが、求められたら断るわけにはいかない。
人脈は宝だ、ここで仲良くなっておけば専属として使ってもらえるかもしれない。
だがおっさんたちは酒飲んでいてフラフラだ。こんな状態でいきなりダンジョン探索とか大丈夫なのか?
それを聞くと魔法で酔いは覚ませるらしく、一気にシャキリとなった。
酔いが覚まされたら行くしかないよね。
俺はおっさんのパーティーにお世話になることにし、おっさんの案内で化粧の濃い受付嬢のところに連れられ冒険者登録書を書かされた。
あっちの清楚な子が良かった。
その子をじっと眺めていたら目が合いニコリと微笑まれた。
ヤバイ可愛い、これは惚れますわ。
登録料もおっさん持ちで登録することができた。
この世界は強面の人が多いけどみんな優しいんだな。
おっさんの名前はカスガン仲間の2人はゲスター、アクロンでこちらも体格が良い山賊なような連中だったが、皆気の良いやつらだった。
そして俺はおっさんのパーティーに加わり、一路、魔窟ドミニティに向かった。
かおすは混沌じゃなくて火於須だ。
俺の親は馬鹿だが今はこの名前も割りと気に入っている。
趣味は模型作り、もちろん彼女はいない。
掲示板などで妻に模型を捨てられた人とか見ると、結婚に絶望しか見いだせない。
模型製作は戦車でもロボでもなんでもござれなのだが、特に好きなのがガンブレイブのプラモデルだ。
他の模型はガンブレイブをうまく作るためのトレーニングの為に作っているだけで特に好きとか言うわけではない。
しかし、社会人になってからプラモデルひとつ作る時間さえなくなった。
積みプラが増える一方だ。
最近は異なるプラモデルのパーツを合わせて一つにする、ミキシングビルドと言う製作方法にハマっている。
フルスクラッチモデラーやセミスクラッチモデラーからは格下扱いされるけど、現代の忙しい社会人にはちょうど良い趣味なのだ。
今日はHRGガンブレイブの店頭限定販売の日だ、しかも平日秋葉原店舗限定!
頭にウジでも湧いてるんだろうか?
それとも、癒着か? 袖の下もらってんのか?
平日に販売するなよ、社会人は気軽に休めないんだぜ?
まあ、もちろん会社休みましたよ、有給とれるホワイト企業最高!
嘘です、親戚の叔母さんごめんなさい今日があなたの命日です。
うちは親戚多いからまだ残弾数はある。
殺ってやるガンブレイブの為なら親戚くらい、いくらでも殺ってやるさ!
後で叔母さんに東京銘菓カラーひよこでも送っておこう。
この店の唯一の神対応は、9時前に場所取り禁止にもかかわらず並んでた連中に引換券渡さなかったのはマジ神でした。
俺ですか? ちゃんと9時にならびましたよ、そして限定ガンブレイブをゲット! 俺はガンブレイブをこれ見よがしに空高くかかげた。
”ブスッ”
鈍い音と共に正面から女性がぶつかってきた。
その衝撃でガンブレイブを地面に落としてしまった。
ああ、箱も価値があるのにイラスト面から地面に落としてしまった。
食パンのバターを塗った面を床に落とした気分だ、三秒ルールは使えない。
女は俺の落としたガンダロンを拾うと脇目も振らず走り出した。
ちょ、まてよ。プラモ泥棒だと?
追いかけようと立ち上がろうとするが力が入らない、苦しい、息が出来ない。
よく見と、俺の鳩尾の少し下にはナイフの柄が生えていて服が瞬く間に朱に染まる。
周囲に悲鳴が響き渡った。
さっきの女はプラモデルごときで殺人を犯したのか?
いや、このプラモはそれだけの価値がある、その気持ち分からなくもないぜ。
だが……。
そりゃないぜセニョリータ!
意識が朦朧としてくる、これが死と言うものなのか、まだ大量の積みプラモがあるって言うのに、こんなところで死ぬのか。
神様できるなら次の人生も模型製作できますように、俺は目を閉じ意識を手放した。
深い深い闇が俺を包む。
なにも聞こえずなにも見えない。
これが死というものなのか。
だが暫くすると周りが騒がしくなった、金縛りの時に聞こえるノイズのような雑音ではなく人の声や歩く音がだ。
……静かに死なせてくれ。
「おい! あんちゃん、こんなところに寝られたら邪魔だよ!」
ドスの効いた声が誰かに邪魔だと怒鳴る声で俺の鼓膜が揺れる。しかし邪魔になるように寝転がるなんてとんでもない奴だ。
俺は常識のないそいつに自分の死を棚に上げ憤慨する。
「なんだ、行き倒れか?」
俺は強い力で起き上がらせられると往復ビンタを食らった。
「痛ぁぁぁあ!!」
叩かれた痛みで、俺は再び目を開ける、そこにはモヒカンのヒャッハァーがいた。
「なんだ、生きてるじゃねぇか」
俺を小脇に抱えると道の端に移動させ一枚のコインを投げてよこした。
「これで飯でも食いな」
そう言い残し、振り向きもせず足早に立ち去ってしまった。
「いや、怪我してるんで病院……」
あれ? 苦しくないし血も出てない、何よりナイフが胸に刺さってないぞ。
よく見ると、服がカジュアルな服装から、まるで袋に穴を開けたようなズタ袋みたいなものになってる。
周りはとても秋葉原とは言えない石畳に中世風の建築物、そして頭に獣耳をつけてる人にハ虫類人。
なんだこれ、これが死ぬ前に見る走馬灯?
いや、走馬灯は今までの人生を瞬間で見るものだから違うか白昼夢?
なんにせよ夢か、死ぬ前にこんな夢見るとかアホだな俺。
だが待てども暮らせど目が覚めることもなく死ぬこともなかった。
そして、頬をなでる風や鼻を突く悪臭がこれがリアルなのだと認識させた。まさか異世界とか言うやつか?
建物を眺めるていると、右端でチカチカ光ってるアイコンに気がついた。
それは封書の形でどう見てもメールマークにしか見えなかった。
恐る恐る空中に映るそれをタップするとメールマークは展開して目の前に文書が現れた。
文字は日本語だ、映像なのにわざわざご丁寧に紙の上にに書かれている。
そのせいで俺の視覚は塞がれてしまって周りが見えない。
◆◇◆◇◆
突然の事で驚かれたことでしょう。
あなは死にました、しかし精神をこちらの世界に持ってきて、私が再構築した肉体に入ってもらいました、性能は前の肉体と完全に同じですので、あまり無茶はしないでくださいね。
さて、貴方を助けた理由ですが、ガンブレイブを愛する同好の士だからです、魔王を倒してくれとか、世界を救ってくれとかはありません、そもそもたいした力は与えていませんから。
あとサービスとして第五次ガンブレイブ大戦と対戦型オンラインゲームのガンブレイブオンラインのインターフェースをつけておきました、それとお金1000Gと短剣もつけておきました活用してください。
では、大変だと思いますが頑張って生きてくださいね。
by 革命戦士ガンブレイブ、ズオン公国派の女神クトリスより
◆◇◆◇◆
読み終わるとボンッと言う音と共に手紙は消え失せ、インターフェースが現れた。
うあ、じゃまくせぇ。
その言葉に呼応するように、インターフェースは掻き消えた。
あ、消えんなよ、邪魔じゃないから現れて! その願いに呼応するように再びインターフェースが現れた。
インターフェースは自分の意思で出したり消したり出来るようだ。
インターフェースの見た目は女神様が言うようにガンブレイブオンラインの物だ。
ただし見慣れないボタンがいくつかある。それを押すと第五次ガンブレイブ大戦のマップがあらわれた。
それは、左半分の画面を使い、自分を俯瞰できるマップであった。
リアルタイムに俯瞰で見えるってある意味チートだな。
しかし、この押す動作って不便だなインターフェイスと同じように思っただけで操作できないものかと思案してみる。
画面を切り替えボタンを押す動作をイメージしてみると、左の俯瞰マップが消え最初のインターフェースに戻った。
どうやらすべて意志で操作できるようだ。
右側のボタン類を見ると。
PT編成
模型製作
従属体
素材一覧
アイテム
所持金 1100G
と出ていた。
あのモヒカン100Gもくれたのかよ。俺は手元のコインを見て銀貨なのに気が付きGがゴールドの意味じゃないことに気が付いた。
それはさて置き、まずはこいつの操作だ。知らないボタン名だけど、取り敢えず上から押していくか。
PT編成
ボタンを選んだが選択できない、念のため手でも押したが反応しない。仲間がいないんだから当然か。
能力数値
それを選択すると画面上に色々な数値が飛び出した。
名前:カオス
LV1
Age:24
職業:造型師
HP10
MP5
力:8
速:3
知:15
技:5
運:1
基本技能
特殊技能
個人技能
・部位交換
うあ、俺のステータス低すぎ! 俺は口許を押さえて驚愕した。
基本技能、特殊技能という項目はあるがスキル自体が無い。この二つがどんな能力かは知らないが無いと言うのは無能な証なのは間違いない。
唯一の救いは個人技能の部位交換だろう。
職業は造型師とか俺好みの職業だ。模型好きの俺に、この世界でも作れるよう配慮してくれたのだろうか。
女神様には感謝だな。
模型製作のボタンを押すと目の前に選択肢がでた。
"人間をやめる?"
yes/no
そこに現れたのは到底受け入れられない選択だった。
やめませんよ? なにこれ怖い!
人間やめないと模型ひとつ作れないの? 意味がわからないよ。
俺はそれをスルーして次の従属体を押した。
"部位交換が解放されていないため使えません"
次の素材一覧を押した。
"部位交換が解放されていないため使えません"
くっそ! どれだけ俺に人間やめさせたいんだよ! 次だ! 次だ!
俺はすべてのボタンが意味をなさないことにいら立ちながらアイテムボタンを押した。
ベルト×1
鞘付き短剣×1
クソ! 分かってたよ!
俺は短剣を取り出し腰に巻いた。
取り合えず現状確認だ。
ここは異世界ということで間違いないだろう、今いる町は比較的安全な街という認識で良いだろう。念のためマップを開き現在位置を確認する。
そのまま広範囲モードに切り替えると。国の名前はグランヘイムで超大陸の一国家なのが見て取れた。
マップには赤い光点がたくさんある。よく見ると魔物なのが分かった。そして町の中には緑の光点がたくさんある。この赤い光点がモンスターで緑色が人間ということらしい。
そういえば俺の強さはどの位なんだろう?
女神様は前の世界と変わらない強さと言ってたけど、こちらの強さの基準がわからないとな。
無理をするなと言ってたから強くはないんだろうけど……。
周りの人の数値見れないかなと思い、近くにいる露店商の親父をじっと見ると大量の文字が現れた。
名前:ジュニアレス
LV56
Age:35
職業:商人 元王国騎士団長
HP569
MP128
力:1200
速:720
知:860
技:960
運:120
基本技能
剣術:S級
盾術:S級
槍術:A級
弓術:A級
馬術:A級
聖魔法:B級
話術:C級
鑑定:B級
特殊技能
聖王国の加護
(騎士の仲間が多いほどステータス補正がある。)
個人技能
強面
あかん、あれはあかん。
数値の基準がわからない俺でも分かる。
あのおっさんは規格外だ。
なんだよ元王国騎士団長って、そんなの強いに決まってんだろ!
他のサンプルを探すべく、近くにいた子供を見た。
名前:ゴリアテ
LV1
Age:9
職業:子供
HP24
MP12
力:12
速:13
知:1
技:2
運:8
基本技能
剣術:E級
特殊技能
個人技能
ぐっ、嘘だろ。こんな子供に負けるというのか。
こんな年端もいかない子供にさえ及ばない俺の力って……。
俺はこの世界だとかなり弱いってわけだ。
よし、無謀な冒険はしないことにしよう。質実剛健、人間万事塞翁が馬だ、田舎の台所にはカマドウマだ。
だいたい子供に劣るステータスでどうしろと言うのか。良くもなく悪くもなく生きていくしかないじゃない。
俺は自分の力のなさにため息をつき、屋台を眺める。
貨幣価値はどの位なんだろうか?
ちょうど元王国騎士団長の露店が果物売ってるから、なにか買ってみるか。
第一異世界人がポンと100Gくれたくらいだから、1食分として100Gは千円位の価値だろうか?
恐る恐る果物屋の前に行き、リンゴについてる値札を見ると、1個2Gと書いてある。とすると1Gは70円位かな。
ええ! あのモヒカン7千~1万位の金額くれたの?
「にいちゃん、買ってくかい」
強面の元王国騎士団長の店主が話しかけてくる。
言語は分かるし文字も読める、スキルには言語理解のようなものは無かったから最初からそういう風に作られたってことか。
この体自体は異世界で再構成された物のようだしな。
それならせめてステータスも上げて欲しかったけどね。この世界の情報を全部入れておいてくれたら良いのにとも思ったけど、人格形成にか変わりそうだから無理か。
知識が人格を作ると言われてるわけだし、そんな知識があったらもうそれ俺じゃないよな。
おっさんに、この世界の話を聞くために声をかけたがなにも買わない奴に話すことはなにもないと言われた。
情報を聞き出すために少し買うか。
俺はモヒカンからもらった銀貨を一枚出してリンゴを3個購入しようとしたが、そんな大きな金出されてもこまると言われリンゴを100個買わされた。
顔怖いし、仕方ないね。
「すみません、この町で仕事とかありますかね?」
店主はすごい形相でうなって顎にてを当てる。
このおっさん確実に客商売に向いてないと思う。
「兄ちゃんいくつだい」
おいおい、まだ売り付ける気かよ、どんだけ悪どいのよ。
だがしかし俺はノーといえる日本人。
ここはキッパリと断らせていただきます。
「すみません、申し訳ありません。リンゴはもう持てないほど買ったので……」
最後は濁す、これぞ日本人の美しい断り方だ!
いや、だってこの人の顔怖いし、これ以上は無理。
「馬鹿野郎、年齢に決まってんだろ!」
「ヒッ!すみません……24歳です」
「レベルとスキルは?」
「LV1でスキルは……まったく無いです」
それを聞くと、おっさんは再び唸る。
「その年齢だと弟子入りとか無理だし、冒険者の荷物持ち位しかないな」
「荷物持ちって儲かります?」
「儲かるなら、俺がやってる」
「そうですよね……」
俺はリンゴをアイテムボックスにしまった。
それを見たおっさんは驚きの表情を見せる。
「あんちゃん、虚空ボックス持ちなのか?」
「あ、はい」
ドスの効いた声で言われ、ビビって虚空ボックスではないと思うけど返事してしてしまった。
「いいか、これから荷物持ちするならその能力は隠しておけ、LV1じゃ利用されてしゃぶりつくされるぞ」
助言をしてくれるとか、なかなか良いオヤジだな。
なるほど場所を取らない運搬と言うのは、それだけでチートだ。あくどい奴がいたら俺は拘束されかねない。
「わかりました、ありがとうございます」
俺はおっさんに頭を下げるとその場を後にした。
俺はマップに頼らずに冒険者ギルドを探した、マップに頼っていては土地勘が掴めないからな。
町行く人に道を聞いてなんとかたどり着けた。目の前に立つとアルコールの臭いが鼻を突く。
どうやら冒険者ギルドは酒場と併設しているようだ。
扉を開けて中に入ると、強面な連中がギロリと睨む。
この世界強面の奴しかいないのか?
「よう兄ちゃん、なんかようか?」
ガタイの良いおっさんが、酒の臭いをさせて近寄ってくる。
「荷物持ちをしようと思ってギルドに登録に……」
「おお、そうか! ちょうど、うちの荷物持ちが辞めて困ってたんだ。よかったら今日からどうだ?」
おっさんは俺の肩を叩きガハガハ笑う。
今日は登録だけにしようとしたのだが、求められたら断るわけにはいかない。
人脈は宝だ、ここで仲良くなっておけば専属として使ってもらえるかもしれない。
だがおっさんたちは酒飲んでいてフラフラだ。こんな状態でいきなりダンジョン探索とか大丈夫なのか?
それを聞くと魔法で酔いは覚ませるらしく、一気にシャキリとなった。
酔いが覚まされたら行くしかないよね。
俺はおっさんのパーティーにお世話になることにし、おっさんの案内で化粧の濃い受付嬢のところに連れられ冒険者登録書を書かされた。
あっちの清楚な子が良かった。
その子をじっと眺めていたら目が合いニコリと微笑まれた。
ヤバイ可愛い、これは惚れますわ。
登録料もおっさん持ちで登録することができた。
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おっさんの名前はカスガン仲間の2人はゲスター、アクロンでこちらも体格が良い山賊なような連中だったが、皆気の良いやつらだった。
そして俺はおっさんのパーティーに加わり、一路、魔窟ドミニティに向かった。
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