ひつじをください

田舎

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菊池と会うのは一週間のうち、金か土の夜だけ。


(α婚なんて話してたから、金持ちかと思ってた…)

αはエリート層が多い。
最初の頃は恐怖で意識してなかったけれど、今思えば質素な古い建物のワンルームだ。
それでも高校生で一人暮らしとは裕福…いいや、菊池は基本学校が終わるとバイトに行っていると話していた。

週末は部屋に泊って、翌日の夕暮れには解放される。
不本意でもうまく言い訳をする為、両親には「友達みたいな恋人が出来た…」と話したら大喜びされた。
その喜び方が本当に安心したように見えて、また心が痛んだ。


セックスは彼の気まぐれで、する時もあれば、しない時もある。
あと、俺にとって忌々しい発情期は家にこもることを許された。


*  *  *  *



「歩って、いつまで経っても俺のこと苦手だよね。どうして?」
「…苦手じゃなくて、嫌いって考えない?」
「はは。俺は歩のそういうところ含めて愛してるのに」

怯える俺に彼はけらけら笑いながら言う。

"喜ぶと思ってケーキ買ってきたんだよ。
俺は甘いモノ嫌いだけど、君は好きだろ?"

笑顔を見せられると、裏があるんじゃないかと余計に警戒してしまう。
でも近所で有名なケーキ屋の箱をみて、少し浮かれてしまった。それがいけなかった。

『確かに甘いモノは好きだけれど…4つは買いすきじゃない?菊池は、ケーキとか嫌いなんだろ?』

そう突っ込んだ瞬間、平手打ちをされ乱暴に腕を引かれベッドに押し倒された。


「せっかく喜んでもらおうと思ったのに」


それでこの仕打ちはあんまりだ。

きっとこのα様には俺の考えや常識は通用しないし、何を言っても無駄なのだろう。

「っ、今ぜんぶ食べなくたって…明日でも…」
「なに言ってんの。消費期限とかさ、あるじゃん?」

なら、そもそも買って来ないでよ。
お前の好意だとか思いつきなんて迷惑でしかないのに…

心の中で色々と毒を吐いていると何を思ったのか珍しく俺の頬に手を差し伸べてきた。

思わずのけ反りそうになったけど、また殴られるのを恐れて自制する。


「……そんなに痛かった?」

まるで悲しんでいるような声色で、目的がさっぱり分からない。

いや、お前のせいでこうなってるんだろ…。


「口の中、切れてない?」
「う、ん…」
「よかった。ケーキ、歩が好きそうなの買ってきたんだ」

殴っておいて、なに機嫌をとろうとしてるのか。
ふざけるな。


「ごめんね…」

(許さない…)


「俺さぁ…」


だからその演技、やめてくれよ。



――――――――――




「今日、誕生日なんだよ」



そんなこと俺の知ったことか


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