ひつじをください

田舎

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「………っ、っ!?」


一人の部屋ではっと目を覚ますと、息苦しさからはぁはぁと息を漏らす。

(夢だ…ぜんぶ、何もかも・…)

いくら繰り返しても消えない過去。
真っ暗な部屋に電気をつけて、菊池はひとり身を起こす。
時刻は深夜1時。

彼に連絡をしたい気持ちもあったが…返事はないだろう。

「は…、正気か…?」

寝起きだからか、弱い自分を叱咤する。
俺はαだ。どうしようもなくΩを…、相手の価値観・見た目や性格にも囚われないらしい匂いだけを追い求める。

もちろん、愛じゃない。
そんな綺麗な名前ではない。


もしもこの感情がそんな崇高な表現で済んだなら、歩は泣かなかったはずだ。

『やだ…いた、い…、、やだ…』

俺が抱いたのは…例えるなら、そう。相手のすべてを食い散らかして自分の支配下に置いておきたい気持ち。
コレ”Ω”とは項を噛んで手元に置くものだと、本能が暴れ回る。


『…、・っ…、菊池…』

その後についてくる感情は――――、ただの罪悪感と呼ぶのがふさわしい。
こんな欲求など害でしかないと…・自分自身が理解している。


(狂ってる…)

でも手放したくない。

あの温もりも、匂いも、


愛してくれなど望まないから…




「―――っ”、ぅ、」

ぐっと自分の腕を噛んで自制する。

そうだ、なによりも誰よりも一番自分が狂ってると分かっていて、抑えられない。
でも

スマホを開いて、一言「おやすみ」だけ送った。
返事はないが、既読だけはついた。



その小さな端末を抱えて、明るい部屋のベッドに沈む。



「………会いたいなぁ」



壊れるなら、

いっそ人間らしさも、無くしたかった.






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