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【黒の創造召喚師 ―Closs over the world―】
第056話 夜空に紡がれる妹の願い①
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夜が更け、広い駐車場に止められた一台の観測用特殊車両。その中では壁一面に設置された複数のモニターと大きなスクリーンを俯瞰するように眺めるアルファの姿があった。
「……首尾はどうだ、ベータ?」
彼女はモニターの前の席に座る「ラウンドガード」の一人であるベータに問いかける。
「ハッ、今のところ問題はありません。ガンマ以下、4名は当初の作戦通りにポイントを囲うように展開、配置済みです」
「新人のあの男は?」
アルファから問われたベータは、即座にキーボードを叩き、自身の画面の中心に二つの紅点を表示させながら答える。
「ハッ。そちらは現在、ゼータと共に対象があると思われる建物の正面、そこからおよそ1キロ離れた場所にて待機中です」
「……そう」
ベータの淀みない説明に、アルファは大きなスクリーンに映し出された地図と五つの紅点を視界に入れる。
「――それでは……任務開始。目標は、『奪われた魔煌石の回収』。各位、魔煌石の回収を最優先とし、戦闘は極力避けること」
「「「「――了解っ!」」」」
アルファの号令を受け、ガンマ以下4名と今回の任務に加わった新人――九条武治が一気に動き出す。
目的のブツがある御水瀬神社へ向けて。
◆◇◆
「――ほう、これはこれは。何ともまぁドス黒い悪意なことだな」
その日の夜、濃紺の着流し姿で千陽の帰りを待っていた健介は、敷地の外に張った結界を越えて侵入する不届者たちを覚知すると、ため息と共にぽろりと呟いた。
御水瀬家の本陣たるこの神社には、敷地の外に結界を張っており、そこを越えた者が悪意ある者か否かを選別することができる仕組みを構築している。
張られた結界は悪意ある者がその結界を越えた場合、術者へ知らせる役割を担っており、代々御水瀬家の当主に引き継がれて来た由緒ある術式であった。
なお、どの範囲に結界を施しているのかは当主のみに伝えられているため、千陽や叶絵なども知らない。
(さて、どう対処するか……結界が探知した悪意は五つ。しかもご丁寧にそれぞれ別方向からこっちにやって来ている。厄介なことに、そのうちの一つは禍々しさが抜きん出ている……)
両袖に手を通し、一度目を閉じて考えをまとめた健介は、再び目を開けるとポツリと呟く。
「……棗、椿、蓮、萩」
「「「「ハッ……ここに」」」」
彼の呼ぶ声に対し、襖越しに四人の男女の声が聞こえて来る。片膝を付き、頭を下げるこの四人の男女は、御水瀬家に仕える四つの分家――総称して「四季族」とも呼ばれる春日、夏目、秋月、柊木の四家からなる健介の「駒」だ。
「招かれざるお客様がいらしたようだ。丁重にもてなして差し上げろ。東は棗、西は椿、南は蓮、北は萩に任せる」
「「「「ハッ、承知いたしました」」」」
当主たる健介の言葉に異論を挟む者はおらず、居並ぶ四人は二つ返事で了承の旨を口にする。
この場に居合わせた四人の男女は、四季族の中でも特に優秀とされる者たちであり、健介からはその信頼の証として「御庭番」の称号を与えられている。
現在の御庭番は、順に
――「春日」家の「春日棗」
――「夏目」家の「夏目椿」
――「秋月」家の「秋月蓮」
――「柊木」家の「柊木萩」
がその称号を冠されている。
「それと……蓮」
「はっ、はい!」
健介の声に、襖の向こうから若い男性の声が響く。
「結界の術式によれば、南からは二人やって来るようだ。一人は何とかお前でも対応はできるだろうが、残る一人はおそらく太刀打ちすることはできない。そちらは私自ら対処するとしよう」
「っ――!? 御当主自ら……ですか? 恐れながら、それでは……」
蓮と呼ばれた青年は、言葉を詰まらせながらも何とか翻意を促そうと試みる。しかしながら、健介の意志は変わらなかった。
「心配してくれるのは嬉しいし、分かるのだがな……かの強敵は蓮も含め、この家の『御庭番』を務めるお前たちでは荷が勝ち過ぎている。正直、私がギリギリ渡り合えるかどうか、というレベルだ。家の方は翠と叶絵に任せる。時間もない……すぐに取り掛かれ」
「「「「承知いたしました」」」」
その言葉を最後に、襖の向こうにあった四つの気配は瞬く間に消え去った。
「……首尾はどうだ、ベータ?」
彼女はモニターの前の席に座る「ラウンドガード」の一人であるベータに問いかける。
「ハッ、今のところ問題はありません。ガンマ以下、4名は当初の作戦通りにポイントを囲うように展開、配置済みです」
「新人のあの男は?」
アルファから問われたベータは、即座にキーボードを叩き、自身の画面の中心に二つの紅点を表示させながら答える。
「ハッ。そちらは現在、ゼータと共に対象があると思われる建物の正面、そこからおよそ1キロ離れた場所にて待機中です」
「……そう」
ベータの淀みない説明に、アルファは大きなスクリーンに映し出された地図と五つの紅点を視界に入れる。
「――それでは……任務開始。目標は、『奪われた魔煌石の回収』。各位、魔煌石の回収を最優先とし、戦闘は極力避けること」
「「「「――了解っ!」」」」
アルファの号令を受け、ガンマ以下4名と今回の任務に加わった新人――九条武治が一気に動き出す。
目的のブツがある御水瀬神社へ向けて。
◆◇◆
「――ほう、これはこれは。何ともまぁドス黒い悪意なことだな」
その日の夜、濃紺の着流し姿で千陽の帰りを待っていた健介は、敷地の外に張った結界を越えて侵入する不届者たちを覚知すると、ため息と共にぽろりと呟いた。
御水瀬家の本陣たるこの神社には、敷地の外に結界を張っており、そこを越えた者が悪意ある者か否かを選別することができる仕組みを構築している。
張られた結界は悪意ある者がその結界を越えた場合、術者へ知らせる役割を担っており、代々御水瀬家の当主に引き継がれて来た由緒ある術式であった。
なお、どの範囲に結界を施しているのかは当主のみに伝えられているため、千陽や叶絵なども知らない。
(さて、どう対処するか……結界が探知した悪意は五つ。しかもご丁寧にそれぞれ別方向からこっちにやって来ている。厄介なことに、そのうちの一つは禍々しさが抜きん出ている……)
両袖に手を通し、一度目を閉じて考えをまとめた健介は、再び目を開けるとポツリと呟く。
「……棗、椿、蓮、萩」
「「「「ハッ……ここに」」」」
彼の呼ぶ声に対し、襖越しに四人の男女の声が聞こえて来る。片膝を付き、頭を下げるこの四人の男女は、御水瀬家に仕える四つの分家――総称して「四季族」とも呼ばれる春日、夏目、秋月、柊木の四家からなる健介の「駒」だ。
「招かれざるお客様がいらしたようだ。丁重にもてなして差し上げろ。東は棗、西は椿、南は蓮、北は萩に任せる」
「「「「ハッ、承知いたしました」」」」
当主たる健介の言葉に異論を挟む者はおらず、居並ぶ四人は二つ返事で了承の旨を口にする。
この場に居合わせた四人の男女は、四季族の中でも特に優秀とされる者たちであり、健介からはその信頼の証として「御庭番」の称号を与えられている。
現在の御庭番は、順に
――「春日」家の「春日棗」
――「夏目」家の「夏目椿」
――「秋月」家の「秋月蓮」
――「柊木」家の「柊木萩」
がその称号を冠されている。
「それと……蓮」
「はっ、はい!」
健介の声に、襖の向こうから若い男性の声が響く。
「結界の術式によれば、南からは二人やって来るようだ。一人は何とかお前でも対応はできるだろうが、残る一人はおそらく太刀打ちすることはできない。そちらは私自ら対処するとしよう」
「っ――!? 御当主自ら……ですか? 恐れながら、それでは……」
蓮と呼ばれた青年は、言葉を詰まらせながらも何とか翻意を促そうと試みる。しかしながら、健介の意志は変わらなかった。
「心配してくれるのは嬉しいし、分かるのだがな……かの強敵は蓮も含め、この家の『御庭番』を務めるお前たちでは荷が勝ち過ぎている。正直、私がギリギリ渡り合えるかどうか、というレベルだ。家の方は翠と叶絵に任せる。時間もない……すぐに取り掛かれ」
「「「「承知いたしました」」」」
その言葉を最後に、襖の向こうにあった四つの気配は瞬く間に消え去った。
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