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【黒の創造召喚師 ―Closs over the world―】
第022話 ゴミはゴミ箱へ、クズはくずカゴへ③
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――どうしてこんなことに。
その日、家に戻った八津塚颯太は、心の奥底から湧いてくる恐怖に、自分でも驚くほど身を震わせていた。
颯太は白桜学院の特進Ⅱ類のクラスにいる男子生徒だ。中学からバドミントンで活躍していた彼は、見事この学院の「特化クラス」の一人として在籍する権利を勝ち得た。
加えて、まるで誰かが「ボーナスだ」と言わんばかりに、彼のクラスにある女子生徒を引き込んで来たのだ。
その彼女の名前は、「ソアラ=レミントン」。外国からやって来た帰国少女で、亜麻色の長い髪にやや切れ長の目、快活な笑みが特徴的な女の子であった。彼女の登場は同じクラスの男子ばかりか、女子からも熱烈な歓迎をもって迎えられ、すぐに人気者の地位を確立する。
それは颯太にとっても同じく、明るく快活なソアラに一瞬で虜になった。彼女の人気ぶりは他のクラスにも及び、どこで撮ったのか、彼女の写真が初登校の数日後に出回るほどであった。颯太も(数日悩んだ末に)その写真を入手し、財布に入れていた。
――だが、
「へぇ……この写真の女――結構カワイイじゃねぇの」
写真を手に入れた翌日、颯太はこの日の自分自身の選択を呪いたいほどの悪夢に遭遇する。
きっかけは部活で帰宅時間がいつもより遅くなったことだった。特進Ⅱ類のクラスは、スポーツに特化しているクラスであることから、他コースの生徒よりも早く部活に所属することが多い。
颯太もこのケースで初めて学院に登校してから数日でバドミントン部に入部届を提出し、中学の頃よりもハイレベルな指導を受けながら練習に明け暮れていた。
そんな中、この日は日直の仕事もあり、どうしても自ら設定した練習量がこなせず、いつもよりも帰宅時間が遅くなってしまった。その帰途、いつもならば絶対に避けていた「道」を、「今日は大丈夫だろう」と軽い気持ちで通してしまった。
その道は、通称「悪魔通り」と同級生の間で囁かれ、「悪いことは言わない、面倒事に巻き込まれたくなければ通らない事」と知られている道であった。
ここで言われている「面倒事」とは、その多くが「カツアゲ」・「脅迫」・「暴力沙汰」のどれかだ。その原因は、悪魔通りを中心とするエリアを根城とする不良集団――「鰐の噛み痕」にある。このグループは優に三桁を超える人数を誇り、そのトップを担う「九条武治」は格闘技の元・世界チャンピオンであったことも恐れられる要因の一つとなっている。
事実、警察が何度か取り締まりを行ったものの、その度に手酷い返り討ちを被ったため、今では警察すら彼らの摘発には及び腰なのだ。
そんな「やめておけ」と言われていた通りに足を踏み入れた颯太は、運悪くアリゲーターバイトの構成員に見つかり、廃工場の中に連れ込まれた。
そして金を出すよう脅され、震えながら財布を渡した時、受け取った構成員の一人が財布の中に入っていた写真の存在に気づく。その写真はすぐさま近くの廃材に腰を下していた九条の下に届けられた。
「オィ、お前……この女の詳細を知っているな? もしそれに関する情報を嘘偽りなく、全て話すと言うのなら……この場は見逃してやろうじゃねぇか」
颯太の前に屈強なスキンヘッドの男――九条武治が口の端を吊り上げながら訊ねる。
「え、えっと……」
写真を方手に「お前の同級生を売れ」と暗に迫る九条に、颯太は躊躇いを見せた。しかし、その拒否を匂わせる態度に、九条の声がわずかに荒ぶったものに変化する。
「あ゛ぁ? テメェ……俺に反抗する気か? まぁそういう態度なら、こっちはそれでもいいぜ? ただ……その選択をしたことで、今度はテメェも含めた周りの連中も痛い目を見ることになるだろうがな……」
九条はいつの間にか颯太の鞄から抜いた生徒手帳を彼の目の前に投げ捨てながら語気を強めた。その告げられた言葉に、颯太の顔から一気に血の気が引く。九条は颯太の表情の変化に気を良くしたのか、凶悪な笑みを浮かべ、さらに言葉を続ける。
「どっちが賢い選択かよぉく考えてから選べ。『他人である、この写真の女の情報を売る』か『周りの連中共々、痛い目を見るか』だ。さぁ選べ――二つに一つだ」
二十を超える人数に囲まれ、出口を塞がれた上で迫られる選択。スポーツをやっている颯太は、体力にはそれなりの自信があったものの、この人数と九条を前にして勝利を手にできるとは到底思えなかった。
だから彼は――
「それがお前の選択か……」
颯太の視線の先にいる九条は、ニヤリと凶悪な笑みを深くしながら静かに告げた。
その日、家に戻った八津塚颯太は、心の奥底から湧いてくる恐怖に、自分でも驚くほど身を震わせていた。
颯太は白桜学院の特進Ⅱ類のクラスにいる男子生徒だ。中学からバドミントンで活躍していた彼は、見事この学院の「特化クラス」の一人として在籍する権利を勝ち得た。
加えて、まるで誰かが「ボーナスだ」と言わんばかりに、彼のクラスにある女子生徒を引き込んで来たのだ。
その彼女の名前は、「ソアラ=レミントン」。外国からやって来た帰国少女で、亜麻色の長い髪にやや切れ長の目、快活な笑みが特徴的な女の子であった。彼女の登場は同じクラスの男子ばかりか、女子からも熱烈な歓迎をもって迎えられ、すぐに人気者の地位を確立する。
それは颯太にとっても同じく、明るく快活なソアラに一瞬で虜になった。彼女の人気ぶりは他のクラスにも及び、どこで撮ったのか、彼女の写真が初登校の数日後に出回るほどであった。颯太も(数日悩んだ末に)その写真を入手し、財布に入れていた。
――だが、
「へぇ……この写真の女――結構カワイイじゃねぇの」
写真を手に入れた翌日、颯太はこの日の自分自身の選択を呪いたいほどの悪夢に遭遇する。
きっかけは部活で帰宅時間がいつもより遅くなったことだった。特進Ⅱ類のクラスは、スポーツに特化しているクラスであることから、他コースの生徒よりも早く部活に所属することが多い。
颯太もこのケースで初めて学院に登校してから数日でバドミントン部に入部届を提出し、中学の頃よりもハイレベルな指導を受けながら練習に明け暮れていた。
そんな中、この日は日直の仕事もあり、どうしても自ら設定した練習量がこなせず、いつもよりも帰宅時間が遅くなってしまった。その帰途、いつもならば絶対に避けていた「道」を、「今日は大丈夫だろう」と軽い気持ちで通してしまった。
その道は、通称「悪魔通り」と同級生の間で囁かれ、「悪いことは言わない、面倒事に巻き込まれたくなければ通らない事」と知られている道であった。
ここで言われている「面倒事」とは、その多くが「カツアゲ」・「脅迫」・「暴力沙汰」のどれかだ。その原因は、悪魔通りを中心とするエリアを根城とする不良集団――「鰐の噛み痕」にある。このグループは優に三桁を超える人数を誇り、そのトップを担う「九条武治」は格闘技の元・世界チャンピオンであったことも恐れられる要因の一つとなっている。
事実、警察が何度か取り締まりを行ったものの、その度に手酷い返り討ちを被ったため、今では警察すら彼らの摘発には及び腰なのだ。
そんな「やめておけ」と言われていた通りに足を踏み入れた颯太は、運悪くアリゲーターバイトの構成員に見つかり、廃工場の中に連れ込まれた。
そして金を出すよう脅され、震えながら財布を渡した時、受け取った構成員の一人が財布の中に入っていた写真の存在に気づく。その写真はすぐさま近くの廃材に腰を下していた九条の下に届けられた。
「オィ、お前……この女の詳細を知っているな? もしそれに関する情報を嘘偽りなく、全て話すと言うのなら……この場は見逃してやろうじゃねぇか」
颯太の前に屈強なスキンヘッドの男――九条武治が口の端を吊り上げながら訊ねる。
「え、えっと……」
写真を方手に「お前の同級生を売れ」と暗に迫る九条に、颯太は躊躇いを見せた。しかし、その拒否を匂わせる態度に、九条の声がわずかに荒ぶったものに変化する。
「あ゛ぁ? テメェ……俺に反抗する気か? まぁそういう態度なら、こっちはそれでもいいぜ? ただ……その選択をしたことで、今度はテメェも含めた周りの連中も痛い目を見ることになるだろうがな……」
九条はいつの間にか颯太の鞄から抜いた生徒手帳を彼の目の前に投げ捨てながら語気を強めた。その告げられた言葉に、颯太の顔から一気に血の気が引く。九条は颯太の表情の変化に気を良くしたのか、凶悪な笑みを浮かべ、さらに言葉を続ける。
「どっちが賢い選択かよぉく考えてから選べ。『他人である、この写真の女の情報を売る』か『周りの連中共々、痛い目を見るか』だ。さぁ選べ――二つに一つだ」
二十を超える人数に囲まれ、出口を塞がれた上で迫られる選択。スポーツをやっている颯太は、体力にはそれなりの自信があったものの、この人数と九条を前にして勝利を手にできるとは到底思えなかった。
だから彼は――
「それがお前の選択か……」
颯太の視線の先にいる九条は、ニヤリと凶悪な笑みを深くしながら静かに告げた。
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