77 / 77
77 まさかの…
しおりを挟む
「オリヴァー様」
そっと身体を撫でたのに、オリヴァーはピクッと身体を震わせて顔を上げた。
「…キャサリン嬢?」
眠そうな半目が私を捉えて、自信なさ気な声が私を呼ぶ。
「ただいま帰りました、オリヴァー様」
もう一度声をかけると、猫のオリヴァーはガバっと身を起こすと私に飛びついてきた。
「おかえりなさい、キャサリン嬢。もっとかかるかと思っていたんですが、随分と早かったんですね」
オリヴァーは身体を擦り付けてくるけれど、その身体が私の胸に当たっている事に気付いているのかしら?
アラスター王太子が見ていたらすぐに首根っこを掴んでつまみ出しそうだわ。
「オリヴァー様、一度人間に戻られてはいかがですか?」
見かねたエイダがさり気なく私からオリヴァーを引き剥がすと、ソファーに座らせてチョーカーのボタンを押した。
カチッという音と共にオリヴァーの姿が人間に戻る。
オリヴァーが恨めしそうな視線をエイダに向けているところを見ると、さっきのはわかってやっていたみたいね。
「おかえりなさい、キャサリン嬢。戻られたという事は呪いは解けたのですか?」
可愛らしい笑みを浮かべるオリヴァーを見て、戻って来たのだと実感する。
「はい、サイモンのお陰で戻る事が出来ました。オリヴァー様は何事もなく過ごされましたか?」
そう聞いた途端、オリヴァーの顔がスッと冷えたものに変わる。
(何かあったのかしら?)
そう考えたところで、ブリジット達の処刑が行われたのだろうと思い至る。
オリヴァーにどう声をかけていいか迷っていると、『どこでも◯ア』が光ってアラスター王太子とウォーレンが姿を現した。
アラスター王太子は迷わず私の隣に座ると、オリヴァーを牽制するように私の手を取った。
「オリヴァー。今父上から話を聞いた。既に処刑が済んだそうだな。それでオリヴァーはこれからどうするんだ?」
ストレートな物言いだけれど、アラスター王太子の声は優しかった。
「…僕は…」
オリヴァーは唇を噛みしめるとうつむいてしまった。
まだ十歳にも満たない子供にこれからの事なんて決められるわけがない。
「私の子供にするわ!」
私が何か言おうとするよりも先にケンブル先生が宣言する。
「ケンブル先生!?」
オリヴァーが驚いて顔をあげると、まじまじとケンブル先生の顔を見つめる。
「ケンブル先生、いいんですか? ロナルドに相談は?」
アラスター王太子もケンブル先生の発言に驚いている。
そもそも、オリヴァーの存在をロナルドに隠していたのに、自分の子供にするなんて、勝手に決めて良いのだろうか?
私の疑問がわかったのか、ケンブル先生はケラケラと笑い飛ばす。
「ロナルドに文句は言わせないわ。それに私に子供は出来ないとわかっていたから、いずれは養子をもらおうと話していたの」
ケンブル先生の柔らかい微笑みにオリヴァーの顔が嬉しそうにほころぶ。
私達がいない間にそれなりに良好な関係を築いていたようだ。
「よろしくお願いします、ケンブル先生、いえ、母上」
オリヴァーに不意打ちで「母上」と呼ばれて、ケンブル先生は殊の外嬉しそうだ。
「それで、キャサリン嬢。あなたはこれからどうされますか?」
(私のこれから?)
確か、サリヴァン侯爵が私を養女にして、アラスター王太子の婚約者にすると言っていたけれど、まだそのつもりてまいるのかしら?
「キャサリン嬢。どうか、僕との結婚を考えていただけませんか?」
私が答えに窮していると、再びアラスター王太子がプロポーズをしてくる。
私の左隣にはオリヴァーもいるのに、恥ずかしげもなくプロポーズしてくるなんて…。
どう返事をしようか迷っていると、私の左手をオリヴァーの小さな手が握ってきた。
「キャサリン嬢。僕もあなたが好きです。王子の身分ではなくなりましたが、どうか僕と結婚してください」
まさかのオリヴァーからのプロポーズに、私もアラスター王太子も言葉を無くしてしまった。
オリヴァーは確かに可愛いけれど、流石に結婚の対象ではないわ。
「待て、オリヴァー。流石にお前にはキャサリン嬢は年上過ぎる!」
「いいえ、兄上! 好きになるのに年上も年下も関係ありません! 僕は真剣なんです!」
左右の手をそれぞれの男性に握られ、私は助けを求めて辺りを見回した。
けれど、ケンブル先生もエイダも私と目を合わさないようについと顔を反らしてしまう。
私はこの状況を喜んで良いのかしら?
誰か教えて!
ー 完 ー
そっと身体を撫でたのに、オリヴァーはピクッと身体を震わせて顔を上げた。
「…キャサリン嬢?」
眠そうな半目が私を捉えて、自信なさ気な声が私を呼ぶ。
「ただいま帰りました、オリヴァー様」
もう一度声をかけると、猫のオリヴァーはガバっと身を起こすと私に飛びついてきた。
「おかえりなさい、キャサリン嬢。もっとかかるかと思っていたんですが、随分と早かったんですね」
オリヴァーは身体を擦り付けてくるけれど、その身体が私の胸に当たっている事に気付いているのかしら?
アラスター王太子が見ていたらすぐに首根っこを掴んでつまみ出しそうだわ。
「オリヴァー様、一度人間に戻られてはいかがですか?」
見かねたエイダがさり気なく私からオリヴァーを引き剥がすと、ソファーに座らせてチョーカーのボタンを押した。
カチッという音と共にオリヴァーの姿が人間に戻る。
オリヴァーが恨めしそうな視線をエイダに向けているところを見ると、さっきのはわかってやっていたみたいね。
「おかえりなさい、キャサリン嬢。戻られたという事は呪いは解けたのですか?」
可愛らしい笑みを浮かべるオリヴァーを見て、戻って来たのだと実感する。
「はい、サイモンのお陰で戻る事が出来ました。オリヴァー様は何事もなく過ごされましたか?」
そう聞いた途端、オリヴァーの顔がスッと冷えたものに変わる。
(何かあったのかしら?)
そう考えたところで、ブリジット達の処刑が行われたのだろうと思い至る。
オリヴァーにどう声をかけていいか迷っていると、『どこでも◯ア』が光ってアラスター王太子とウォーレンが姿を現した。
アラスター王太子は迷わず私の隣に座ると、オリヴァーを牽制するように私の手を取った。
「オリヴァー。今父上から話を聞いた。既に処刑が済んだそうだな。それでオリヴァーはこれからどうするんだ?」
ストレートな物言いだけれど、アラスター王太子の声は優しかった。
「…僕は…」
オリヴァーは唇を噛みしめるとうつむいてしまった。
まだ十歳にも満たない子供にこれからの事なんて決められるわけがない。
「私の子供にするわ!」
私が何か言おうとするよりも先にケンブル先生が宣言する。
「ケンブル先生!?」
オリヴァーが驚いて顔をあげると、まじまじとケンブル先生の顔を見つめる。
「ケンブル先生、いいんですか? ロナルドに相談は?」
アラスター王太子もケンブル先生の発言に驚いている。
そもそも、オリヴァーの存在をロナルドに隠していたのに、自分の子供にするなんて、勝手に決めて良いのだろうか?
私の疑問がわかったのか、ケンブル先生はケラケラと笑い飛ばす。
「ロナルドに文句は言わせないわ。それに私に子供は出来ないとわかっていたから、いずれは養子をもらおうと話していたの」
ケンブル先生の柔らかい微笑みにオリヴァーの顔が嬉しそうにほころぶ。
私達がいない間にそれなりに良好な関係を築いていたようだ。
「よろしくお願いします、ケンブル先生、いえ、母上」
オリヴァーに不意打ちで「母上」と呼ばれて、ケンブル先生は殊の外嬉しそうだ。
「それで、キャサリン嬢。あなたはこれからどうされますか?」
(私のこれから?)
確か、サリヴァン侯爵が私を養女にして、アラスター王太子の婚約者にすると言っていたけれど、まだそのつもりてまいるのかしら?
「キャサリン嬢。どうか、僕との結婚を考えていただけませんか?」
私が答えに窮していると、再びアラスター王太子がプロポーズをしてくる。
私の左隣にはオリヴァーもいるのに、恥ずかしげもなくプロポーズしてくるなんて…。
どう返事をしようか迷っていると、私の左手をオリヴァーの小さな手が握ってきた。
「キャサリン嬢。僕もあなたが好きです。王子の身分ではなくなりましたが、どうか僕と結婚してください」
まさかのオリヴァーからのプロポーズに、私もアラスター王太子も言葉を無くしてしまった。
オリヴァーは確かに可愛いけれど、流石に結婚の対象ではないわ。
「待て、オリヴァー。流石にお前にはキャサリン嬢は年上過ぎる!」
「いいえ、兄上! 好きになるのに年上も年下も関係ありません! 僕は真剣なんです!」
左右の手をそれぞれの男性に握られ、私は助けを求めて辺りを見回した。
けれど、ケンブル先生もエイダも私と目を合わさないようについと顔を反らしてしまう。
私はこの状況を喜んで良いのかしら?
誰か教えて!
ー 完 ー
18
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
良い作品なのでお気に入り登録しました!お互い頑張りましょう!
はじめまして。
私と同じ山口県の方なんですね。
お互い頑張りましょう。