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第1章
第12話
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「良いのがあるじゃん!」
この世界は1年が360日らしく、1か月は30日になっている。
ケイの記憶が現れてから2週間経っている。
あと2週間くらいで暖かくなってくるとケイは予想しているので、そろそろ畑を作ろうかと思っている。
魔法の練習もかねて、畑を作る場所にある小石は魔力を使ってどかし、土は土魔法で耕そうと考えている。
しかし、畑ができてじゃがいもを植えたとしても魔物や動物に荒らされてしまっては困る。
魔物も動物も、ケイがいるこの小島には全く姿を現さないが、昨日のスライムのように西の陸地から崖を飛び越えてきたり、恐らくだが、蛙(ラーナ)や蛇(セルピエンテ)のように海を泳いでくるかもしれない。
ケイも見張りの従魔を手に入れたいと思っていたところだった。
だが、魔法の書を見ていたら畑の警護をするのに1つの解決策が見付かった。
魔力だけを利用する魔法を無属性魔法といい、その中の1つに探知術というのがある。
鑑定術のも同じく無属性魔法の一種だが、この探知術というのは、自分の魔力を周囲に薄く広く伸ばしし、その魔力に接触した者や物に反応し、離れた場所からでも探知できる術だ。
その魔力を薄くしたり、伸ばしたりすることが難しいらしく、魔力をコントロールする技術が必要らしい。
コントロールが上手くないと遠い詳細な探知はしにくく、切り離した魔力で探知することもできるが、その場合は更に高度なコントロールが必要になる。
難しいとは言っても、これさえあればわざわざ新しく従魔を手にいれる必要がなくなるし、食材を採取しながら畑の警護もできる。
それを考えると、この魔法は今のケイに必須のように思えた。
「まずは少しずつ範囲を広げることかな?」
この魔法の書は、アンヘルの記憶を呼び込むとエルフ族が代々受け継いできた手製の書。
これまでの何人ものエルフが、努力や工夫によって使えるようになった技術が載っている。
ただ、羊皮紙すらなかなか手に入れられないからか、魔法を覚える練習方法までは書かれていない。
なので、ケイは独学で練習するしかない。
とは言っても、結果が分かっているのだから、推理すればある程度練習方法は思いつく。
丁度いい大きさの石に座り、ケイは心を落ち着かせて魔力を薄く伸ばす練習をし始めた。
「んっ?」
“プルプル!!”
ここ数日、ケイは午前中は食材探し、午後は探知術の練習をしている。
昼食を食べて休憩をした後、探知術の練習をしようとしたケイの近くで、キュウが震えているのに気付いた。
「何してるんだ? キュウ」
“パッ!”
何か怖いことでもあったのかと思ってケイが尋ねると、キュウは口を開いて何か出すような仕草をケイに見せた。
「んっ?」
キュウは声が出せないので、ケイはいつもジェスチャーで言いたいことを判断してきたのだが、その姿を見ただけでは何がいいたいのかよく分からなかった。
大体がお腹が空いたアピールをすることが多いので、お腹が空いてと言っているかと思ったが、お昼を先程ケイと一緒に食べたばかりでその可能性は低い。
“プルプルッ!”
“パッ!”
キュウは、何か踏ん張るように震えた後、口を開く。
「んっ? もしかして魔法が使いたいのか?」
“コクコクッ!”
その仕草で、もしかしてと思って尋ねてみるとどうやら正解したようだ。
アンヘルの知識だと、魔物の餌と呼ばれるほど弱小のケセランパセランが、魔法を使うなんて聞いたことがない。
「そうか……」
そんなキュウが練習しても魔法が使えるとは思えなかったケイは、複雑な気持ちになった。
もしかしたら、キュウはケイが魔法を使う姿を見て、自分も使いたいと思ったのだろう。
キラキラした目で練習しているが、魔法が使えないと分かった時、キュウが落ち込んでしまうのではないかと考えたからだ。
「…………いや、待てよ。一応魔物なんだから練習すればできるようになるのかな?」
そもそも魔力がなければ魔法は使えないが、特殊な体質でもない限り魔力を持たない生き物は存在しない。
魔物も同じで、弱小とは言ってもキュウも魔物は魔物。
多少なりとも魔力があると思える。
「そういえば、探知術は魔力に反応するんだっけ……」
キュウが魔力を持っているかどうかは、ただ見ただけでは分からない。
それを見る方法がないか考えた時、探知術の機能に目をつけた。
練習の成果もあってか、自分中心に3mくらいの範囲なら探知ができるようになってきた。
ケイが言ったように探知術は、生き物の場合その持っている魔力に反応して存在を探知する。
それを使えば、キュウが魔力を持っているかどうか分かるはずだ。
「キュウ! ちょっとそのままでいてくれるか?」
“コクッ!”
ケイがキュウに探知するから動かないようにいうと、キュウは大人しく頷いた。
「フ~…………、ハッ!」
深呼吸をした後、ケイは魔力をキュウの方に広げてみた。
「…………あっ! ある! キュウお前魔力あるみたいだぞ!」
「っ!?」
“ピョン! ピョン!”
ケイの魔力がキュウに触れると、ほんの僅かながら反応を示した。
それは本当に僅かではあるが間違いなかった。
ケイもキュウに魔力があると分かったら嬉しくなり、思わず声が大きくなってしまった。
自分にも魔法が使えるかもしれないことを説明されたキュウは、嬉しそうにその場を飛び跳ねたのだった。
この世界は1年が360日らしく、1か月は30日になっている。
ケイの記憶が現れてから2週間経っている。
あと2週間くらいで暖かくなってくるとケイは予想しているので、そろそろ畑を作ろうかと思っている。
魔法の練習もかねて、畑を作る場所にある小石は魔力を使ってどかし、土は土魔法で耕そうと考えている。
しかし、畑ができてじゃがいもを植えたとしても魔物や動物に荒らされてしまっては困る。
魔物も動物も、ケイがいるこの小島には全く姿を現さないが、昨日のスライムのように西の陸地から崖を飛び越えてきたり、恐らくだが、蛙(ラーナ)や蛇(セルピエンテ)のように海を泳いでくるかもしれない。
ケイも見張りの従魔を手に入れたいと思っていたところだった。
だが、魔法の書を見ていたら畑の警護をするのに1つの解決策が見付かった。
魔力だけを利用する魔法を無属性魔法といい、その中の1つに探知術というのがある。
鑑定術のも同じく無属性魔法の一種だが、この探知術というのは、自分の魔力を周囲に薄く広く伸ばしし、その魔力に接触した者や物に反応し、離れた場所からでも探知できる術だ。
その魔力を薄くしたり、伸ばしたりすることが難しいらしく、魔力をコントロールする技術が必要らしい。
コントロールが上手くないと遠い詳細な探知はしにくく、切り離した魔力で探知することもできるが、その場合は更に高度なコントロールが必要になる。
難しいとは言っても、これさえあればわざわざ新しく従魔を手にいれる必要がなくなるし、食材を採取しながら畑の警護もできる。
それを考えると、この魔法は今のケイに必須のように思えた。
「まずは少しずつ範囲を広げることかな?」
この魔法の書は、アンヘルの記憶を呼び込むとエルフ族が代々受け継いできた手製の書。
これまでの何人ものエルフが、努力や工夫によって使えるようになった技術が載っている。
ただ、羊皮紙すらなかなか手に入れられないからか、魔法を覚える練習方法までは書かれていない。
なので、ケイは独学で練習するしかない。
とは言っても、結果が分かっているのだから、推理すればある程度練習方法は思いつく。
丁度いい大きさの石に座り、ケイは心を落ち着かせて魔力を薄く伸ばす練習をし始めた。
「んっ?」
“プルプル!!”
ここ数日、ケイは午前中は食材探し、午後は探知術の練習をしている。
昼食を食べて休憩をした後、探知術の練習をしようとしたケイの近くで、キュウが震えているのに気付いた。
「何してるんだ? キュウ」
“パッ!”
何か怖いことでもあったのかと思ってケイが尋ねると、キュウは口を開いて何か出すような仕草をケイに見せた。
「んっ?」
キュウは声が出せないので、ケイはいつもジェスチャーで言いたいことを判断してきたのだが、その姿を見ただけでは何がいいたいのかよく分からなかった。
大体がお腹が空いたアピールをすることが多いので、お腹が空いてと言っているかと思ったが、お昼を先程ケイと一緒に食べたばかりでその可能性は低い。
“プルプルッ!”
“パッ!”
キュウは、何か踏ん張るように震えた後、口を開く。
「んっ? もしかして魔法が使いたいのか?」
“コクコクッ!”
その仕草で、もしかしてと思って尋ねてみるとどうやら正解したようだ。
アンヘルの知識だと、魔物の餌と呼ばれるほど弱小のケセランパセランが、魔法を使うなんて聞いたことがない。
「そうか……」
そんなキュウが練習しても魔法が使えるとは思えなかったケイは、複雑な気持ちになった。
もしかしたら、キュウはケイが魔法を使う姿を見て、自分も使いたいと思ったのだろう。
キラキラした目で練習しているが、魔法が使えないと分かった時、キュウが落ち込んでしまうのではないかと考えたからだ。
「…………いや、待てよ。一応魔物なんだから練習すればできるようになるのかな?」
そもそも魔力がなければ魔法は使えないが、特殊な体質でもない限り魔力を持たない生き物は存在しない。
魔物も同じで、弱小とは言ってもキュウも魔物は魔物。
多少なりとも魔力があると思える。
「そういえば、探知術は魔力に反応するんだっけ……」
キュウが魔力を持っているかどうかは、ただ見ただけでは分からない。
それを見る方法がないか考えた時、探知術の機能に目をつけた。
練習の成果もあってか、自分中心に3mくらいの範囲なら探知ができるようになってきた。
ケイが言ったように探知術は、生き物の場合その持っている魔力に反応して存在を探知する。
それを使えば、キュウが魔力を持っているかどうか分かるはずだ。
「キュウ! ちょっとそのままでいてくれるか?」
“コクッ!”
ケイがキュウに探知するから動かないようにいうと、キュウは大人しく頷いた。
「フ~…………、ハッ!」
深呼吸をした後、ケイは魔力をキュウの方に広げてみた。
「…………あっ! ある! キュウお前魔力あるみたいだぞ!」
「っ!?」
“ピョン! ピョン!”
ケイの魔力がキュウに触れると、ほんの僅かながら反応を示した。
それは本当に僅かではあるが間違いなかった。
ケイもキュウに魔力があると分かったら嬉しくなり、思わず声が大きくなってしまった。
自分にも魔法が使えるかもしれないことを説明されたキュウは、嬉しそうにその場を飛び跳ねたのだった。
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