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第4章
第56話
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【しゅじん! しゅじん!】
「おぉ、キュウ! どうした?」
ソフトボールサイズの黒い毛玉と、テニスボールサイズの小さい毛玉跳ねてきた。
ケセランパサランたちだ。
キュウたちケセランパセランも、この15年で変化があった。
まずは最古参のキュウだが、念話を覚えた。
といっても、まだまだ簡単な言葉しか交わせないが、たいした進歩だ。
もう体の大きさは変わらないらしく、15年前と同じ大きさのままだ。
キュウの子供のマルも大きさが同じで、パッと見ただけでは区別はできない。
しかし、魔力量の多さで判断できるので、まだ探知が上手くないラウル以外はちゃんと判別できている。
獣人族の場合、キュウたちは微妙に臭いが違うとのことだが、ケイたちにはよく分からない。
【こども! おなか! へった!】
「あぁ、ちびっ子たちがお腹空いたのか?」
“ピョン!”“ピョン!”“ピョン!”“ピョン!”
いつものようにキュウたちの子供が出来た。
キュウの子がアル、マルの子がカル、ガンの子がサル、ドンの子がタルと名付けた。
命名は完全に手抜きだ。
これまでも別に思い付きだったが、今後どうしようか悩みどころだ。
アル・カル・サル・タルの4匹がキュウに連れられてケイの下にやってきた。
ケイの問いに、4匹は跳ねることで肯定を示しているようだ。
4匹は僅かに魔力量が異なるが、微妙な差なので判別しにくい。
なんにしろ、キュウの時と同様に子供の内はスライムにも劣るレベルの弱さなので、キュウかケイの側にいるように指示してある。
「じゃあ、焼き魚で良いかな?」
【さかな! すき!】
お腹が空いていれば生き物の内臓も食べるキュウたちだが、片言の念話ができるようになって好みがさらに分かってきた。
前世日本人のケイと日本のような文化をした国の日向出身の美花は、魚好きなため食卓には魚が出る時が多い。
それも有ってか、キュウたちも魚がかなり好きらしい。
猪肉や腕鶏の肉も好きなようだが、一番は魚のようだ。
野菜は嫌いではないが、好きでもないといったところだ。
「ほい。焼けたぞ!」
今日の午前中に釣りに行っていたので、かなり新鮮な魚を4匹に4匹ずつ皿に乗せて出してあげた。
「「「「♪♪♪」」」」
4匹とも、小さな口を一生懸命動かして、魚に食らいついていった。
味に満足しているのか、とても嬉しそうだ。
「大きめのやつはキュウたち用だ」
【おおきい! ありがと!】
マル、ガン、ドンの3匹は子供たちと遊びに行っている。
ケイが釣りをしている所から離れた場所でバレーをしていたのが見えたので、お昼になったらみんなと一緒に帰ってくるだろう。
帰って来てから焼けばいいので、とりあえずキュウの分だけ出してあげた。
出された魚を見て、キュウは目をキラキラとさせて感謝してきた。
「冷めないうちに食べな」
【うん!】
別に感謝されなくてもちゃんとお昼は作るのだから、気にする必要はないのだが、涎が出ていて待ちきれないのだろう。
ケイはキュウに食べるように促した。
「ケイ様!」
「ん?」
帰ってきた子供たちの昼食を作って、みんなで食べ、後片付けが終わったころ、シリアコがケイに話しかけてきた。
「最近見張り中に魔物を見ることが増えてきているように思うのですが……」
「シリアコもそう思うのか?」
西の島にも畑を作るようになったので、ケイが土魔法で壁を作った。
ちゃんと見張りができるようになっているので、ケイ、シリアコ、カルロス、レイナルドの順で交代しながら見張るようにしている。
「ということは、ケイ様もお気づきでしたか?」
「あぁ……」
質問に質問で返された形だが、どうやらケイだけでなくシリアコも同じような感覚を覚えていたようだ。
いつもならスライムや虫の魔物を時折見るくらいなのだが、最近見張りをしている時に、頻繁に見るようになった。
しかも、腕鶏の姿も見るようになった。
虫やスライムはある意味どこにでもいるので珍しくもないが、腕鶏が住み着いている範囲はもっと西に離れている。
卵や肉は貴重な食材なので、ケイたちが数を調整している。
なので、数が増えたからこちらの方にも来たと言うのはあり得ない。
「腕鶏が住んでる北西方向で何かあったのかな?」
「かもしれませんね……」
腕鶏のことを告げると、シリアコも同じ考えが浮かんだようだ。
何か強力な魔物でも出現したり、何かの魔物が大繁殖したりしているという可能性がある。
この島の住人はみんな訓練を重ねている。
そのお陰か、大人たちが苦戦するような魔物は存在しない。
しかし、いくら強くても数が多いと危険な目に遭う可能性がある。
そうならないように、早めに手を打つべきだ。
「俺と美花で見て来るよ」
「では、自分もお供します!」
島の中で一番強いのはケイなので、ケイが行くのが一番だろう。
カルロスは今日は見張りで、夜にはレイナルドと交代になる。
なので、2人を連れていく訳にはいかない。
シリアコは昨日見張りだったので、数日は休みだ。
奴隷から解放してくれた感謝から、常にケイの役に立ちたいと思うシリアコは、同行を志願した。
「お前は働き過ぎだ! もうちょっと体を休めるようにしろ!」
「はい……」
ケイが言うように、シリアコはいつも他の住人の仕事を手伝ってばかりで遊んだりしない。
たまには1日のんびり過ごしてもらいたい。
そう思うケイとは反対に、連れて行ってもらえないことにシリアコは若干落ち込んだのだった。
「おぉ、キュウ! どうした?」
ソフトボールサイズの黒い毛玉と、テニスボールサイズの小さい毛玉跳ねてきた。
ケセランパサランたちだ。
キュウたちケセランパセランも、この15年で変化があった。
まずは最古参のキュウだが、念話を覚えた。
といっても、まだまだ簡単な言葉しか交わせないが、たいした進歩だ。
もう体の大きさは変わらないらしく、15年前と同じ大きさのままだ。
キュウの子供のマルも大きさが同じで、パッと見ただけでは区別はできない。
しかし、魔力量の多さで判断できるので、まだ探知が上手くないラウル以外はちゃんと判別できている。
獣人族の場合、キュウたちは微妙に臭いが違うとのことだが、ケイたちにはよく分からない。
【こども! おなか! へった!】
「あぁ、ちびっ子たちがお腹空いたのか?」
“ピョン!”“ピョン!”“ピョン!”“ピョン!”
いつものようにキュウたちの子供が出来た。
キュウの子がアル、マルの子がカル、ガンの子がサル、ドンの子がタルと名付けた。
命名は完全に手抜きだ。
これまでも別に思い付きだったが、今後どうしようか悩みどころだ。
アル・カル・サル・タルの4匹がキュウに連れられてケイの下にやってきた。
ケイの問いに、4匹は跳ねることで肯定を示しているようだ。
4匹は僅かに魔力量が異なるが、微妙な差なので判別しにくい。
なんにしろ、キュウの時と同様に子供の内はスライムにも劣るレベルの弱さなので、キュウかケイの側にいるように指示してある。
「じゃあ、焼き魚で良いかな?」
【さかな! すき!】
お腹が空いていれば生き物の内臓も食べるキュウたちだが、片言の念話ができるようになって好みがさらに分かってきた。
前世日本人のケイと日本のような文化をした国の日向出身の美花は、魚好きなため食卓には魚が出る時が多い。
それも有ってか、キュウたちも魚がかなり好きらしい。
猪肉や腕鶏の肉も好きなようだが、一番は魚のようだ。
野菜は嫌いではないが、好きでもないといったところだ。
「ほい。焼けたぞ!」
今日の午前中に釣りに行っていたので、かなり新鮮な魚を4匹に4匹ずつ皿に乗せて出してあげた。
「「「「♪♪♪」」」」
4匹とも、小さな口を一生懸命動かして、魚に食らいついていった。
味に満足しているのか、とても嬉しそうだ。
「大きめのやつはキュウたち用だ」
【おおきい! ありがと!】
マル、ガン、ドンの3匹は子供たちと遊びに行っている。
ケイが釣りをしている所から離れた場所でバレーをしていたのが見えたので、お昼になったらみんなと一緒に帰ってくるだろう。
帰って来てから焼けばいいので、とりあえずキュウの分だけ出してあげた。
出された魚を見て、キュウは目をキラキラとさせて感謝してきた。
「冷めないうちに食べな」
【うん!】
別に感謝されなくてもちゃんとお昼は作るのだから、気にする必要はないのだが、涎が出ていて待ちきれないのだろう。
ケイはキュウに食べるように促した。
「ケイ様!」
「ん?」
帰ってきた子供たちの昼食を作って、みんなで食べ、後片付けが終わったころ、シリアコがケイに話しかけてきた。
「最近見張り中に魔物を見ることが増えてきているように思うのですが……」
「シリアコもそう思うのか?」
西の島にも畑を作るようになったので、ケイが土魔法で壁を作った。
ちゃんと見張りができるようになっているので、ケイ、シリアコ、カルロス、レイナルドの順で交代しながら見張るようにしている。
「ということは、ケイ様もお気づきでしたか?」
「あぁ……」
質問に質問で返された形だが、どうやらケイだけでなくシリアコも同じような感覚を覚えていたようだ。
いつもならスライムや虫の魔物を時折見るくらいなのだが、最近見張りをしている時に、頻繁に見るようになった。
しかも、腕鶏の姿も見るようになった。
虫やスライムはある意味どこにでもいるので珍しくもないが、腕鶏が住み着いている範囲はもっと西に離れている。
卵や肉は貴重な食材なので、ケイたちが数を調整している。
なので、数が増えたからこちらの方にも来たと言うのはあり得ない。
「腕鶏が住んでる北西方向で何かあったのかな?」
「かもしれませんね……」
腕鶏のことを告げると、シリアコも同じ考えが浮かんだようだ。
何か強力な魔物でも出現したり、何かの魔物が大繁殖したりしているという可能性がある。
この島の住人はみんな訓練を重ねている。
そのお陰か、大人たちが苦戦するような魔物は存在しない。
しかし、いくら強くても数が多いと危険な目に遭う可能性がある。
そうならないように、早めに手を打つべきだ。
「俺と美花で見て来るよ」
「では、自分もお供します!」
島の中で一番強いのはケイなので、ケイが行くのが一番だろう。
カルロスは今日は見張りで、夜にはレイナルドと交代になる。
なので、2人を連れていく訳にはいかない。
シリアコは昨日見張りだったので、数日は休みだ。
奴隷から解放してくれた感謝から、常にケイの役に立ちたいと思うシリアコは、同行を志願した。
「お前は働き過ぎだ! もうちょっと体を休めるようにしろ!」
「はい……」
ケイが言うように、シリアコはいつも他の住人の仕事を手伝ってばかりで遊んだりしない。
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そう思うケイとは反対に、連れて行ってもらえないことにシリアコは若干落ち込んだのだった。
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