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第4章
第66話
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「みんな出てもいいぞ!」
噴火から5日も経つと、噴煙はかなり小さくなった。
余震もなくなったことで、数日前には大人たちの外での活動を許可した。
さらに治まったことで、今日からは子供たちの外出も許可することにした。
「マスクをちゃんとするんだぞ!」
「はい……」
この島には獣人が多い。
ケイの孫たちも獣人のハーフだ。
嗅覚が高いので、外の空気が悪くてきつい。
なので、みんなにはマスクを着用させることにした。
久々の外で子供たちは嬉しいのだろうが、マルたちが亡くなったことがあるので、いまいち元気がない。
レイナルドの次男で、いつもニコニコ元気なラウルも大人しくなっている。
「……まずはみんなでマルたちを弔ってやろうか?」
「……うん」
壊れた家の修理などに当たっていたが、大人たちもみんなどことなく暗い。
誰もが、キュウたちケセランパサランがいることに、少なからず癒されていたからかもしれない。
ケイ自身も吹っ切れないでいるのは確か。
なので、みんなが先を見据えて進んでいくためにも、ケイはまず、マルたちの弔いを行うことを提案した。
ケイたちが住む住居の北側には墓地がある。
そこには、ルイスたちと流れていた時に亡くなった、仲間の獣人たちが眠っている。
ここにも噴火により岩石が落ちてきたらしく、墓標などが壊れていたりした。
そのため、ケイたちは転がっている岩石や、積もっていた火山灰を魔法で海に落とし、綺麗に元と同じように作り直した。
そして、みんなが見守る中、ケセランパサランでもゾンビ化するのか分からないが、小さな棺に入ったマルたちを火葬してあげた。
「……!?」
ケイの右肩にはキュウが乗っている。
キュウにとってみれば、マルとドンは子供で、ガンは孫に当たる。
肩に違和感を覚えてキュウを見てみると、燃え上がる子や孫の姿に、ポロポロと涙を流していた。
「……やっぱりキュウも悲しいのか?」
【……かなしい! でも、マルたち、ながいきできた! しゅじんとみんなのおかげ!】
マルたちが溶岩流を止めにいった時、危険なのにもかかわらず、キュウは全く止めなかった。
子や孫に対してあまり愛情がないのかとも思っていたのだが、今の様子を見る限りそうでもないらしい。
キュウが言うように、ケセランパサランのマルたちは長生きした方だろう。
別名を魔物の餌と呼ばれる彼らが、何年も生きて子供を産むほどまで成長した。
それだけでも、キュウたちからしたら嬉しいことなのかもしれない。
【おせわになったみんなのやくにたった! マルたちえらい! だからかなしくない!】
「…………」
そう言いながらもキュウの涙は止まらない。
人間でも魔物でも、やっぱり悲しいことには変わりないようだ。
泣き続けるキュウを、ケイはただ黙って撫でてあげることしかできなかった。
まだ小さいケセランパサランのアルとカルは美花の両肩に、サルとタルはレイナルドの両肩に乗って、キュと同じく涙を流している。
島のみんなも、その様子に落ち込んでいるように見える。
「やっぱり、キュウたちにも死んでほしくないよ。従魔だからって……」
体が小さいためマルたちの火葬はすぐに終わった。
燃えた後には、小さな骨数本と小さい魔石が転がっているだけだった。
それをそれぞれ骨壺に入れて、土の中に埋めてあげて墓標を作ってあげた。
その墓標を目の前にしても、ケイはやっぱり気持ちは変わらなかった。
「……でも、俺にはこれからはこんなことが続くんだろうな……」
エルフのケイは寿命が長い。
レイナルドたちもきっと長生きするのだろうが、単純に考えるとケイより短いかもしれない。
今この島にいる人間が寿命で亡くなっていくのを、きっとケイは見送らなければならないはずだ。
「寿命のことを考えたら、明らかに私が先に死ぬけどいいの?」
これはケイが美花にプロポーズした時に言われた言葉だ。
その時はいっぱいいっぱいだったので、頭では分かっていても深く考えないで返事をしてしまった気がする。
それが今になって思い知ることになった。
みんなが段々いなくなっていくのを、自分だけは見送らなければならない。
想像しただけで気分が暗くなる。
「長生きするのも良いことだけじゃないってことか……」
エルフに転生した時は、長生きできて好き勝手に生きられると思っていたが、そう考えると考え物だ。
「悩み過ぎても仕方がない。その時はその時で乗り越えていくしかない!」
マルたちの死は悲しい。
しかし、キュウが言うように、マルたちはみんなを救ったのだ。
救われた側は、彼らのためにも精いっぱい生きていくしかない。
そんな風に思い、ケイは傍から見れば分かりやすいカラ元気を出し、壊れたみんなの住宅を再建しに向かった。
やっぱり魔法の存在はありがたい。
壊れた家屋や、火山灰が積もって使い物にならなくなった畑も、ケイを含めた魔力の多い者たちの土魔法によって数日中に元に戻すことができ、また村には平和な日常が戻ってきた。
突如起こった噴火だったが、そのまま噴火は治まり、島の住人に悲しみと島の拡大をもたらしただけだった。
噴火から5日も経つと、噴煙はかなり小さくなった。
余震もなくなったことで、数日前には大人たちの外での活動を許可した。
さらに治まったことで、今日からは子供たちの外出も許可することにした。
「マスクをちゃんとするんだぞ!」
「はい……」
この島には獣人が多い。
ケイの孫たちも獣人のハーフだ。
嗅覚が高いので、外の空気が悪くてきつい。
なので、みんなにはマスクを着用させることにした。
久々の外で子供たちは嬉しいのだろうが、マルたちが亡くなったことがあるので、いまいち元気がない。
レイナルドの次男で、いつもニコニコ元気なラウルも大人しくなっている。
「……まずはみんなでマルたちを弔ってやろうか?」
「……うん」
壊れた家の修理などに当たっていたが、大人たちもみんなどことなく暗い。
誰もが、キュウたちケセランパサランがいることに、少なからず癒されていたからかもしれない。
ケイ自身も吹っ切れないでいるのは確か。
なので、みんなが先を見据えて進んでいくためにも、ケイはまず、マルたちの弔いを行うことを提案した。
ケイたちが住む住居の北側には墓地がある。
そこには、ルイスたちと流れていた時に亡くなった、仲間の獣人たちが眠っている。
ここにも噴火により岩石が落ちてきたらしく、墓標などが壊れていたりした。
そのため、ケイたちは転がっている岩石や、積もっていた火山灰を魔法で海に落とし、綺麗に元と同じように作り直した。
そして、みんなが見守る中、ケセランパサランでもゾンビ化するのか分からないが、小さな棺に入ったマルたちを火葬してあげた。
「……!?」
ケイの右肩にはキュウが乗っている。
キュウにとってみれば、マルとドンは子供で、ガンは孫に当たる。
肩に違和感を覚えてキュウを見てみると、燃え上がる子や孫の姿に、ポロポロと涙を流していた。
「……やっぱりキュウも悲しいのか?」
【……かなしい! でも、マルたち、ながいきできた! しゅじんとみんなのおかげ!】
マルたちが溶岩流を止めにいった時、危険なのにもかかわらず、キュウは全く止めなかった。
子や孫に対してあまり愛情がないのかとも思っていたのだが、今の様子を見る限りそうでもないらしい。
キュウが言うように、ケセランパサランのマルたちは長生きした方だろう。
別名を魔物の餌と呼ばれる彼らが、何年も生きて子供を産むほどまで成長した。
それだけでも、キュウたちからしたら嬉しいことなのかもしれない。
【おせわになったみんなのやくにたった! マルたちえらい! だからかなしくない!】
「…………」
そう言いながらもキュウの涙は止まらない。
人間でも魔物でも、やっぱり悲しいことには変わりないようだ。
泣き続けるキュウを、ケイはただ黙って撫でてあげることしかできなかった。
まだ小さいケセランパサランのアルとカルは美花の両肩に、サルとタルはレイナルドの両肩に乗って、キュと同じく涙を流している。
島のみんなも、その様子に落ち込んでいるように見える。
「やっぱり、キュウたちにも死んでほしくないよ。従魔だからって……」
体が小さいためマルたちの火葬はすぐに終わった。
燃えた後には、小さな骨数本と小さい魔石が転がっているだけだった。
それをそれぞれ骨壺に入れて、土の中に埋めてあげて墓標を作ってあげた。
その墓標を目の前にしても、ケイはやっぱり気持ちは変わらなかった。
「……でも、俺にはこれからはこんなことが続くんだろうな……」
エルフのケイは寿命が長い。
レイナルドたちもきっと長生きするのだろうが、単純に考えるとケイより短いかもしれない。
今この島にいる人間が寿命で亡くなっていくのを、きっとケイは見送らなければならないはずだ。
「寿命のことを考えたら、明らかに私が先に死ぬけどいいの?」
これはケイが美花にプロポーズした時に言われた言葉だ。
その時はいっぱいいっぱいだったので、頭では分かっていても深く考えないで返事をしてしまった気がする。
それが今になって思い知ることになった。
みんなが段々いなくなっていくのを、自分だけは見送らなければならない。
想像しただけで気分が暗くなる。
「長生きするのも良いことだけじゃないってことか……」
エルフに転生した時は、長生きできて好き勝手に生きられると思っていたが、そう考えると考え物だ。
「悩み過ぎても仕方がない。その時はその時で乗り越えていくしかない!」
マルたちの死は悲しい。
しかし、キュウが言うように、マルたちはみんなを救ったのだ。
救われた側は、彼らのためにも精いっぱい生きていくしかない。
そんな風に思い、ケイは傍から見れば分かりやすいカラ元気を出し、壊れたみんなの住宅を再建しに向かった。
やっぱり魔法の存在はありがたい。
壊れた家屋や、火山灰が積もって使い物にならなくなった畑も、ケイを含めた魔力の多い者たちの土魔法によって数日中に元に戻すことができ、また村には平和な日常が戻ってきた。
突如起こった噴火だったが、そのまま噴火は治まり、島の住人に悲しみと島の拡大をもたらしただけだった。
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