87 / 375
第5章
第87話
しおりを挟む
「ウラーッ!!」
迫り来る弾を左手のナイフで防ぎ、時には躱し、リカルドはケイとの距離を詰める。
そして、ナイフの投擲でケイの逃走経路を塞ぐように誘導し、そのまま木剣で上段からケイに斬りかかる。
「くっ!?」
躱すのが不可能なほどに接近され、ケイはリカルドの木剣を左手に持つ短刀で防ぎにかかる。
ただの木を削って作っただけの短刀では、魔力を纏っても大した耐久力がなく、攻撃を防げても1発で砕けてしまった。
『くそっ!! 次はやばないな……』
元々、木の短刀は2本しかもっていなかった。
こんなことなら、もっと作っておくべきだった。
ケイにとって、短刀は防御用に持っているだけだが、銃が通用しない今の状況では重要な存在だ。
リカルドの剣での攻撃は強力の一言。
武器無しで防ごうとしたら、魔力を多めに使わないと無事では済まない。
ケイが魔力が多いと言っても、無限じゃない。
「…………仕方がない」
あんな剣の攻撃なんて、痛そうで食らいたくない。
なので、ケイは奥の手を出すことにした。
文字通り、魔法の指輪から出したのは、もう1丁の銃だった。
「えっ!?」
「っ!? まだ本気じゃなかったのですかな?」
1丁でも少々厄介なのに、もう1丁出てくるとは思わなかった。
両手に銃を持ったケイに、リカルドは警戒心が上がった。
驚いたのは、闘技場内への出入り口で見ている美花も同じだった。
ケイがそんな戦法を取るなんて、一緒になって初めて見たからだ。
「本気でしたよ。しかしあなた相手に手加減は必要ないでしょ?」
ここまでは全力と言えば全力。
ただ、リカルドへ大怪我をさせないようにとの配慮を考えたままでの全力だ。
しかし、ケイの攻撃を受けてもピンピンしている所を見ると、むしろもっと手数を増やしてダメージを与える必要がある。
これまで考えていた戦闘スタイルだが、ぶっつけでやってみることにした。
「………………?」
ケイの言葉を聞いたリカルドは、僅かに手が震えた。
一見、舐めているような発言にも取れる言葉だったため、怒りで震えているのかとケイは思った。
しかし、その口元は怒りのようには思えない。
「最高だ!!こんな楽しいのは久々だぜ!!」
腹を立てて震えていたのかと思ったのだが、やっぱり違ったようだ。
リカルドはこれまでで一番の笑顔になり、木剣を強く握った。
さっきの震えは、ただの武者震いだったらしい。
しかも、口調が完全に素になっている。
「行くぞ!!」
2丁拳銃スタイルでマジになったケイに、同じくマジになったリカルドは、何のためらいもなく地を蹴った。
素になったからなのか、気のせいかもしれないがまた速度が上がったようにも見える。
「ハッ!!」
“パンッ!!”“パンッ!!”
接近してくるリカルドに、ケイは両手の銃で魔弾を撃って迎撃を計る。
2丁になり飛んで来る弾が増えたにもかかわらず、2丁にしてもリカルドは防ぎ、躱して付いてくる。
『完全に慣れたか……』
ケイが思ったように、どうやらリカルドはここまでの戦いで、完全に銃への対処に慣れてしまったようた。
銃口から一直線に高速の弾を放出するのが銃。
つまりは銃口の射線に注意をすれば当たらない。
しかし、それが分かっていても、実行に移せるのは話が別。
この短期間でそれができるようになるとは、恐るべき戦闘センスだ。
「『だが銃だけじゃないぜ!』はっ!!」
「んっ!?」
銃がもう通用していないが、ケイは焦ってはいない。
接近してくるリカルドへ、まだ距離のあるのにもかかわらず蹴りを放つ。
何の意味があるのか分からず、リカルドは不思議に思った。
「ガッ!?」
当然ケイが距離を誤って空振りしたわけではない。
蹴りによってサッカーボール大の魔力の球を放ったのだ。
かなりの勢いで近付き、距離もないことから、リカルドは避けられない。
しかし、リカルドは超反応をして、剣で受け止め、そのまま上へ弾き飛ばした。
「っ!?」
魔力の球を弾いて、一時リカルドは胴の部分がガラ空きになる。
「ぐっ!?」
そこを逃さず、ケイは脇腹にミドルキックをクリーンヒットさせる。
当然拳で殴られたよりも痛く、リカルドは一瞬呻く。
しかし、蹴られて体勢が崩れたまま、ケイへ剣を薙ぐ。
それを予期していたかのように、ケイはバックステップして距離を取った。
「……………」「……………」
ケイとリカルドはお互い無言でにらみ合う。
2丁拳銃での戦闘スタイルは、アウトインアウト。
銃と魔法で相手の体勢を崩し、その一瞬に接近、一撃加えて離脱する。
先程の攻防で、リカルドはケイの攻略方法を、ケイは次はどんな方法で意表を突くかを、お互い模索している。
「ハッ!!」
「っ!?」
リカルドが動かないならケイには好都合。
離れた位置から銃と魔法で痛めつければいい。
避けられても、リカルドを動かし続けて体力を消耗させる。
エルフという人種のおかげか、魔力は潤沢にある。
いくらリカルドでも、さすがに体力が無尽蔵という理不尽なことは言うまい。
体力を削って速度が落ちれば、距離を詰められずに銃と魔法でケイの勝利が確定する。
それが分かっているリカルドは、これまで通り距離詰めなければならない。
自分の有利な土俵に引きずり込んだのは、ケイの方だった。
迫り来る弾を左手のナイフで防ぎ、時には躱し、リカルドはケイとの距離を詰める。
そして、ナイフの投擲でケイの逃走経路を塞ぐように誘導し、そのまま木剣で上段からケイに斬りかかる。
「くっ!?」
躱すのが不可能なほどに接近され、ケイはリカルドの木剣を左手に持つ短刀で防ぎにかかる。
ただの木を削って作っただけの短刀では、魔力を纏っても大した耐久力がなく、攻撃を防げても1発で砕けてしまった。
『くそっ!! 次はやばないな……』
元々、木の短刀は2本しかもっていなかった。
こんなことなら、もっと作っておくべきだった。
ケイにとって、短刀は防御用に持っているだけだが、銃が通用しない今の状況では重要な存在だ。
リカルドの剣での攻撃は強力の一言。
武器無しで防ごうとしたら、魔力を多めに使わないと無事では済まない。
ケイが魔力が多いと言っても、無限じゃない。
「…………仕方がない」
あんな剣の攻撃なんて、痛そうで食らいたくない。
なので、ケイは奥の手を出すことにした。
文字通り、魔法の指輪から出したのは、もう1丁の銃だった。
「えっ!?」
「っ!? まだ本気じゃなかったのですかな?」
1丁でも少々厄介なのに、もう1丁出てくるとは思わなかった。
両手に銃を持ったケイに、リカルドは警戒心が上がった。
驚いたのは、闘技場内への出入り口で見ている美花も同じだった。
ケイがそんな戦法を取るなんて、一緒になって初めて見たからだ。
「本気でしたよ。しかしあなた相手に手加減は必要ないでしょ?」
ここまでは全力と言えば全力。
ただ、リカルドへ大怪我をさせないようにとの配慮を考えたままでの全力だ。
しかし、ケイの攻撃を受けてもピンピンしている所を見ると、むしろもっと手数を増やしてダメージを与える必要がある。
これまで考えていた戦闘スタイルだが、ぶっつけでやってみることにした。
「………………?」
ケイの言葉を聞いたリカルドは、僅かに手が震えた。
一見、舐めているような発言にも取れる言葉だったため、怒りで震えているのかとケイは思った。
しかし、その口元は怒りのようには思えない。
「最高だ!!こんな楽しいのは久々だぜ!!」
腹を立てて震えていたのかと思ったのだが、やっぱり違ったようだ。
リカルドはこれまでで一番の笑顔になり、木剣を強く握った。
さっきの震えは、ただの武者震いだったらしい。
しかも、口調が完全に素になっている。
「行くぞ!!」
2丁拳銃スタイルでマジになったケイに、同じくマジになったリカルドは、何のためらいもなく地を蹴った。
素になったからなのか、気のせいかもしれないがまた速度が上がったようにも見える。
「ハッ!!」
“パンッ!!”“パンッ!!”
接近してくるリカルドに、ケイは両手の銃で魔弾を撃って迎撃を計る。
2丁になり飛んで来る弾が増えたにもかかわらず、2丁にしてもリカルドは防ぎ、躱して付いてくる。
『完全に慣れたか……』
ケイが思ったように、どうやらリカルドはここまでの戦いで、完全に銃への対処に慣れてしまったようた。
銃口から一直線に高速の弾を放出するのが銃。
つまりは銃口の射線に注意をすれば当たらない。
しかし、それが分かっていても、実行に移せるのは話が別。
この短期間でそれができるようになるとは、恐るべき戦闘センスだ。
「『だが銃だけじゃないぜ!』はっ!!」
「んっ!?」
銃がもう通用していないが、ケイは焦ってはいない。
接近してくるリカルドへ、まだ距離のあるのにもかかわらず蹴りを放つ。
何の意味があるのか分からず、リカルドは不思議に思った。
「ガッ!?」
当然ケイが距離を誤って空振りしたわけではない。
蹴りによってサッカーボール大の魔力の球を放ったのだ。
かなりの勢いで近付き、距離もないことから、リカルドは避けられない。
しかし、リカルドは超反応をして、剣で受け止め、そのまま上へ弾き飛ばした。
「っ!?」
魔力の球を弾いて、一時リカルドは胴の部分がガラ空きになる。
「ぐっ!?」
そこを逃さず、ケイは脇腹にミドルキックをクリーンヒットさせる。
当然拳で殴られたよりも痛く、リカルドは一瞬呻く。
しかし、蹴られて体勢が崩れたまま、ケイへ剣を薙ぐ。
それを予期していたかのように、ケイはバックステップして距離を取った。
「……………」「……………」
ケイとリカルドはお互い無言でにらみ合う。
2丁拳銃での戦闘スタイルは、アウトインアウト。
銃と魔法で相手の体勢を崩し、その一瞬に接近、一撃加えて離脱する。
先程の攻防で、リカルドはケイの攻略方法を、ケイは次はどんな方法で意表を突くかを、お互い模索している。
「ハッ!!」
「っ!?」
リカルドが動かないならケイには好都合。
離れた位置から銃と魔法で痛めつければいい。
避けられても、リカルドを動かし続けて体力を消耗させる。
エルフという人種のおかげか、魔力は潤沢にある。
いくらリカルドでも、さすがに体力が無尽蔵という理不尽なことは言うまい。
体力を削って速度が落ちれば、距離を詰められずに銃と魔法でケイの勝利が確定する。
それが分かっているリカルドは、これまで通り距離詰めなければならない。
自分の有利な土俵に引きずり込んだのは、ケイの方だった。
0
あなたにおすすめの小説
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる