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第10章
第213話
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【これからどこいくの?】
懐かしさもどこか感じながら1日町中を見て回ったケイ。
旅館のような宿屋で一泊し、翌朝旅立つことにした。
宿屋を出て、海を背にして歩き出したケイに、クウの頭に乗った状態のキュウが尋ねてきた。
「東に向かう。ここより大きな町があるらしいぞ」
【へ~……】
ここ反倉という町は、大陸との交易で賑わっている大きめの町なのだが、西側の地方ではここが一番発展しているらしく、他には村が幾つかあるだけらしい。
開発もあまりされていないらしく、観光をしたいとなると東へ向かった方が良いと町の人に言われた。
村は村で何か面白い事がありそうだが、日向の都会がどんなものか知っておきたい。
そう思ったため、ケイは東へ向かうことにしたのだ。
「山越えが厳しいらしいぞ?」
【たのしみ!】「ワンッ!」
魔物が出ると聞いて、キュウとクウはどんなのが出てくるのか楽しみなようだ。
聞いた話だと、その大きな町へは山を越えないといけないらしく、その山越えが厳しいらしい。
魔物も出るので、山越えをする商人の間では、しっかりとした準備をして挑むのが普通になっている。
大陸の横断をしてきたケイたちからすれば山越えなんて苦でもないだろうが、念のため食料などを確保してから向かった。
「普通に行って1週間らしい。景色を見ながらのんびり行こうか?」
【うん!】「ワウッ!」
どうせ急ぐ旅でもない。
ケイたちは、山から眺める景色も楽しみつつ進むことにした。
「猪が多いな……」
東へ向かうと、まず緒伝という山に入った。
そして、ケイが思わず呟いてしまう程の回数、猪の魔物と遭遇した。
反倉から出て途中で寄った月和村の人の話だと、最近大繁殖したらしく村にも被害が及び始めているとの話だった。
ケイが冒険者をしているというと、奧電へ向かうなら少しでも多くの猪を退治してくれるとありがたいと言っていた。
大陸の冒険者組合は日向にはなく、冒険者という職業は有名ではない。
日向へ来ている冒険者への情報提供をする場が、大きな港町に点在しているというだけだ。
そのため、冒険者は毎回職業を説明することになるようだ。
【おにく!】「ワォ~ン!」
アンヘル島にも猪の魔物がいるが、はっきり言って食料として見ている所がある。
島の住人の人数とかを考えて数の管理をしているので、ここと違って大繁殖なんてしないが、頻繁に見ていないといつの間にか増えているということもあるほど繁殖力が高いのが困った魔物だ。
数頭の猪を前にして、キュウとクウはご馳走だとはしゃぎ回っている。
「ん~……、全部を持って行くのは難しいかもな……」
キュウたちが喜んでいる横で、ケイは1人悩んでいた。
今日倒した猪の数は7頭。
全部が軽トラック以上の大きさをしており、魔法の指輪を使っても全部を持って行くのは不可能だ。
しかも、解体できるのはケイだけなため、全部を解体するだけでも時間がかかる。
仕方がないので、ケイは魔法を使って一気に解体を済ませる。
【たべよう!】「ワウッ!」
「いや、無理だって」
解体したはいいが、やはり何頭かの肉が魔法の指輪に入れられず、焼却処分するしかないようだ。
魔物とは言っても生き物の命を奪ったのだから、食べられるのに捨てるのはもったいない。
ケイがちょっと残念に思っていると、キュウたちがこの場で食べることを要求してきた。
しかし、1頭だけでも無理なのに、全部なんてとてもではないが食べきれるわけがない。
「……とりあえず調理して食べるか?」
【わ~い!】「ハッハッハッ……!」
捨てるにしても、ケイはとりあえず食べてから考えることにした。
この世界に来てから、ケイは料理が趣味になっている。
キュウとクウも、ケイの料理が大好きだ。
料理をしようとしているケイを見て、大喜びしている。
ケイの料理は前世の記憶からを再現しているだけなのだが、島のみんなには料理の天才と言われたりして困った時もあった。
「脂もあるし、豚カツでも作るか? まぁ、豚じゃないけど……」
【とんかつ!】「ワウッ!」
豚カツと聞いてキュウとクウは更に喜ぶ。
肉好きの2匹は、肉料理の中でも豚カツが大好きなので、思いついたのがこれだった。
豚ではないがラード(脂)も大量にあるので、ケイは鍋に入れて揚げ物の準備を始める。
「んっ? いい匂いがすると思ったらこんな所で料理しているのか?」
ケイが豚カツを揚げていると、1人の男が近寄ってきた。
見た目の年齢的には20代前半、ケイと同じくらいの身長で、髪は総髪のなかなかのイケメンだ。
ジャ〇ーズ系というより、エグ〇イル系のちょっとワイルドな感じを醸し出している。
腰に刀を差しているのと服装を見る限り、浪人といったところだろうか。
ケイも見た目的には同じくらいの年齢に見えるからだろうか、彼は気安く声をかけてきた。
「あぁ、お前も食うか? 猪が大量に捕れたんだよ」
「えっ!? マジで!?」
肉はまだまだある。
どうせ処分するしかなくなるのだから、彼にも食べさせることにした。
「俺は織……、善貞だ。今日飯食ってなかったんで、ありがてえよ」
「……そうか。俺はケイだ。好きなだけ食ってくれ」
彼こと善貞は、腹を抑えながらケイから豚カツが乗った皿を受け取る。
丁度腹から音が鳴っていたので、嘘を言っている様には思えない。
しかし、先程自分の名前を言おうとして一瞬止まった。
偽名を言ったのか、それとも名字があるのかといったところだろうか。
ケイは恐らく後者だと思う。
というのも、善貞が腰に下げている刀はだいぶ拵えが良さそうに見える。
もしかしたら、どっかの武家の子なのかもしれない。
日向の国では平民には名字がない。
将軍家や大名家、それらに仕える武家の者たちにしか名字は与えられないらしい。
名字があるだけで平民からは敬われる存在になるのだそうだ。
もしかしたら、何か理由があるかもしれないので、ケイは善貞の名字のことは無視することにした。
「あ~……食い過ぎた」
しばらく豚カツを食べまくった善貞は、膨れた腹をさすりつつ横になって動かない。
相当腹が減っていたのか、彼は2キロ近くの肉を消費した。
豚カツには色々なソースを用意しており、大根おろし醤油などさっぱりできる物もあったが、そんなに揚げ物を食べて胸焼けしないのかと聞きたくなるほどだった。
【おなかいっぱい!】「ワウ~ッ!」
キュウとクウも善貞に触発されたのか、張り合うように豚カツを食べまくり、だらしなく寝転んでいる。
「結局捨てるしかないか……」
「んっ? それ捨てるのか?」
ケイの魔法の指輪には1頭分しか入らない。
豚カツにして食べたが、6頭分の肉が余る。
肉に困ることがなくなったのはいいが、処分するしかないようだ。
しかし、ケイの呟きが耳に入った善貞は、意外そうな表情になる。
「いらないなら貰っていいか?」
「あぁ……、構わないぞ」
どうせ捨てるくらいならばと、ケイは善貞へ肉を譲ることにした。
「ありがとよ」
“スッ!!”
「………………」
どうやら善貞は魔法の指輪を持っていたようで、6頭分の肉があっという間に収納された。
それを見て、ケイは色々と突っ込みたい気分になる。
そもそも、そんな大容量の魔法の指輪を持っていること。
魔法の指輪を持っているのに、保存用の食料を入れていなかったのかということ。
そして、その魔法の指輪を隠そうとせずにいるなんて、本気で身分を隠す気があるのかということをだ。
全部聞きたいところだが、ケイの勘がそれを止めている。
面倒なことに巻き込まれる気がしたからだ。
そのため、ケイは無言でそれを流すことにしたのだった。
懐かしさもどこか感じながら1日町中を見て回ったケイ。
旅館のような宿屋で一泊し、翌朝旅立つことにした。
宿屋を出て、海を背にして歩き出したケイに、クウの頭に乗った状態のキュウが尋ねてきた。
「東に向かう。ここより大きな町があるらしいぞ」
【へ~……】
ここ反倉という町は、大陸との交易で賑わっている大きめの町なのだが、西側の地方ではここが一番発展しているらしく、他には村が幾つかあるだけらしい。
開発もあまりされていないらしく、観光をしたいとなると東へ向かった方が良いと町の人に言われた。
村は村で何か面白い事がありそうだが、日向の都会がどんなものか知っておきたい。
そう思ったため、ケイは東へ向かうことにしたのだ。
「山越えが厳しいらしいぞ?」
【たのしみ!】「ワンッ!」
魔物が出ると聞いて、キュウとクウはどんなのが出てくるのか楽しみなようだ。
聞いた話だと、その大きな町へは山を越えないといけないらしく、その山越えが厳しいらしい。
魔物も出るので、山越えをする商人の間では、しっかりとした準備をして挑むのが普通になっている。
大陸の横断をしてきたケイたちからすれば山越えなんて苦でもないだろうが、念のため食料などを確保してから向かった。
「普通に行って1週間らしい。景色を見ながらのんびり行こうか?」
【うん!】「ワウッ!」
どうせ急ぐ旅でもない。
ケイたちは、山から眺める景色も楽しみつつ進むことにした。
「猪が多いな……」
東へ向かうと、まず緒伝という山に入った。
そして、ケイが思わず呟いてしまう程の回数、猪の魔物と遭遇した。
反倉から出て途中で寄った月和村の人の話だと、最近大繁殖したらしく村にも被害が及び始めているとの話だった。
ケイが冒険者をしているというと、奧電へ向かうなら少しでも多くの猪を退治してくれるとありがたいと言っていた。
大陸の冒険者組合は日向にはなく、冒険者という職業は有名ではない。
日向へ来ている冒険者への情報提供をする場が、大きな港町に点在しているというだけだ。
そのため、冒険者は毎回職業を説明することになるようだ。
【おにく!】「ワォ~ン!」
アンヘル島にも猪の魔物がいるが、はっきり言って食料として見ている所がある。
島の住人の人数とかを考えて数の管理をしているので、ここと違って大繁殖なんてしないが、頻繁に見ていないといつの間にか増えているということもあるほど繁殖力が高いのが困った魔物だ。
数頭の猪を前にして、キュウとクウはご馳走だとはしゃぎ回っている。
「ん~……、全部を持って行くのは難しいかもな……」
キュウたちが喜んでいる横で、ケイは1人悩んでいた。
今日倒した猪の数は7頭。
全部が軽トラック以上の大きさをしており、魔法の指輪を使っても全部を持って行くのは不可能だ。
しかも、解体できるのはケイだけなため、全部を解体するだけでも時間がかかる。
仕方がないので、ケイは魔法を使って一気に解体を済ませる。
【たべよう!】「ワウッ!」
「いや、無理だって」
解体したはいいが、やはり何頭かの肉が魔法の指輪に入れられず、焼却処分するしかないようだ。
魔物とは言っても生き物の命を奪ったのだから、食べられるのに捨てるのはもったいない。
ケイがちょっと残念に思っていると、キュウたちがこの場で食べることを要求してきた。
しかし、1頭だけでも無理なのに、全部なんてとてもではないが食べきれるわけがない。
「……とりあえず調理して食べるか?」
【わ~い!】「ハッハッハッ……!」
捨てるにしても、ケイはとりあえず食べてから考えることにした。
この世界に来てから、ケイは料理が趣味になっている。
キュウとクウも、ケイの料理が大好きだ。
料理をしようとしているケイを見て、大喜びしている。
ケイの料理は前世の記憶からを再現しているだけなのだが、島のみんなには料理の天才と言われたりして困った時もあった。
「脂もあるし、豚カツでも作るか? まぁ、豚じゃないけど……」
【とんかつ!】「ワウッ!」
豚カツと聞いてキュウとクウは更に喜ぶ。
肉好きの2匹は、肉料理の中でも豚カツが大好きなので、思いついたのがこれだった。
豚ではないがラード(脂)も大量にあるので、ケイは鍋に入れて揚げ物の準備を始める。
「んっ? いい匂いがすると思ったらこんな所で料理しているのか?」
ケイが豚カツを揚げていると、1人の男が近寄ってきた。
見た目の年齢的には20代前半、ケイと同じくらいの身長で、髪は総髪のなかなかのイケメンだ。
ジャ〇ーズ系というより、エグ〇イル系のちょっとワイルドな感じを醸し出している。
腰に刀を差しているのと服装を見る限り、浪人といったところだろうか。
ケイも見た目的には同じくらいの年齢に見えるからだろうか、彼は気安く声をかけてきた。
「あぁ、お前も食うか? 猪が大量に捕れたんだよ」
「えっ!? マジで!?」
肉はまだまだある。
どうせ処分するしかなくなるのだから、彼にも食べさせることにした。
「俺は織……、善貞だ。今日飯食ってなかったんで、ありがてえよ」
「……そうか。俺はケイだ。好きなだけ食ってくれ」
彼こと善貞は、腹を抑えながらケイから豚カツが乗った皿を受け取る。
丁度腹から音が鳴っていたので、嘘を言っている様には思えない。
しかし、先程自分の名前を言おうとして一瞬止まった。
偽名を言ったのか、それとも名字があるのかといったところだろうか。
ケイは恐らく後者だと思う。
というのも、善貞が腰に下げている刀はだいぶ拵えが良さそうに見える。
もしかしたら、どっかの武家の子なのかもしれない。
日向の国では平民には名字がない。
将軍家や大名家、それらに仕える武家の者たちにしか名字は与えられないらしい。
名字があるだけで平民からは敬われる存在になるのだそうだ。
もしかしたら、何か理由があるかもしれないので、ケイは善貞の名字のことは無視することにした。
「あ~……食い過ぎた」
しばらく豚カツを食べまくった善貞は、膨れた腹をさすりつつ横になって動かない。
相当腹が減っていたのか、彼は2キロ近くの肉を消費した。
豚カツには色々なソースを用意しており、大根おろし醤油などさっぱりできる物もあったが、そんなに揚げ物を食べて胸焼けしないのかと聞きたくなるほどだった。
【おなかいっぱい!】「ワウ~ッ!」
キュウとクウも善貞に触発されたのか、張り合うように豚カツを食べまくり、だらしなく寝転んでいる。
「結局捨てるしかないか……」
「んっ? それ捨てるのか?」
ケイの魔法の指輪には1頭分しか入らない。
豚カツにして食べたが、6頭分の肉が余る。
肉に困ることがなくなったのはいいが、処分するしかないようだ。
しかし、ケイの呟きが耳に入った善貞は、意外そうな表情になる。
「いらないなら貰っていいか?」
「あぁ……、構わないぞ」
どうせ捨てるくらいならばと、ケイは善貞へ肉を譲ることにした。
「ありがとよ」
“スッ!!”
「………………」
どうやら善貞は魔法の指輪を持っていたようで、6頭分の肉があっという間に収納された。
それを見て、ケイは色々と突っ込みたい気分になる。
そもそも、そんな大容量の魔法の指輪を持っていること。
魔法の指輪を持っているのに、保存用の食料を入れていなかったのかということ。
そして、その魔法の指輪を隠そうとせずにいるなんて、本気で身分を隠す気があるのかということをだ。
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