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第10章
第252話
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「おいおい、マジかよ……?」「またかよ……」
魔法を使う蛇であるマノマンバを倒す手助けをしたケイだが、日向の兵たちがマノマンバを倒すと、またも魔法陣が浮かび上がってきた。
それを見た兵士たちは、いつまで続くのかといったような表情で出てくる魔物を見つめた。
「打ち止めだな……」
その魔法陣から出てきた魔物を見て、ケイは一言呟く。
魔法陣から出てきたのは、アスプやマノマンバのような巨大な蛇ではなかった。
人間よりも少し大きいくらいの蛇の魔物で、どこの地域でもよく見る魔物たちだった。
「そこらにいる蛇の魔物だ! あんなの日向の兵なら相手にならないだろ?」
魔法陣から出てきた魔物を見て、善貞が反応する。
マノマンバほどの魔物を見た後だからだろうか、出てきた魔物の落差に興ざめしたような感覚を覚える。
善貞が言うように、あの程度の魔物が数を増やしたところで、日向の者たちなら魔闘術を使うまでもなく倒せてしまうだろう。
「流石にマノマンバ以上の魔物は手に入れられなかったんだろ?」
「そうか……」
そもそも、マノマンバ程の魔物が日向の国にいることの方がおかしい。
ファーブニルもそうだが、どうやって手に入れたのか聞いてみたいところだ。
どうやら、このまま自分の出番がないことに残念な思いがあるのか、善貞は残念そうに呟いたのだった。
◆◆◆◆◆
「おいっ、上重!! どうなっているんだ!? マノマンバ程の魔物まで殺られてしまったではないか!?」
奥の手として出したマノマンバが、ケイの攻撃によってあっという間にただの毒蛇に変わってしまい、日向の兵たちによって斬り刻まれてしまった。
東門も巨大蝮のヴィーボラを倒す寸前だ。
そこも、もう魔物で対処するのは難しい。
「魔物の数ももう限界だぞ!? どうするんだ!? 貴様のせいだぞ!!」
折角集めた魔物たちがどんどんと殺られて行き、もうたいして強くない魔物を出すしかなくなっている。
そうなったら、城の中の兵を出して対応するしかなくなる。
しかし、所詮は数で劣る身。
城内の兵も、抵抗するよりも降伏する手段を取る可能性が高い。
バカでもそれが分かっているのか、佐志峰は上重に喚き散らす。
「五月蠅い!! バカは黙っていろ!!」
「なっ……!?」
追い込まれているのは上重も一緒だ。
もう、城内へ攻め込まれるのは必定。
ならば、どうすれれば生き残れるかを必死に考えているのに、バカが側で喚いたため、おもわず本音が出てしまった。
上重のその言葉に佐志峰は顔を引きつらせ、一瞬場は凍った。
バカで忠誠を誓っていなくても、佐志峰の方が立場は上。
不敬により首を斬られても文句を言えない状況だ。
「貴様!! そこのお前!! こいつを……」
“ザシュ!!”
この場にいるのは佐志峰と上重。
そして、若い伝令役が1人いるだけだ。
暴言を吐かれた佐志峰が、この場で上重を斬り殺そうと、その伝令役に斬首の命を告げようとした時、上重の刀が佐志峰の腹を斬り裂いていた。
「ぐはっ!! き、貴様……」
腹を掻っ捌かれ、佐志峰は血を吐き出して床へと倒れ伏す。
大量の出血を見る限り、もう長くはないだろう。
部下による不意の一撃が信じられず、佐志峰は上重へ恨みがましい目を向ける。
血だまりが広がる中、視線以外は動かなくなっていった。
「……殿は切腹なさった。首を斬り落とせ!」
「了解しました!」
残り僅かの命であろう佐志峰に、上重は冷酷にその言葉を伝令役の者に告げた。
それを聞いて、佐志峰は分かった。
もう捕まるのは仕方がないこと。
ならば、全ては佐志峰の指示に従ったことだと、上重は言い逃れるつもりなのかもしれない。
伝令役の者もそれが分かったのか、腰の刀を抜いて倒れている佐志峰の側へと足を動かした。
「クックック……」
「……しぶといな。……気味が悪い、殺れ!」
伝令役の男が首を斬り落とそうと構えた時、動かなくなった佐志峰が急に笑い出した。
上重たちは一瞬驚いたが、所詮腹は斬り裂かれている。
最期に恨みごとでも言おうとしているのかと、上重は伝令役にさっさと首を斬るように指示する。
「っ!? なっ!?」
「な、何だとっ!?」
刀を振り下ろす前に、どこから現れたのか分からない蛇たちに、伝令兵は全身を包まれていた。
とても首を斬り落とせる状況ではない。
それに気付いた上重も、いつの間にかうじゃうじゃと集まって来た蛇たちに、足下から絡みつかれて動けなくなっていった。
「これまで懸命に馬鹿を演じてきたが、それもここまでのようだな……」
「「っ!?」」
蛇たちに絡みつかれ、動けなくなっている上重と伝令兵が悶えていると、急に聞いたことも無いような声色の言葉が聞こえて来た。
2人がその声の聞こえた方に目を向けると、ありえない現象が起きていた。
「…………と、…………の?」
「バ、バカな……!?」
首を斬り落とす、落とさないの問題ではなく、もう死ぬはずの佐志峰がいつの間にか立ち上がっていたのだ。
腹を斬った上重も、それを見ていた伝令兵も、あまりの出来事に信じられないといった表情に変わる。
そして、立っている佐志峰の顔を見る限り、まるで斬られたことがなんてことないような顔をしていることに、異形の者を見ている気分になり、顔を青くして全身から冷や汗を流す。
「フッ! お前に斬られるまでもなく、佐志峰ならこの世にはもういない」
そう言って、佐志峰は蛇のせいで動けなくなっている伝令兵の手から、刀をすんなりと奪い取る。
「この城に来た時から……な!」
「ぐふっ!!」
言葉を吐きながら、佐志峰は奪った刀で伝令兵の心臓を刺し貫く。
その一突きで、伝令兵は血を吐き出して絶命する。
「……食っていいぞ!」
伝令兵の男が死んだの確認した佐志峰は、まとわりついている蛇たちに指示を出す。
すると、その指示を待っていたかのように、蛇たちは伝令兵の死体に群がり貪り始めた。
「き、貴様が佐志峰様ではないというなら、何故影武者など……」
城に来た時からとなると、何十年もの間影武者として過ごしてきたと言うことになる。
たしかに佐志峰の顔を知っていた者は誰もいなかったが、まさか騙されていたとは思いもしなかった。
例えそうだとして、何故長い間バカを演じて来たのか分からない。
そう思い、上重は問いかけた。
「簡単だ。この国を潰そうと思ったからだ」
この言葉を聞いたのを最後に、上重はこの世から消え去った。
「さてと、数はだいぶ減ったし、行ってみるか……」
背後で蛇たちが食事をしているのを気にせず、佐志峰はそのまま城内を歩き出したのだった。
魔法を使う蛇であるマノマンバを倒す手助けをしたケイだが、日向の兵たちがマノマンバを倒すと、またも魔法陣が浮かび上がってきた。
それを見た兵士たちは、いつまで続くのかといったような表情で出てくる魔物を見つめた。
「打ち止めだな……」
その魔法陣から出てきた魔物を見て、ケイは一言呟く。
魔法陣から出てきたのは、アスプやマノマンバのような巨大な蛇ではなかった。
人間よりも少し大きいくらいの蛇の魔物で、どこの地域でもよく見る魔物たちだった。
「そこらにいる蛇の魔物だ! あんなの日向の兵なら相手にならないだろ?」
魔法陣から出てきた魔物を見て、善貞が反応する。
マノマンバほどの魔物を見た後だからだろうか、出てきた魔物の落差に興ざめしたような感覚を覚える。
善貞が言うように、あの程度の魔物が数を増やしたところで、日向の者たちなら魔闘術を使うまでもなく倒せてしまうだろう。
「流石にマノマンバ以上の魔物は手に入れられなかったんだろ?」
「そうか……」
そもそも、マノマンバ程の魔物が日向の国にいることの方がおかしい。
ファーブニルもそうだが、どうやって手に入れたのか聞いてみたいところだ。
どうやら、このまま自分の出番がないことに残念な思いがあるのか、善貞は残念そうに呟いたのだった。
◆◆◆◆◆
「おいっ、上重!! どうなっているんだ!? マノマンバ程の魔物まで殺られてしまったではないか!?」
奥の手として出したマノマンバが、ケイの攻撃によってあっという間にただの毒蛇に変わってしまい、日向の兵たちによって斬り刻まれてしまった。
東門も巨大蝮のヴィーボラを倒す寸前だ。
そこも、もう魔物で対処するのは難しい。
「魔物の数ももう限界だぞ!? どうするんだ!? 貴様のせいだぞ!!」
折角集めた魔物たちがどんどんと殺られて行き、もうたいして強くない魔物を出すしかなくなっている。
そうなったら、城の中の兵を出して対応するしかなくなる。
しかし、所詮は数で劣る身。
城内の兵も、抵抗するよりも降伏する手段を取る可能性が高い。
バカでもそれが分かっているのか、佐志峰は上重に喚き散らす。
「五月蠅い!! バカは黙っていろ!!」
「なっ……!?」
追い込まれているのは上重も一緒だ。
もう、城内へ攻め込まれるのは必定。
ならば、どうすれれば生き残れるかを必死に考えているのに、バカが側で喚いたため、おもわず本音が出てしまった。
上重のその言葉に佐志峰は顔を引きつらせ、一瞬場は凍った。
バカで忠誠を誓っていなくても、佐志峰の方が立場は上。
不敬により首を斬られても文句を言えない状況だ。
「貴様!! そこのお前!! こいつを……」
“ザシュ!!”
この場にいるのは佐志峰と上重。
そして、若い伝令役が1人いるだけだ。
暴言を吐かれた佐志峰が、この場で上重を斬り殺そうと、その伝令役に斬首の命を告げようとした時、上重の刀が佐志峰の腹を斬り裂いていた。
「ぐはっ!! き、貴様……」
腹を掻っ捌かれ、佐志峰は血を吐き出して床へと倒れ伏す。
大量の出血を見る限り、もう長くはないだろう。
部下による不意の一撃が信じられず、佐志峰は上重へ恨みがましい目を向ける。
血だまりが広がる中、視線以外は動かなくなっていった。
「……殿は切腹なさった。首を斬り落とせ!」
「了解しました!」
残り僅かの命であろう佐志峰に、上重は冷酷にその言葉を伝令役の者に告げた。
それを聞いて、佐志峰は分かった。
もう捕まるのは仕方がないこと。
ならば、全ては佐志峰の指示に従ったことだと、上重は言い逃れるつもりなのかもしれない。
伝令役の者もそれが分かったのか、腰の刀を抜いて倒れている佐志峰の側へと足を動かした。
「クックック……」
「……しぶといな。……気味が悪い、殺れ!」
伝令役の男が首を斬り落とそうと構えた時、動かなくなった佐志峰が急に笑い出した。
上重たちは一瞬驚いたが、所詮腹は斬り裂かれている。
最期に恨みごとでも言おうとしているのかと、上重は伝令役にさっさと首を斬るように指示する。
「っ!? なっ!?」
「な、何だとっ!?」
刀を振り下ろす前に、どこから現れたのか分からない蛇たちに、伝令兵は全身を包まれていた。
とても首を斬り落とせる状況ではない。
それに気付いた上重も、いつの間にかうじゃうじゃと集まって来た蛇たちに、足下から絡みつかれて動けなくなっていった。
「これまで懸命に馬鹿を演じてきたが、それもここまでのようだな……」
「「っ!?」」
蛇たちに絡みつかれ、動けなくなっている上重と伝令兵が悶えていると、急に聞いたことも無いような声色の言葉が聞こえて来た。
2人がその声の聞こえた方に目を向けると、ありえない現象が起きていた。
「…………と、…………の?」
「バ、バカな……!?」
首を斬り落とす、落とさないの問題ではなく、もう死ぬはずの佐志峰がいつの間にか立ち上がっていたのだ。
腹を斬った上重も、それを見ていた伝令兵も、あまりの出来事に信じられないといった表情に変わる。
そして、立っている佐志峰の顔を見る限り、まるで斬られたことがなんてことないような顔をしていることに、異形の者を見ている気分になり、顔を青くして全身から冷や汗を流す。
「フッ! お前に斬られるまでもなく、佐志峰ならこの世にはもういない」
そう言って、佐志峰は蛇のせいで動けなくなっている伝令兵の手から、刀をすんなりと奪い取る。
「この城に来た時から……な!」
「ぐふっ!!」
言葉を吐きながら、佐志峰は奪った刀で伝令兵の心臓を刺し貫く。
その一突きで、伝令兵は血を吐き出して絶命する。
「……食っていいぞ!」
伝令兵の男が死んだの確認した佐志峰は、まとわりついている蛇たちに指示を出す。
すると、その指示を待っていたかのように、蛇たちは伝令兵の死体に群がり貪り始めた。
「き、貴様が佐志峰様ではないというなら、何故影武者など……」
城に来た時からとなると、何十年もの間影武者として過ごしてきたと言うことになる。
たしかに佐志峰の顔を知っていた者は誰もいなかったが、まさか騙されていたとは思いもしなかった。
例えそうだとして、何故長い間バカを演じて来たのか分からない。
そう思い、上重は問いかけた。
「簡単だ。この国を潰そうと思ったからだ」
この言葉を聞いたのを最後に、上重はこの世から消え去った。
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