エルティモエルフォ ―最後のエルフ―

ポリ 外丸

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第13章

第337話

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「どんどん行くぞ!」

 肉体に反動のあるパワーアップも、再生能力のあるサンティアゴなら気にする必要はない。
 人間には真似できない方法のパワーアップにより、形勢は完全にサンティアゴ有利へと移った。
 それを理解しているサンティアゴは、機嫌よくカルロスとの距離を詰める。 

「クッ!」

 またしてもとんでもない速度での接近してくるサンティアゴに、カルロスは武器を構えて対応しようとする。
 ここまで速いと、こちらから攻撃できる手段がないため、カルロスは防御一辺倒になることを覚悟し、左手に持つ銃は腰に付けたホルスターへとしまった。

「そらっ!」

「っ!!」

 土魔法で作り出した剣による攻撃。
 サンティアゴの攻撃を、カルロスは両手に持ちに変えた刀で受け止めた。
 速度についてくるのに必死な様子のカルロスから、隙を見た攻撃に警戒する必要を感じなくなったのか、サンティアゴの攻撃は大振りだった。
 大振りな分威力も大きく、カルロスの受け止めた手にはかなりの衝撃が走った。

「ほらほら! ちゃんと受けないと怪我じゃすまないぞ!」

「くっ!!」

 次々と繰り出されるサンティアゴの攻撃。
 カルロスはそれを手に持つ刀で必死に受け止めるが、そのたびに痺れるような衝撃が走る。
 サンティアゴの言うように、受け損なえば一撃で致命傷になりかねない攻撃ばかりだ。
 少しでもサンティアゴからの攻撃を回数を減らそうと、カルロスは必死に動き回る。
 しかし、速度の違いからあっという間に追いつかれて防御することになった。

「おらっ!!」

「ぐあっ!!」

 動き回りながらの防御がしばらく続いた。
 何度も攻撃を受け止めたことで、カルロスの両腕は段々と痺れてきた。
 そんな両手では、サンティアゴ攻撃の威力を完全に抑えることなどできなく、受け止めた途端に吹き飛ばされるようになってきた。
 またも接近と共に斬りつけてきた攻撃を防ぎ、カルロスは後方へと吹き飛ばされた。

「ハァ、ハァ、ハァ……」

「そろそろ体力も限界か?」

 何度も地面に体を打ち付けられながら、カルロスは追撃を警戒してすぐに立ち上がる。
 攻撃は当たってはいないが、度重なる地面への衝突でカルロスは息切れをしてボロボロの状態でなんとか立っている。
 そんなカルロスを眺めながら、サンティアゴはつまらなそうに呟く。
 仕留めようと思えば、簡単だと言いたげな態度だ。

「それにしても、これだけ痛めつけたのに出てこないなんて、もう1人の奴は薄情だな?」

 ハーフエルフの方を痛めつけていれば、姿を消したエルフも出てくると思っていた。
 しかし、ハーフエルフの方がこのような状態になっているというのに全く出てくる気配がない。
 何かを企んでいるようだったが、ここまでして出てこない所をいると逃げてしまったのだろうか。

「ハハッ! お前なんて俺1人で充分てことだよ」

「…………」

 逃げ回り、防御するだけでボロボロになりながらも、大きな怪我は負っていない。
 だからと言って、とても形勢逆転できるような立場でもないにもかかわらず、カルロスはサンティアゴに対して挑発するように呟く。
 その挑発を受けたサンティアゴは、これまでの余裕の笑みを浮かべていた表情から無表情へと変わった。

「っ!? うがっ!!」

「こっちは遊んでやってるってのに、調子に乗るなよ!」

 挑発に腹を立てたらしく、サンティアゴは急接近してカルロスの腹へ前蹴りを入れた。
 これまで以上の速度に驚いたカルロスは、反応できずに直撃を食らう。
 手を抜いているというサンティアゴの言葉は本当のようだ。
 今のも本気だったのか分からないが、とてもカルロスが対応できるレベルではないようだ。

「ぐうぅ……」

 前蹴り1発でのたうち回るカルロス。
 それでもこのまま横になっているわけにはいかないため、刀を杖代わりにして何とか立ち上がる。

“ガサッ!!”

「「っ!?」」

 立ち上がったは良いものの、今の1撃で動くのもきつい状況だ。
 これ以上戦えないと思っていた所に、突然森の方から草がこすれる音が聞こえてきた。
 何が来たのかと、カルロスだけでなくサンティアゴも反応すると、

「大丈夫か? カルロス」

「あぁ……、何とか……」

 現れたのはケイだった。
 待ち望んだ父の登場に、カルロスは安堵しつつ返答した。

「……よく頑張った」

 ボロボロの息子を見て、ケイは一瞬眉をひそめる。
 1人でサンティアゴを相手にするのは、やはり苦労したのだろう。
 自分の指示とは言え、きちんと時間稼ぎをしたカルロスに、ケイは労いの言葉をかけた。

「おぉっ! ようやく現れたか?」

 いなくなっていたケイが戻って来たことに、サンティアゴは楽しそうな笑みを浮かべた。
 ようやく久々に本気で戦うことができると思ったからだ。

「父さんが戻ってきたってことは……」

「あぁ、準備できた」

「ハハッ! そうか……」

 サンティアゴのことを視界に入れながら、ケイとカルロスは言葉を交わす。
 それにより、予定通りに準備が整ったことを知ったカルロスは小さく笑みを浮かべた。

「何がもういいんだ? それに、お前どっか行ってたと思ったら顔色悪くないか?」

 いつでも攻撃できるというのに、余裕によるものなのかサンティアゴは攻撃をして来ず、ケイとカルロスの会話を聞いていた。
 何をしてくるのかを楽しみにしているのだが、よく見たら戻ってきたケイの顔を見て違和感を感じた。
 いなくなる前と違い、戻ってきた今の方が顔色が悪くなっているように感じ、何をしていたのか気になり問いかけた。

「いくよ?」

「あぁ!」

“ドンッ!!”

 カルロスの問いにケイが返答する。
 すると、カルロスは魔法を発動する。

「っ!? 何を……」

 カルロスに捕まった状態で、ケイは風魔法によって上空へと飛び上がる。
 かなりの高度まで上がると、2人は上空で制止する。
 逃げる様子がないため、サンティアゴは何をするのか様子を見ることにした。

「ハッ!!」

「んっ? 何だ?」

 浮遊状態のケイは、両手を下へと向けて魔力を放出する。
 何をしてくるのかとサンティアゴがケイを眺めていると、すぐに異変が起きる。
 地面に魔法陣のような物が浮かび上がったのだ。

「何だこれ?」

 魔法陣が浮かびあがると、島全体を覆うように半円状の透明の膜のような物が出現した。
 何が起きたのかと、サンティアゴは突然出現した膜に触れたり軽く叩いてみると、とんでもない硬度をしているのが分かる。

「永久に閉じ込められてろ!!」

「貴様!! まさか……」

 膜の外にいるケイの言葉を聞き、サンティアゴはようやく現状を理解した。

「封印!!」

「くっ!! おのれっ!!」

 ケイの更なる魔力放出により、地面に描かれている魔法陣が光り輝く。
 すると、サンティアゴは足からジワジワと魔法陣の中へと吸い込まれ始めた。
 この状態になって、ようやくケイが何をしていたのかを理解した。

「くそっ!! くそーーー……」

 魔法陣の中へと吸い込まれて行くサンティアゴは、何とか脱出しようと剣で自分の足を斬り落とそうとする。
 しかし、それが仇となる。
 自分で自分の足を斬るために、抵抗を減らそうと身に纏っていた魔力を解除した瞬間、魔法陣に吸い込まれる速度が急激に加速したのだ。
 そのままサンティアゴはケイへの怨嗟の声と共に魔法陣の中へと姿を消していったのだった。

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