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第14章
第362話
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「ようやく終わりが見えてきたな……」
下の階層へと向かう通路を進むケイは、感慨深げに呟く。
魔王サカリアスを封印した結界内にできたダンジョン。
その攻略を始めてから、もう少しで3ヵ月になる。
これほどの長期間になってくると、思い出す国のみんなの顔が懐かしく感じる。
島の子供たちの面倒を見たり、農業をしてのんびりした生活に戻りたくなってくる。
「残り5層だ。気を付けて進もう」
階層ボスのリザードマンから聞いた情報が確かなら、このダンジョンの最下層は100層。
残り5層進めば、ダンジョン核のある場所に行きつくはずだ。
ここまで来ると、あと少しと気が弛み、思わぬ罠にかかりかねない。
木を引き締めるために、ケイは従魔であるキュウとクウに注意を促した。
【うん……】「ワフッ……」
主人であるケイの言葉に対して、キュウとクウは反応が弱い。
何だか元気がないようだ。
「キュウもクウも元気出せって! ここまで来たら魔物が強力なのは分かっていただろ?」
【うん……】「ワフッ……」
2匹が元気がないのは、90層を過ぎた頃からキュウとクウではなかなか倒せない魔物が現れ始めたからだ。
ケイでも油断すると危険な魔物ばかり。
2匹が苦戦するのも仕方がないことだ。
特に、2匹が気落ちしている要因はもう1つある。
戦闘でケイも傷を負うようになってきたからだ。
傷といっても、かすり傷程度のものだが、2匹は従魔のくせに主人を守り切れていないと、自分を攻めているようだ。
しかし、これまでの人生で、この程度の怪我なんて数えきれないほど負ってきている。
回復魔法もいらないような傷なんて、気にする必要がない。
「それに、役に立ってないってことはないんだから」
2匹がいることで、ケイも助かっている。
戦闘面だけでなく、精神的な面でもだ。
1人でこのダンジョンを攻略しようとすると、平気で無茶をしかねない。
もしかしたら、罠にかかって危険な目に遭っていたかもしれない。
しかし、2匹がいることで無茶をせずに進むという選択を取らなければならない。
そう言った意味で役に立っていると言えなくない。
「癒しでもあるし……」
そういうと、ケイは2匹を撫でまわす。
ケイにとって、2匹は心を落ち着かせてくれる存在だ。
何も考えず撫でまわしていると、余計な考えも吹き飛んでしまう。
これがアニマルセラピーというのだろうか。
「よし。行こうか?」
【うんっ!!】「ワウッ!!」
2匹を撫でて少し心が安らいだケイ。
撫でられたことでキュウとクウも元気を取り戻したようなので、ケイは改めて先へ進むことにした。
「……何だ?」
【あれっ?】「ワウッ?」
95層に入った途端、ケイは肉体に違和感を感じる。
キュウとクウも同じように感じたのか、不思議そうな声を上げた。
「魔力が抜ける……?」
常時魔闘術を発動しているのだが、その身に纏う魔力が何かに吸い取られるように消えていく。
初めて感じるその感覚に、ケイは一旦通路に戻る。
そして、もう一度魔闘術を発動して、体に異変がないかの確認をした。
「……ここは問題ない。やっぱりこの中か……?」
通路にいる分には、先程の魔力が抜ける感覚はない。
しかし、フロアに入ると、力が抜けるような感覚に陥る。
そのことから、このフロアに何かしらの仕掛けがあるのだと理解できた。
「魔法は……?」
体に魔力を纏わない状態なら、魔力が抜けていくような感覚は受けない。
それなら魔法を放ったらどうなるのか。
これからこのフロアを攻略するのに、それが分かっていないと危険すぎる。
そのため、ケイは色々と魔法を試してみることにした。
「全然飛距離が出ない!」
色々と魔法を試した結果、ケイは思わず愚痴をこぼす。
どの魔法も、距離を伸ばそうとすると魔力を多く消費する。
これでは遠距離からの攻撃が難しくなった。
【魔法使えないと、キュウたち役に立てない……】
「ワウッ……」
この状況に、せっかく元気が出たはずのキュウとクウがまた落ち込む。
キュウは、魔物の餌と呼ばれるほど弱小のケセランパセランという毛玉の魔物。
ケイのお陰で強くなったが、あくまで戦闘は魔法特化。
それが魔法が使えないのでは、完全に足手まといでしかない。
柴犬そっくりの魔物のクウは、まだ体当たりや牙を使った攻撃ができるが、こっちもどちらかと言うと魔法重視の戦闘方法。
つまり、2匹ともこのフロアの攻略に参加するのは危険すぎる。
「……そうだな。悪いが、拠点で待っていてくれるか?」
【うん……】「ワフッ……」
2匹には悪いが、攻略に連れて行くのは躊躇われる。
そのため、ケイは転移で地上にある拠点まで転移で送ることにした。
【気を付けてね。ご主人!】「ワウッ!」
「あぁ」
転移の魔法を発動して拠点に送ると、2匹は別れ際に声をかけてきた。
最後まで付いて行けないことが残念そうだが、我が儘を言うわけにはいかないとちゃんと認識しているようだ。
その見送りの言葉を受けて、ケイは攻略の再開をおこなうことにした。
「探知もか……」
フロアに入ると、ケイは魔物と罠を確認しようと探知の魔法を発動する。
魔力を薄く広く伸ばすことによって、その魔力に触れたものが何なのかを探知する魔法だ。
しかし、この探知にも他の魔法と同様のことが起こる。
魔力が吸われ、長距離を探知することができないのだ。
この状況に、ケイは苦虫をかみつぶしたような表情へ変わる。
まずは探知。
これこそ、ケイが生き残るために導き出した答えだ。
それが根底から覆されたのだから、どうするべきか悩むところだ。
「しかも、エルフの俺に魔闘術を解いた状態で進めっていいたいのか?」
生物を殺すことによって、殺した相手は成長するが、同じ人族でも度合いが違う。
その中でもエルフという人種は、肉体的な成長はごくごく僅かで、それに反するように魔力量の成長が著しい。
人種の中でも並外れた魔力を使うことで、ケイは他の種族以上の戦闘力を身につけたと言ってもいい。
エルフにとって最大の武器である魔力の使用を制限されるということは、他の人種よりもきつい状況だ。
「念のため持ってきたこれで何とかするしかないようだな……」
肉体的成長は僅かとは言っても、塵も積もれば山となる。
長年魔物と戦い続けてきた自分なら、生身の状態でもなんとかなるはず。
長距離攻撃も出来るいつもの2丁拳銃はひとまず使用せず、たまたま持ってきていた美花の形見の刀を使うことにし、ケイは慎重に探索を開始した。
下の階層へと向かう通路を進むケイは、感慨深げに呟く。
魔王サカリアスを封印した結界内にできたダンジョン。
その攻略を始めてから、もう少しで3ヵ月になる。
これほどの長期間になってくると、思い出す国のみんなの顔が懐かしく感じる。
島の子供たちの面倒を見たり、農業をしてのんびりした生活に戻りたくなってくる。
「残り5層だ。気を付けて進もう」
階層ボスのリザードマンから聞いた情報が確かなら、このダンジョンの最下層は100層。
残り5層進めば、ダンジョン核のある場所に行きつくはずだ。
ここまで来ると、あと少しと気が弛み、思わぬ罠にかかりかねない。
木を引き締めるために、ケイは従魔であるキュウとクウに注意を促した。
【うん……】「ワフッ……」
主人であるケイの言葉に対して、キュウとクウは反応が弱い。
何だか元気がないようだ。
「キュウもクウも元気出せって! ここまで来たら魔物が強力なのは分かっていただろ?」
【うん……】「ワフッ……」
2匹が元気がないのは、90層を過ぎた頃からキュウとクウではなかなか倒せない魔物が現れ始めたからだ。
ケイでも油断すると危険な魔物ばかり。
2匹が苦戦するのも仕方がないことだ。
特に、2匹が気落ちしている要因はもう1つある。
戦闘でケイも傷を負うようになってきたからだ。
傷といっても、かすり傷程度のものだが、2匹は従魔のくせに主人を守り切れていないと、自分を攻めているようだ。
しかし、これまでの人生で、この程度の怪我なんて数えきれないほど負ってきている。
回復魔法もいらないような傷なんて、気にする必要がない。
「それに、役に立ってないってことはないんだから」
2匹がいることで、ケイも助かっている。
戦闘面だけでなく、精神的な面でもだ。
1人でこのダンジョンを攻略しようとすると、平気で無茶をしかねない。
もしかしたら、罠にかかって危険な目に遭っていたかもしれない。
しかし、2匹がいることで無茶をせずに進むという選択を取らなければならない。
そう言った意味で役に立っていると言えなくない。
「癒しでもあるし……」
そういうと、ケイは2匹を撫でまわす。
ケイにとって、2匹は心を落ち着かせてくれる存在だ。
何も考えず撫でまわしていると、余計な考えも吹き飛んでしまう。
これがアニマルセラピーというのだろうか。
「よし。行こうか?」
【うんっ!!】「ワウッ!!」
2匹を撫でて少し心が安らいだケイ。
撫でられたことでキュウとクウも元気を取り戻したようなので、ケイは改めて先へ進むことにした。
「……何だ?」
【あれっ?】「ワウッ?」
95層に入った途端、ケイは肉体に違和感を感じる。
キュウとクウも同じように感じたのか、不思議そうな声を上げた。
「魔力が抜ける……?」
常時魔闘術を発動しているのだが、その身に纏う魔力が何かに吸い取られるように消えていく。
初めて感じるその感覚に、ケイは一旦通路に戻る。
そして、もう一度魔闘術を発動して、体に異変がないかの確認をした。
「……ここは問題ない。やっぱりこの中か……?」
通路にいる分には、先程の魔力が抜ける感覚はない。
しかし、フロアに入ると、力が抜けるような感覚に陥る。
そのことから、このフロアに何かしらの仕掛けがあるのだと理解できた。
「魔法は……?」
体に魔力を纏わない状態なら、魔力が抜けていくような感覚は受けない。
それなら魔法を放ったらどうなるのか。
これからこのフロアを攻略するのに、それが分かっていないと危険すぎる。
そのため、ケイは色々と魔法を試してみることにした。
「全然飛距離が出ない!」
色々と魔法を試した結果、ケイは思わず愚痴をこぼす。
どの魔法も、距離を伸ばそうとすると魔力を多く消費する。
これでは遠距離からの攻撃が難しくなった。
【魔法使えないと、キュウたち役に立てない……】
「ワウッ……」
この状況に、せっかく元気が出たはずのキュウとクウがまた落ち込む。
キュウは、魔物の餌と呼ばれるほど弱小のケセランパセランという毛玉の魔物。
ケイのお陰で強くなったが、あくまで戦闘は魔法特化。
それが魔法が使えないのでは、完全に足手まといでしかない。
柴犬そっくりの魔物のクウは、まだ体当たりや牙を使った攻撃ができるが、こっちもどちらかと言うと魔法重視の戦闘方法。
つまり、2匹ともこのフロアの攻略に参加するのは危険すぎる。
「……そうだな。悪いが、拠点で待っていてくれるか?」
【うん……】「ワフッ……」
2匹には悪いが、攻略に連れて行くのは躊躇われる。
そのため、ケイは転移で地上にある拠点まで転移で送ることにした。
【気を付けてね。ご主人!】「ワウッ!」
「あぁ」
転移の魔法を発動して拠点に送ると、2匹は別れ際に声をかけてきた。
最後まで付いて行けないことが残念そうだが、我が儘を言うわけにはいかないとちゃんと認識しているようだ。
その見送りの言葉を受けて、ケイは攻略の再開をおこなうことにした。
「探知もか……」
フロアに入ると、ケイは魔物と罠を確認しようと探知の魔法を発動する。
魔力を薄く広く伸ばすことによって、その魔力に触れたものが何なのかを探知する魔法だ。
しかし、この探知にも他の魔法と同様のことが起こる。
魔力が吸われ、長距離を探知することができないのだ。
この状況に、ケイは苦虫をかみつぶしたような表情へ変わる。
まずは探知。
これこそ、ケイが生き残るために導き出した答えだ。
それが根底から覆されたのだから、どうするべきか悩むところだ。
「しかも、エルフの俺に魔闘術を解いた状態で進めっていいたいのか?」
生物を殺すことによって、殺した相手は成長するが、同じ人族でも度合いが違う。
その中でもエルフという人種は、肉体的な成長はごくごく僅かで、それに反するように魔力量の成長が著しい。
人種の中でも並外れた魔力を使うことで、ケイは他の種族以上の戦闘力を身につけたと言ってもいい。
エルフにとって最大の武器である魔力の使用を制限されるということは、他の人種よりもきつい状況だ。
「念のため持ってきたこれで何とかするしかないようだな……」
肉体的成長は僅かとは言っても、塵も積もれば山となる。
長年魔物と戦い続けてきた自分なら、生身の状態でもなんとかなるはず。
長距離攻撃も出来るいつもの2丁拳銃はひとまず使用せず、たまたま持ってきていた美花の形見の刀を使うことにし、ケイは慎重に探索を開始した。
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