5 / 11
本編
5.祝福”完璧な肉体”
しおりを挟む
彼は「嬉しい」といった。とまりは、満足し、彼からの圧力が一瞬消えてため息をついた。が、瞬間、抱きしめられて体を固くした。
正面から、がばっと。
「ちょおおおお!!」
「とまり、お前が何をためらっているのかわかってはいるが、ともかくうれしいぞ」
シュリは全裸である。
「ああああの、一旦落ち着いて!服きてぇえええ」
全裸。トカゲの全裸はともかく、成人男性(に見える)の全裸は少々心臓に悪い。それがギリシャ神話の彫刻並みの芸術的な全裸でも変わりはしない。
「わかったわかった」といいつつ、シュリはとまりを離さない。手はとまりの肩をたどり、腰、尻に向かう。
――いやいやいや。
とまりは再び顔に血が上るのを感じた。怒りではないのが嫌だ。どうにかシュリの手をつかもうと身をよじるも、いい感じに抱き込まれていて、簡単には振りほどけない。
しかも動けば否応なしにシュリの肌に触れてしまう。暴れると長袖がめくれて、めっちゃ肌触れる。汗ばんでてなんかひっつく。――冬なのに!!
トカゲのときはひんやりしたウロコだったが、皮膚になると全然感触が違うし、そもそもトカゲはこんなに表面積大きくなかったし。
「ひぇっ」
おまけにシュリはとまりの肩に顔をうずめた。なんか深呼吸してるし。
「はははははなせ!!!」
「とまりは成長したな……。とても……いいぞ」
太ももから尻、腰のラインをなでながら言われるとその。とまりとしてはぞわぞわする。とってもする。
変な声が出そうになって、シュリの腕をつかもうと必死に身をよじる。
「シュリはおっさん化したの!?」
何がいいんだ。シュリの手はとまりの手から逃げ回って腰の肉付きを確かめるように動いている。身じろぎしながら視界にベッドが入ってさすがに身に危険を感じる。シュリはこんなんじゃなかったはずだ。いやいや、本当に。
こんなの、何と言っていいかわからないけどやばい、やばい気がする。やばすぎる。
何が何と言っていいかわからないのだが!
「~~~!!ね、ねぇ!!あっちの世界の魔族は自然発生系だから生殖行為自体が存在しないんじゃなかったの?!!なんで!なんで、今更子、子供作りたいだなんて……!シュリだってあの世界に自分の子供はいないって言ってたじゃない!!」
遠い日、学んだ記憶を必死に手繰り寄せる。
魔族と人間の大きな違いは、
①魔族は人間と違って外見を変化させることができる。
②魔族は自然に生まれるものであって、姿かたちに雄雌があってもその間から子供が生まれることはない。
と学んだし、この世界に来てから子供とか心配じゃないのかという問いかけには「我に子供はいない。そもそも魔族に血のつながった子供という概念はないのだ」と言い切られた思い出があるのだが――。
「とまりが成長したことで我はこうなったのだ」
「私のせいですと!?」
とまりの言葉にシュリは耳元でうなずいた。そして、耳に息を吹き込むように囁く。
「完璧な肉体とは、完璧な母体になりうる。――この世の雄は全てとまりに子供を産んでもらいたいに決まっている」
女神の祝福にそんな効果があるのか。完璧な肉体=完璧な母体とは、理論上いわれてみればそうかもしれない。
「そ、そんなばかな!学校じゃモテないのに!」
「お前が変に生真面目で、ついでに、防御が固くアピールに気付いていない。ついでに、“人間”はその辺のことに気づくのが遅いからな。しかし、これからどんどん希望者は増えていくだろう。――ここにきて知ったのだが、我はそれなりに心が狭く、しつこい質らしい。とまりが他の男のものになって、その姿を一生見続けるのは、せめて告白して振られてからにしたかった」
とまりは息をのんだ。
「振られてしまえば、それはそれでしょうがないともいえよう。我はとまりの人生を見守ることに専念しよう。安心しろ、振られたら死ぬなどという脅迫はするまい。流石に落ち込みはするがな。でも少しは勝算があると思っているのだ」
シュリはとまりから少し体を離し、笑った。
笑顔は輝くようだ。どぎまぎ、それが止まらない。面食いだったのか、等と自分の知らなかった自分を知るようだ。
「とまり。この世界で君と我は2人で1つ。だから、君が身体的にも精神的にも性的成熟すると、どうしても我も影響を受ける。ーーようするに、大人になった。そういうことだ」
穏やかな声に温かい金の目。
鋭く整った顔が柔らかく笑みを浮かべる。
シュリだ。シュリは改めて、とまりの肩を優しく掴み、顔を傾け、それで、
「ん……?」
頰にくちづけられた。彫刻のように整った彼の唇は硬そうに思えた。でも、硬くないーーとても柔らかいことをとまりは知った。
きょろり、目が至近距離でシュリを見る。
ほんの数秒だった。
離れる時に、彼の舌が頰を掠るように舐めた。
(唇、じゃないんだ)
ちょっとだけ、物足りなくなった気がした。ちょっとだけだ、そう、ちょっとだけ。
でも安心感はあった。
トカゲ姿のシュリはいつも頬をなでる。
その動きは彼がそこにいることの証左だった。自分が救った命の証明。
そのせいか、とまりはシュリの行動をただ受け入れてしまった。自分でもよくわからない。
とまりは満足げなシュリを眺める。
何もいえない。何か言いたい。でも、何を言っていいか。自分が何を言いたいのかわからない。
シュリは一度目を伏せ、深呼吸した。そして、再び薄めの唇が動く。
「とまり……少し発情したな」
「………」
彼の言葉に、とまりは微笑み返す。そして、容赦なく彼の裸のみぞおちに握りしめた拳を叩き込んだ。
とまりの性的理解度の上限を超えたのだ。
――こんな魔王シュリ、私は知らないってば!!!!
せき込むシュリにとまりは大きくため息をついた。
正面から、がばっと。
「ちょおおおお!!」
「とまり、お前が何をためらっているのかわかってはいるが、ともかくうれしいぞ」
シュリは全裸である。
「ああああの、一旦落ち着いて!服きてぇえええ」
全裸。トカゲの全裸はともかく、成人男性(に見える)の全裸は少々心臓に悪い。それがギリシャ神話の彫刻並みの芸術的な全裸でも変わりはしない。
「わかったわかった」といいつつ、シュリはとまりを離さない。手はとまりの肩をたどり、腰、尻に向かう。
――いやいやいや。
とまりは再び顔に血が上るのを感じた。怒りではないのが嫌だ。どうにかシュリの手をつかもうと身をよじるも、いい感じに抱き込まれていて、簡単には振りほどけない。
しかも動けば否応なしにシュリの肌に触れてしまう。暴れると長袖がめくれて、めっちゃ肌触れる。汗ばんでてなんかひっつく。――冬なのに!!
トカゲのときはひんやりしたウロコだったが、皮膚になると全然感触が違うし、そもそもトカゲはこんなに表面積大きくなかったし。
「ひぇっ」
おまけにシュリはとまりの肩に顔をうずめた。なんか深呼吸してるし。
「はははははなせ!!!」
「とまりは成長したな……。とても……いいぞ」
太ももから尻、腰のラインをなでながら言われるとその。とまりとしてはぞわぞわする。とってもする。
変な声が出そうになって、シュリの腕をつかもうと必死に身をよじる。
「シュリはおっさん化したの!?」
何がいいんだ。シュリの手はとまりの手から逃げ回って腰の肉付きを確かめるように動いている。身じろぎしながら視界にベッドが入ってさすがに身に危険を感じる。シュリはこんなんじゃなかったはずだ。いやいや、本当に。
こんなの、何と言っていいかわからないけどやばい、やばい気がする。やばすぎる。
何が何と言っていいかわからないのだが!
「~~~!!ね、ねぇ!!あっちの世界の魔族は自然発生系だから生殖行為自体が存在しないんじゃなかったの?!!なんで!なんで、今更子、子供作りたいだなんて……!シュリだってあの世界に自分の子供はいないって言ってたじゃない!!」
遠い日、学んだ記憶を必死に手繰り寄せる。
魔族と人間の大きな違いは、
①魔族は人間と違って外見を変化させることができる。
②魔族は自然に生まれるものであって、姿かたちに雄雌があってもその間から子供が生まれることはない。
と学んだし、この世界に来てから子供とか心配じゃないのかという問いかけには「我に子供はいない。そもそも魔族に血のつながった子供という概念はないのだ」と言い切られた思い出があるのだが――。
「とまりが成長したことで我はこうなったのだ」
「私のせいですと!?」
とまりの言葉にシュリは耳元でうなずいた。そして、耳に息を吹き込むように囁く。
「完璧な肉体とは、完璧な母体になりうる。――この世の雄は全てとまりに子供を産んでもらいたいに決まっている」
女神の祝福にそんな効果があるのか。完璧な肉体=完璧な母体とは、理論上いわれてみればそうかもしれない。
「そ、そんなばかな!学校じゃモテないのに!」
「お前が変に生真面目で、ついでに、防御が固くアピールに気付いていない。ついでに、“人間”はその辺のことに気づくのが遅いからな。しかし、これからどんどん希望者は増えていくだろう。――ここにきて知ったのだが、我はそれなりに心が狭く、しつこい質らしい。とまりが他の男のものになって、その姿を一生見続けるのは、せめて告白して振られてからにしたかった」
とまりは息をのんだ。
「振られてしまえば、それはそれでしょうがないともいえよう。我はとまりの人生を見守ることに専念しよう。安心しろ、振られたら死ぬなどという脅迫はするまい。流石に落ち込みはするがな。でも少しは勝算があると思っているのだ」
シュリはとまりから少し体を離し、笑った。
笑顔は輝くようだ。どぎまぎ、それが止まらない。面食いだったのか、等と自分の知らなかった自分を知るようだ。
「とまり。この世界で君と我は2人で1つ。だから、君が身体的にも精神的にも性的成熟すると、どうしても我も影響を受ける。ーーようするに、大人になった。そういうことだ」
穏やかな声に温かい金の目。
鋭く整った顔が柔らかく笑みを浮かべる。
シュリだ。シュリは改めて、とまりの肩を優しく掴み、顔を傾け、それで、
「ん……?」
頰にくちづけられた。彫刻のように整った彼の唇は硬そうに思えた。でも、硬くないーーとても柔らかいことをとまりは知った。
きょろり、目が至近距離でシュリを見る。
ほんの数秒だった。
離れる時に、彼の舌が頰を掠るように舐めた。
(唇、じゃないんだ)
ちょっとだけ、物足りなくなった気がした。ちょっとだけだ、そう、ちょっとだけ。
でも安心感はあった。
トカゲ姿のシュリはいつも頬をなでる。
その動きは彼がそこにいることの証左だった。自分が救った命の証明。
そのせいか、とまりはシュリの行動をただ受け入れてしまった。自分でもよくわからない。
とまりは満足げなシュリを眺める。
何もいえない。何か言いたい。でも、何を言っていいか。自分が何を言いたいのかわからない。
シュリは一度目を伏せ、深呼吸した。そして、再び薄めの唇が動く。
「とまり……少し発情したな」
「………」
彼の言葉に、とまりは微笑み返す。そして、容赦なく彼の裸のみぞおちに握りしめた拳を叩き込んだ。
とまりの性的理解度の上限を超えたのだ。
――こんな魔王シュリ、私は知らないってば!!!!
せき込むシュリにとまりは大きくため息をついた。
12
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
淫紋付きランジェリーパーティーへようこそ~麗人辺境伯、婿殿の逆襲の罠にハメられる
柿崎まつる
恋愛
ローテ辺境伯領から最重要機密を盗んだ男が潜んだ先は、ある紳士社交倶楽部の夜会会場。女辺境伯とその夫は夜会に潜入するが、なんとそこはランジェリーパーティーだった!
※辺境伯は女です ムーンライトノベルズに掲載済みです。
【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~
双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。
なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。
※小説家になろうでも掲載中。
※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる