貴方との運命

ゆきりん(安室 雪)

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 ムカつく男はそのまま、部屋を出ようとし、振り返りながら

「コレ1週間貸せ」

 と言ってそのまま消えてしまった。

「お名前を教えて頂けますか?」

 運転手に聞かれ、有栖川 美緒と答える。

「では、美緒様。1週間預からせて頂く代わりに、毎日仕事帰りこちらにお寄り頂けますか?」

「はぁ」

 その後は、運転手に家まで送ってもらいつつ、ムカつく男の事を話して貰う。

 三ノ宮 葉月と言う先ほどのムカつく男は、三ノ宮グループの現在社長で、いくつものレストランやホテルを経営しているらしい。

「では、明日もよろしくお願いします」

 運転手は美緒をアパートの前で降ろし、去って行く。



 次の日、仕事帰りに例のお店に向かう。時間は昨日と同じ位だ。すると、お店の外に志乃さんが佇んでいる。

「美緒様、お待ちしておりました」

 礼儀正しく迎えてくれる。

「あの・・・、毎日伺う必要があるんでしょうか?」

「私にはわかりませんが、主が仰る事ですので」

 ニコリと微笑みながら、昨日と同じ部屋に通される。

 食前酢を頂く。

 お酒は飲めないので、とお断りするとフルーツの酢が出て来たのだ。ほんのり甘く、酸味は控えめで飲みやすい。

 昨日とは違うメニューが次々と運ばれてきて、美緒は眼で楽しみながら完食だ。

 今日は葉月は現れず、昨日と同じ運転手にアパート迄送られる。

「ありがとうございます」

 お礼を言うと、昨日と同じく

「では、明日もよろしくお願いします」

 と去って行く。

 何だか違う世界の住人になったみたいだが、アパートの部屋に入った瞬間、現実に戻る。室内は無駄な物はない。生活していくのが精一杯で、街中にいる女子達みたいに着飾る事もほぼ無い。

「ふう」

 ため息を1つ吐き、冷蔵庫を覗く。昨日・今日と夜を外でご馳走になったので土曜日に1週間分買っている食材を調整しなければならない。

「う~ん、鶏肉とかは冷凍庫行きだね」

 使いやすい大きさに切ってラップに包み、冷凍庫へ。野菜も同じ。

「どういうつもりなんだろうね?あの人」

 ボソリと呟く。




 そしてその週末、1週間にはまだ早いが葉月が現れたのだ。





 
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